無職からコミュニティ転職を成功させた出世魚トーク(沖安隆さん)
後半の四国組の一発目として登壇した愛媛の沖安隆さんは、コミュニティで大きく変わった人生を語った。沖さんの実家は地元スーパーで、親から代替わりして5年くらい社長を務めたが、いろいろもめた結果として廃業に至る。とはいえ、パソコン少年でプログラミングもできた沖さんはふとしたきっかけでJAWS-UG愛媛に参加。ここからがコミュニティジャーニーのはじまりとなった。
実はそのとき参加されたJAWS-UG愛媛は、四国四県を回る「クラウドお遍路」の中の1会場だった。運営メンバーに「ワゴン車に席が空いているので、徳島まで乗ってく?」と言われ、無職で時間だけはあった沖さんはそのままお遍路を回り、すっかりクラウドに感化されたという。翌月、東京で開催されたJAWS DAYSに青春18キップで参加した沖さんは、地元愛媛の会社から「うち来ない?」と言われ、そのまま就職。その会社でkintoneを知り、自らkintone Café愛媛を主催するようになる。
kintone Caféに登壇すべく各地を回り始めると、今度はサイボウズから声をかけられkintoneエバンジェリストになる。絶好調だった沖さんだったが、あるときkintone Cafe広島に参加したら、会社から解雇されるという憂き目にあう。しかし、懇親会の帰りに現在のアールスリーインスティテュートの金春さんに「うちに来ない?」と誘われ、今度は愛媛でリモートワークすることになった。「無職から始め、コミュニティの力で転職を繰り返し、リモートワーカーになった。給料も上がりました」と語る沖さんは、調子に乗って自腹でAWS re:Inventにも参加し、Amazon Goまで行ってきたという話でした。ちゃんちゃん。
アジャイル開発のコミュニティでヘルシーを得られた(こばともさん)
Agile459のこばともこと小林 智博さんはうどん県香川から来た。こばともさんは「自分の作ったソフトウェアで小さいリリースを繰り返し、お客様と信頼関係ができている。アジャイルのプラクティスを学ぶことで、ストレスも減り、お客様と次の話をしながらビールを呑める。これが現状です」と語る。こうしたヘルシーな現場を実現できたのは、コミュニティに参加して、いろいろな気づきを与えてもらったこと、支えてくれる仲間がいたからだという。
そんなこばともさんのAgile459は、文字通りアジャイル開発を学ぶコミュニティ。昨年は「完全に失敗できる環境を作るには?」というお題でイベントをやり、複数人でのプログラミングでどんなメリットが得られるのか、ワークショップ形式で体験してもらったという。その他、四国をつないで、リモートで読書会をやったりしている。
学んだことを社内に共有し、勉強会を開催したところ、チームにもいい影響があった。また、顧客ともきちんとコミュニケーションをとり、アジャイル開発のメリットを認知してもらえるようになった。運営側に回ることで、外の人たちとの交流も深まり、学びも深くなったとのこと。9月には高知でも勉強会を開催するという。
東京から一番遠い開発合宿スペースを作る(宇都宮 竜司さん)
続いてはイベント会場を提供したSHIFT PLUSの宇都宮 竜司さん。宇都宮さんは隣の愛媛県出身で、東京ではリクルートでコミュニティスペース「TECH LAB PAAK」の運営を担当してきた。SHIFT PLUS入社とともに高知に移住し、現在は「東京から一番遠い開発合宿スペース」を作るべく、プロジェクトを推進しているという。
プロジェクトの発端は、地元愛にありそうだ。宇都宮さんが生まれた愛媛県の西余市明浜町は1988年に5000人近くいた人口がどんどん減少し、2015年には3300人に。2050年には1000人になると見込まれて、2100年には集落がなくなっている可能性があるという。「地元をなんとかしたいと思いつつ、社会人生活を送ってきた」という宇都宮さんは、東京のTECH LAB PAAKで数多くのスタートアップを支援する中で、忙しすぎて成長が鈍化してしまったところを数多く見てきたという。
そんな宇都宮さんが高知県に移住して見つけたのが、足摺岬の端にある柏島。海の透明度が高く、ダイバーのメッカとして知られている柏島だが、東京から7~8時間かかる。そんな柏島に古民家を改修した開発合宿スペースを作ったのは、「情報過多で短期目線になりがちなスタートアップをとにかく遠いところに連れていこう」と考えたからだという。そして、苦楽をともにしたTECH LAB PAAKの元会員がいち早くトライアル合宿をしたり、高知家ビジネスプランコンテストなどでもコミュニティに助けられた。宇都宮さんは「ぜひ柏島へ」とアピールした。
同窓生グループはコミュニケーションの敷居も低い(武市真拓さん)
LTのトリを務めたのは、IT界隈では集合写真家としても知られている地元高知の武市真拓さん。小島英揮さんの後輩にもあたる土佐高校出身で、今回の話も同窓会の話だ。
武市さんが土佐中・高校同窓生交流会というFacebookグループを作ったのは、Facabookが普及し始めた2011年頃。上京して10年経り、改めて同窓生に会ったら面白い人ばかりだったため、「これはもったいない」ということで、FBグループ作ったという。3ヶ月で一気に300人くらいになり、現在は1350人くらいに拡大しているという。
同じクラスの同級生、同じ学年の同期生に比べ、同じ学校の同級生は圧倒的に人数が多い。土佐高も累計で2万人以上の卒業生がおり、多様な地域、多様な世代、多様な専門性にまたがっている。「共通の話題が多いのですぐに作れるし、コミュニケーションの敷居が低い。参加者の多様性は約束されたようなもの」と語る。
ポイントとしては既存の同窓会の「公認」を目指さないこと。また、飲み会ベースの活動でもOKで、地方・首都圏・海外も活動できる。さらに各世代のキーマンに運営に参加してもらうのも鍵だという。
●
コミュニティとの関わり方は、まさに十人十色。でも、意思を持った個人が集まり、つながり、共鳴し合うことで、大きな力になる点は共通している。インターネットでリアルタイムにつながれる現在、150年前に日本を動かした志士たちと同じように、コミュニティは課題だらけの日本を動かしていくに違いない。そんなことを感じさせた日本各地から集まったコミュニティリーダーたちの熱いLT。参加者たちにも大きなインパクトをもたらしたはずだ。