つい3週間前、本連載で「米国の成人の6割がSNSを辞めるのが苦ではない」というデータを紹介しました。その翌週にFacebookで発生したCambridge Anayticaによる5000万人ものデータ流用スキャンダルが発覚し、まだ収まるところを知りません。
冷静に見れば、今回のスキャンダルでFacebookはユーザーのプライバシー情報を収集する踏み台にされたと見ることができます。しかしエドワード・スノーデン氏はFacebookが被害者ではないことを強調しています。
ロイターによるテクノロジー企業への信頼感の調査でもネガティブな結果が出ています。Facebookが個人情報保護法を遵守すると信じていると回答した人は、41%に過ぎませんでした。同様の調査でAmazonは66%、Googleは62%、Microsoftは60%という結果でした。
Facebookが他社と比べて大きく信頼感を落としていると見ることができる一方で、テクノロジー企業全般を見ても、6割程度しか信頼感を得ていないことがわかります。また、FacebookなどのSNSが民主主義にマイナスの影響を与えると懸念している人は60%、プラスの影響を与えると考えている人は33%でした。
#DeleteFacebook
3月最終週、ラスベガスで開催されたデジタルマーケティングのイベント、Adobe Summitで、日本から取材に来ていた記者の皆さんと会話をしていると、米国での雰囲気との大きな違いを感じました。
Facebookのプライバシー問題が、日本ではさほど影響していないようだったのでびっくりしたのです。確かに、日本の友人は今回の問題以降も、自分のプライベートのことや子供の写真をこれまでと変わらずFacebookに投稿していて、投稿をパッタリしなくなったサンフランシスコ周辺の友人と温度差は明白でした。
投稿しないだけならまだ良いのですが、今回のプライベート事件への抗議の意味を込めて、「#DeleteFacebook」ハッシュタグも盛り上がりを見せました。つまり、Facebookアカウントを消してしまおう、ということです。
テクノロジー企業のトップで最も素早くアカウントを消したのは、イーロン・マスクCEO。TeslaやSpaceXのFacebook企業ページを削除しています。一方でマスク氏はTwitterを多用しており、4月1日のエイプリルフールでも、Tesla破綻のジョークをツイートしていました。もっともTeslaの昨今の状況を考えると、あまりジョークになっていないのですが……。
今更懸念を発表しても……
自社のビジネスにSNSを利用してきたじゃないか
Facebookを日常の中で利用している限りにおいては、お金はかかりません。世界中の人々20億人が日々集まる場を用意したことで広告価値が生まれ、起用からの広告出稿がFacebookの成長を支えてきました。
実際に広告を出稿してみようとするとわかりますが、対象となるユーザーの年齢や性別、地域、興味などを絞り込んでいくことができます。つまり我々の属性データは常に広告出稿のために使われています。さらに、今回問題になったのは、アプリに対して個人情報提供の許可をユーザーが与え、そのアプリの用途以外に使われたことでした。
AppleのCEO、ティム・クック氏は、プライバシー情報に関して、懸念を感じていたことを明かしました。悪い予感が的中したと話し、より強い規制が必要であるとの考えを示しています。Appleの姿勢としては、ユーザーデータを売り物にするビジネスをしている以上、このようなプライバシー問題は防げないと考えているようです。
一方でマーク・ザッカーバーグCEOはクック氏の遠回しの批判に対して、広告モデルによって世界中のユーザーが無料でサービスを利用できている点を強調しています。
ただ、Appleにしてもその他の企業のトップにしても、これまでソーシャルメディアを「オーディエンスが集まっているライブ会場」として企業のPRに活用してきた背景があるわけで、Facebookのビジネスモデルがなければ、そうしたプロモーションはできなかったと言えます。
またスマートフォン活用やカメラへのニーズはFacebookやInstagramの幅広い普及があったからであって、AppleがFacebookを否定することはできないのではないか、とも言えます。なんとも難しいところですね。
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