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完全ワイヤレスギターアンプ「KATANA-AIR」が想像以上に便利

2018年03月31日 12時00分更新

文● 四本淑三

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いかにもBOSSっぽいエフェクト系

 音色の設定は、なかなか男らしい。アンプシミュレートは5種類。アコースティック! クリーン! クランチ! リード! ブラウン!  エレキ系はゲインの違いで4種類というわかりやすさ(ちなみにブラウンはEVHのあの音)。

 「どこそこのメーカーの何年型を精密に再現」という技術もすごいけれど、元のアンプを知らなければどうでもいい情報であって、やっぱり出音がすべて。ちょっとゲイン高めで、景気のいい鳴りっぷりは、BOSSの今までの製品が好きなら、裏切られないサウンドだろうと思う。

 トーンは3バンドで、ギターのみに効き、Bluetoothの再生音には無効。エフェクトはBST/MOD、DELAY/FX、REVERBの3つのノブが立つ。REVERB以外は、ノブ12時以前と以降でエフェクトタイプが切り替わる。各ノブ下のスイッチでもエフェクトの切り替えができ、それぞれ3ステップの循環式で緑、橙、赤のLED付き。

 ざっと試したところ、BST/MODノブにはゲインの違うブースター/歪み系が3つ、そしてフェーザー、フランジャー、コーラス。DELAY/FXは、反復音の違いで、ストレートディレイ、アナログディレイ、ワウフラッターが加わったテープエコー。それにトレモロ、オクターバー、オートワウ。REVERBは、大小のルームシミュレーションと、スプリングリバーブ。TAPスイッチはディレイタイムに連動する。こうしたパネルの設定は、6音色までプリセットできる。

 ブースターのようなプリ系エフェクトが用意されているのはさすが。というよりギターとアンプがワイヤレスで直結していて、その間に物理的なエフェクトは接続できないので、アンプ側の設定がすべて。どうせなら、EQや派手に効くファズなんかもほしいところだが、いまのところパネルからアクセスできる機能は限られているようだ。

 テスト段階ではまだ用意されていなかったが、Android/ iOS用に「BOSS TONE STUDIO」というアプリが提供される。メーカーのニュースリリースには「内蔵エフェクト50種類以上」とあるので、アプリを使って設定することになるのだろう。リリースで回ってきたスクリーンキャプチャには、ルーティングを示す小さいアイコンが表示されていて、結構細かい設定ができそうだ。

もしアンプヘッドとして使えたら

 音色はシミュレートでいかようにもなる時代。フェンダーなのにマーシャルの音が入っていたり、VOXなのにフェンダーの音がプリセットされていたり。一度メーカーの垣根を超えたシミュレート合戦が始まってしまうと、ブランドを表に立てた差別化は難しくなってくる。よって、このワイヤレスの一手は、かなり強力なように思えた。

 実際に、シールドとほとんど差がない使い勝手には、少なからず感動させられた。お家ワイヤレスはアリである。いや、これなら断然ワイヤレスにしたい。

 というのも、以前、机の上にアンプを載せてギターを弾いている際に、シールドをコーヒーカップにひっかけ、その内容物のすべてを浴びたMacBook Airを全滅させるという大惨事を経験しているからだ。ぶっといシールドが電波だったら、年末の忙しい時期に泣かずに済んだはずである。

 もっとも、そんな時期にギター弾いて遊ぶなという話もあるだろう。しかし禁止の多い生活は人心を荒廃させる。豊かな生活をノントラブルで送るために、ワイヤレスは必要である。

 完全ワイヤレスという仕組みから、クリエイティブなアプローチも考えられる。たとえばロクロのようなターンテーブルの上に置いて回す、車に積んで目の前を走り去ってもらうなどの方法で、リアルなドップラー効果が得られる。キッズ時代、私はギターを弾きながら自分がグルグル回ってレスリー効果を確かめたが、あれはシールドが絡む上に、目が回って転び、怪我をするので良くない。

 欲を言えば、このKATANA-AIRをアンプヘッドにして、ほかのキャビネットに接続できたら、もっと良かった。あるいはアンプシミュレーターに入る前の信号を、そのままほかのギターアンプに接続できるとか、フロア型のペダルにまとめてしまうとか。

 もちろん電波の周波数や混信の問題があるから、自宅以外の場所で使うのは難しいかもしれない。使いやすさも、レシーバーとトランスミッターが閉じたワンペアだから成立しているところもあるだろう。でも、この手軽さで使えるものが、どうにかならないだろうか。BOSSのみなさん、よろしくお願いします。

■関連サイト

四本 淑三(よつもと としみ)

北海道の建設会社で働く兼業テキストファイル製造業者。

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