日本にも進出している大型玩具店チェーン「トイザらス」。米国では「Toys’R’Us」と表記され、「R」は裏文字となっています。ブランドを和訳するときに、「ら」をひらがなにするというのは良いアイディアでした。
さて、そんな米国のToys’R’Usが、再建を断念し、全店閉鎖のプロセスに入るとのニュースが入ってきました。子供がいる親はもちろん、お店でおもちゃを買ったことがある多くのアメリカ人にとってショッキングな出来事として受け止められています。
ちなみに、日本とアジアのトイザらスは経営状況もよく、米国と関係なく営業を続けるそうです。日本市場に関しては、これまで以上に出店を強化するとも発表しています。
Toys’R’Usだけではない、米国小売店の現状
Toys’R’Usの負債総額は50億ドル。2018年に入ってから、再建計画の一環として、800あった米国内の店舗の約100店舗を閉鎖することを決めていました。
清算手続きに入ることで、全店舗の閉鎖と3万人を超える従業員が職を失う可能性が指摘されています。もちろん郊外を中心とした店舗スペースが空くことになり、不動産市場にも大きな影響を与えると考えられます。経済面での大きな影響は免れられないということです。
加えて、心理的な面でのショックも大きいようです。初めての子供が生まれてから度々通っていた親や、物心がついて訪れた大好きな場所という記憶とともに育った子供たち、あるいは友人の子供の誕生日の折に訪れるなど、非常に思い出深い場所であり続けていたからです。
しかし、こうした思い出深い店舗も、近年は非常に厳しい現実があります。欲しい商品がすべて揃っているわけではなく、オンラインでのオーダーの方が確実で安いことが多いからです。それはつまり、Amazonの勢力拡大と、これに対抗する形で店頭での品ぞろえを強化したWalmartやTargetといった総合スーパーやデパートが、Toys’R’Usの存在意義を薄めてしまったと考えられます。
この傾向は必ずしもおもちゃ市場に限りません。大型店舗を構える専門店に共通する問題となっています。例えば、電気製品を扱うBestBuy、家具や日用品を扱うBed and Bath Beyondなどを訪れると、棚に商品はあるのですが、特にBestBuyはスカスカなところも目立ちます。そして、在庫を持たずに、あらかじめオンラインでオーダーしておけば、店頭で受け取れるというスタイルの活用を強調しています。
すでに米国では、店頭が「楽しいショッピングの現場」ではなくなってしまったのです。
もちろん個人商店やローカルビジネスはその限りではありません。オンラインにないものが価値を帯びることだってたくさんあるでしょう。しかしより大量な消費が動く市場では、その価値が薄れてしまったと見ることができます。体験としてのショッピングが今後どのように変化するのか、また別の機会に触れてみたいと思います。
そもそも子供にとってはおもちゃよりiPad
子供であれば、キャラクターのおもちゃが楽しかったり、うれしかったりする時期はありますし、日本では新幹線がロボットに変形する「シンカリオン」など、アニメとのメディアミックスが非常に成功している例が今もあります。魅力的な商品ですよね。
しかし、米国の玩具メーカーである、マテルやハズブロなどにとっても、おもちゃ屋の店頭がなくなることが打撃となり、株価が下落しています。その話と関係しているのが、子供が何を欲しがるかという問題です。
ショッピング体験としてのToys’R’Usを終焉へと追いやったのがAmazonならば、おもちゃのニーズという面から、Toys’R’Usに終止符を打たせる原因を作ったのはAppleでしょう。米国での親たちが、いずれ飽きてしまう高価なおもちゃを買い与えるより、iPadとBeatsのヘッドフォンを揃えてYouTubeやゲームを楽しむほうを選択していることは、街中や空港で5歳以上の子供たちを見ているとわかります。
そのiPad自体は、長らく販売台数の不振を続けてきましたが、昨年の廉価版の投入で盛り返しており、来週に現地から詳しくお伝えする予定の27日開催の教育イベントでも、廉価版iPadが刷新されると見られています。
一度限りのおもちゃよりも汎用的なツールへとこどもたちのニーズが向かっている現状は、おもちゃにとって不遇の時代と言えます。そうしたデバイスとともに遊ぶおもちゃも出始めており、たとえば世界的に人気の木のレールの電車のおもちゃ「Brio」ではスマートフォンやタブレットで運転できる電車が販売されています。
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