2月2日の決算説明会で、代表権のない取締役会長に退く意向を示したソニーの平井一夫 社長兼CEO。就任した2012年は、国内家電業界が曲がり角を迎えるタイミングであった。厳しい経営状況の中、テレビ事業を回復させ、平井流のソニーらしさの実現にも取り組んできた同氏。パナソニックやシャープの歩みと比較しながら、平井社長とソニーの5年を振り返ってみよう。
ソニーは、2018年4月1日付けで、平井一夫氏から、副社長兼最高財務責任者(CFO)の吉田憲一郎氏へと、社長兼CEOのバトンを受け継ぐトップ人事を発表した。
同日に発表された2017年度(208年3月期)の業績見通しは、2回に渡る上方修正によって、営業利益7200億円を達成する見通し。これは、1997年度(1998年3月期)の5257億円の過去最高を大幅に上回り、20年ぶりに最高益を更新する内容になる。
過去最高業績という「花道」で、平井氏は、会長へ退くことになる。
そして、2018年3月期は、社長在任中の6年間に行ってきた「3年間×2回」の中期計画の最終年度。2018年4月からは、3カ年の新たな中期計画がスタートするタイミングでもある。
国内家電ブランド冬の時代にかじ取りを任せられた
ソニーの平井社長兼CEOは、「新たな中期計画がはじまるこのタイミングで、新たな経営体制にバトンタッチすることが、今後のソニーにとっても、私自身の人生においても適切だと考えた」とし、「第2次中期計画の最終年度となる今年度において、目標として掲げた経営数値を上回る業績を見通せるようになったこと、社内外の多くの方々に、『元気なソニーが戻ってきた』と言ってもらえるようになったことは大変うれしく思っている」と、自らの経営を振り返ってみた。
平井氏が、社長兼CEOに就任した2012年は、ソニーにとって、厳しい経営環境のなかにあった。いや、それはソニーだけでない。日本の電機大手各社が同じ状況に置かれていた。特に、テレビのグローバル競争に敗れた日本勢は、まさに大きな転換を余儀なくされる事態に陥っていたのだ。
2012年3月期(2011年度)のソニーの業績は、4年連続となる赤字を計上し、最終赤字は4567億円にまで膨れ上がった。そして、パナソニックは、過去最悪となる7720億円の最終赤字。また、シャープは、当初の黒字見通しから一転して3760億円という最終赤字を計上していたのだった。
こうしたタイミングでソニーの社長兼CEOに登板したのが、平井氏であった。