ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第444回
業界に痕跡を残して消えたメーカー メモリーの需要で急成長を遂げたAlliance Semiconductor
2018年02月05日 12時00分更新
ビデオカード業界に参入
DRAM/SRAMに続き1994年頃から(DRAM/SRAM/フラッシュに続く)第4の柱として同社が注力したのは、マルチメディア向けである。具体的にはビデオチップである。最初に登場したのがProMotion 3210という32bitの2Dビデオチップで、低価格向け製品として登場した。
ただ同時期の競合製品としては、S3のVision864/964、TsengのET4000/W32p、あるいはWeitekのPower 9100といった製品がそろっており、PCIバスに対応している低価格(低性能)チップ以上の評価ではなかった。
画像の出典は、“VGA Legacy MKIII”
このProMotion 3210の内部を64bit化したのが1995年に登場したProMotion 6422である。“Drawing Engine”という64bitの描画エンジンは見えるが、これは単なるBitBltしか機能を持っていなかったようだ。
画像の出典は、Alliance Semiconductorのカタログ。
ただこれをメモリー相手に直接実施すると遅くなるということで、内部にこのDrawing Engine用のキャッシュ(BLT FIFO)を搭載しているのがやや目立っている。
やはり低価格向け、という枠を超えることはできなかったにせよ、ProMotion 3210よりは性能が上がったこともあり、こちらはもう少し採用事例も多かった。
これをさらに高速化したのが、1996年に投入されたProMotion AT24である。最大の違いはBitBltエンジンが128bit化されたことで、カタログによれば“24bit/32bitカラーに最適化されており、256のラスターオペレーションをサポート”とあるのだが、BLT FIFOはともかくメモリーバスが64bitのままだったため、どこまでこれが効果的だったかは不明である。
細かいところでは、PCI 2.1に対応して66MHzでの動作も可能になっていたが、実際の使われ方を見ていると33MHz/32bitのみだったようだ。
画像の出典は、Alliance Semiconductorのカタログ。
さて、1997年にはこのProMotion AT24に3D機能を追加したProMotion AT3Dが登場する。
画像の出典は、Alliance Semiconductorのカタログ。
この3D機能、機能として列挙されているのは以下の程度で、正直あまりたいしたことはなく、あれこれ期待するのは無理という感じだ。
- Full Hardware Setup
- On-Chip D3D Texture Palette
- Fast DMA Palette load
- True divide-per-pixel perspective
- Full lightning and fog
- Full and compressed Z-buffer support
- Precomputed MIPmap filtering
- Gouraud shaing
もっとも1997年という時期は、まだそもそも3Dゲームがほとんど存在しない(例外が3DfxのVoodoo Graphicsに対応したもの)という時期なので、最初はこんなものだ、という気もする。
もう1つ注目なのが、3Dfx THPというI/Fポートだ。このTHPがなんの略なのかついに判明しなかったのだが、これは3Dfx VG-96、要するにVoodoo Rushに対応したポートである。3DfxはこちらをSST-96という名称で呼んでいたが、中身は同じものだ。
ProMotion AT3Dの場合、THPポート経由でVoodoo Rush側のメモリーをフレームバッファとして使うこともできたし、ローカルのDRAMを利用することも可能だった(これを併用できたかどうか、資料が見当たらなかったのでわからない)。
また外部にAlliance Semiconductorの7110/7111というH.264/H.324デコーダーやMPEG-2デコーダーを接続して、ビデオカード側で動画再生も可能だった。
画像の出典は、Alliance Semiconductorのカタログ。
このProMotion AT3Dから3D機能を抜いた廉価版が、同時に発表されたProMotion AT25であり、Voodoo Rushのカードにはこちらが多く搭載されることになった。もちろん、Promotion AT3D単体を搭載したカードもいくつかはあったようだ。
画像の出典は、“Vintage3d”
この連載の記事
-
第798回
PC
日本が開発したAIプロセッサーMN-Core 2 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第797回
PC
わずか2年で完成させた韓国FuriosaAIのAIアクセラレーターRNGD Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第796回
PC
Metaが自社開発したAI推論用アクセラレーターMTIA v2 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第795回
デジタル
AI性能を引き上げるInstinct MI325XとPensando Salina 400/Pollara 400がサーバーにインパクトをもたらす AMD CPUロードマップ -
第794回
デジタル
第5世代EPYCはMRDIMMをサポートしている? AMD CPUロードマップ -
第793回
PC
5nmの限界に早くもたどり着いてしまったWSE-3 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第792回
PC
大型言語モデルに全振りしたSambaNovaのAIプロセッサーSC40L Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第791回
PC
妙に性能のバランスが悪いマイクロソフトのAI特化型チップMaia 100 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第790回
PC
AI推論用アクセラレーターを搭載するIBMのTelum II Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第789回
PC
切り捨てられた部門が再始動して作り上げたAmpereOne Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第788回
PC
Meteor Lakeを凌駕する性能のQualcomm「Oryon」 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU - この連載の一覧へ