音のゆがみを抑えるスピーカーcomuoonで難聴を救う
Morning Pitch Special Edition2017 “Tech Impact”
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微生物の力を借りてバイオマスを化学品に変える「バイオリファイナリ」
5番目はGreen Earth Instituteの井原代表取締役が登壇。井原氏は経済産業省の国家戦略室にいたという異色の経歴を持ち、その時に手がけていた「グリーン産業の創出」を実践してみたい、ということでGreen Earth Instituteに飛び込んだ。
「原油の1年間の生産量は50億、1年間に成長するバイオマスの量が2200億で、燃料に換算すると10対1になります。ところが、現在の化学品の9割が原油から作られています。原油から作られるので、CO2が出てきます。資源を巡る争いに終止符が打てていません。1割のバイオマスから作られる化学品も、減量はトウモロコシや小麦、サトウキビといった食料と競合するものから作られています」(井原氏)
そんな課題を解決すべく、Green Earth Instituteが手がけるのは「バイオリファイナリ」という技術。バイオマスを微生物の力を借りて、化学品に変えることができるのだ。従来の10倍以上の生産性を持ち、原料は食料と競合しない農業廃棄物を利用でき、さまざまな化学品を作成できるという特徴がある。
今後は、アミノ酸といった食料に直結する素材や、化粧品のような高付加価値商材を手がけ、将来はバイオリファイナリという産業分野のプラットフォーム企業を目指すという。
「石油とバイオマスから作られる化学品の割合が9対1という状況を、我々の技術で1対9に逆転させたいと考えています。そうすると食糧問題との競合を解消し、地球温暖化を防ぎ、戦争の原因を作らない、という豊かな生活を享受できる世界を実現したいと思っています」(井原氏)
コールセンターの効率を向上させる「VOICE DESK Center」
6番目はHmcommCEOの三本氏。Hmcommは音声技術と自然言語処理を扱う産総研技術移転ベンチャー企業で、「VOICE DESK Center」というソリューションを提供している。今後、コールセンターや飲食店、小売店舗などで人材不足の問題が深刻化すると見られており、その課題をAI音声認識で解決しようとしているのだ。
音声認識の技術を支えるのは、音声データとなる。コールセンターは通話が録音されているので、膨大な音声データの宝庫。そこで、まずはコールセンターのソリューションを提供する。そして、音声ビックデータを所有し、その後質で量を作るというスキームを構築している。
「アメリカのTwilioをバンドルし電気通信事業も取得しまして、我々がコールセンターのソリューションを直接お客様に提供しています。これにより、たくさんの音声データが集まってきます」(三本氏)
顧客とオペレーターが会話すると、システムが音声認識して、注文を自動的に帳票に入力し、ほかの基幹システムと連携したりできる。音声技術に関しては産総研と共同研究を進めており、音声にはこだわっていきたいと三本氏。しかし、スマホに話しかけるというよりは、オフィスでの電話やミーティングにこだわっていきたいという。今後は、音声ビッグデータを活用して対話が破綻しない自然な自動音声対話を実現し、コールセンターや社内ヘルプデスク、店舗受付、飲食店の注文受付などを無人化していくとのことだった。
超高速3次元距離測定システム「ISC」
7番目はITDLabの實吉代表取締役会長。同社は、ステレオカメラを利用した超高速3次元距離測定システム「ISC(インテリジェント・ステレオカメラ)」を開発している。實吉氏は、1989年頃はスバルのアイサイトの開発に携わっていた経歴を持っている。
単眼カメラで歩行者などの被写体までの距離を計測しようとする場合は、絶対測定ではなく、モデルから推測することになるそう。ステレオカメラだと、立体画像が出るので、各画素までの距離が出るので、簡単に歩行者を抽出できるというメリットがある。
研究を重ねた結果、高精度の計測が可能で、撮影スピードは160フレーム/秒になった。さらに、単眼カメラのようにモデルを搭載する必要がないので、コストが半分くらいで済むという。
「我々はISCと言う名前で呼んでおり、製品は作らず、技術を知的財産として提供します。評価キットで評価していただきます。すでに、自動車や建機、ドローンといった20社以上と実用化のお話し合いを進めさせていただいています。評価モデルはすでにロボット用は作りまして、来年3月までには車用のカメラを開発します」(實吉氏)
自動運転の市場は、2030年に7000万台を超えると言われており、ISCのカメラはその8割を狙おうとしており、その自信もあると實吉氏は胸を張った。
4人乗り電気自動車「FOMM」
ラストは、FOMMの鶴巻代表取締役。手がけるプロダクトは世界最小クラスの4人乗り電気自動車「FOMM」だ。
「このコンパクトEVは車ではありません。車社会のイノベーターです。大震災の時、津波から車で逃げて巻き込まれて亡くなられた方がたくさんいらっしゃるんです。そこで、水に浮く電気自動車を作りたいと起業しました」(鶴巻氏)
鶴巻氏は、スズキとトヨタ車体でエンジニアとして30年活躍してこられたそう。FOMMの主要メンバーもスズキやトヨタ、HONDA、日産といった大手メーカー出身となっている
FOMM1.0は航続距離は160kmで、電費性能は13.5km/kWhとなっている。F-SASという手でアクセル操作をするシステムを採用し、ブレーキとアクセルを踏み間違えるという事故が起きないようになっている。通常のEVではリチウムイオンバッテリーはユーザーが交換することはできないのだが、FOMMはF-SBSを採用。手で5分ほどで交換できるようになっている。そのおかげで、「バッテリークラウド」というシステムも構築している。ガソリンスタンドに行けば、バッテリーは交換し放題。EVの課題である、バッテリーの寿命をユーザーが気にする必要がなくなるのだ。さらに富士通と協業し、F-BCSも用意。バッテリーの劣化や交換ステーションの案内をリアルタイムに提供できる。
もちろん、緊急時は水に浮いて水上を移動できる。日本はもちろん、タイなど海外6ヵ国でも特許を出願中だ。
次のFOMM2.0では、自動運転とシェアリングをミックスした「筋斗雲シェアリング」を提案しているという。スマホで車を呼び出すと、車がユーザーの前に来て、乗り込めるようになるという。
また2016年のMorning Pitch Special Editionで最優秀賞を獲得したGlobal Mobility ServiceCEOの中島氏によるゲストスピーチが行なわれた。
Global Mobility Serviceは、自動車を購入する与信審査に通らないが、実際は支払い能力がある層にファイナンスを提供する事業を行なっている。携帯電話の支払いが滞ると電話が使えなくなるので、支払いに対するインセンティブが高い。これまでの車は、支払いしなくても乗れてしまうのがネックだった。そこで、MCCSというシステムにより、支払いが滞ると車のエンジンがかからなくなるようにした。
フィリピンで実証実験を行なったところ、従来は20%だったデフォルト率が0.9%になった。その結果を受け、SBIのソーシャルレンディングやイオンからの資金を受けられるようになった。今後はカンボジアに展開する予定とのことだ。
「Morning Pitch Special Edition2017 “Tech Impact”」で来場者による投票で選ばれるオーディエンス賞を獲得したのは、水に浮くEVを開発するFOMM。最優秀賞を獲得したのは難聴者向けのスピーカー「comuoon」を開発するユニバーサル・サウンドデザインとなった。
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