ライバルを研究し尽くしたデザイン?
なにより工夫されているのは、ネックバンドの材質と形状だ。柔軟で復元力のあるエラストマーが使われ、クシャッっと丸められる。ほかのメーカーは、ここが硬い素材でできている上に、フォールディング機構もない。だから携帯時は、オーバーヘッドバンドの小型ヘッドフォン並みにかさばってしまうのだ。
携帯性優先なら、左右のユニットをケーブルでつなぐネックループタイプの方が優れている。が、これは首の後ろにくねくねした線が見え隠れして、見栄えが良くない。携帯性と見た目のスマートさを両立したデザインとして、このネックバンドはなかなかのアイデアものだと思う。
加えて左右のハウジングは背面のマグネットで吸着する仕組みで、首から下げている際には脱落しにくく、携帯時にもコードが絡まりにくい。至れり尽くせりの使い勝手だ。
総じてRHAのワイヤレスモデルは、合理的なデザインという点で一貫している。おそらく既存のヘッドバンドタイプを研究し尽くし、そのネガを潰した結果だろう。他メーカーから乗り換えても、不都合を感じる場面はないばかりか、ほとんどの面で優れている。他メーカーにあってRHAにない機能は、バッテリーが切れた際の有線接続、あとはハイレゾコーデックの対応くらいだろう。
いくつもイヤフォンを持っている人なら納得
MA750 Wireless とMA650 Wirelessの大きな違いは、ケーブルにイヤーハンガーが付くこと。イヤフォン本体が大きく、ハウジングも若干大きく重いこともあって、装着位置を安定させる必要があるためだ。
そのため着脱に一手間余計にかかる。MA650 Wirelessのように、スポッと外し、スポッと着けるわけにはいかない。ここが両機種、どちらを選ぶかで迷った場合の、大きな分かれ目だろう。
もうひとつ、MA750 Wirelessは、ほかに比べればフィッティングに気を使う必要がある。その点で、初心者も含めて誰にでも勧められる製品ではない。しかし、すでにイヤフォンをいくつも持っているようなユーザーなら、こちらの方が不満なく使えるはず。
イヤーハンガーのおかげで装着位置の安定度は高く、時間をかけてフィッティングを進める甲斐もある。付属のイヤーチップも豊富だ。通常のシリコンタイプのほかに、遮音性の高いダブルフランジタイプと低反発ウレタン製のものが付属する。
音に関しては、ワイヤードのMA750シリーズそのもの。ドライバーユニットはオリジナルの「560.1」とされ、ワイヤードのMA750シリーズでは、ハイレゾ対応機として日本オーディオ協会のお墨付きを得ている。つまり十分にハイエンドまで伸びた製品としてアピールしたい、そうした意思がメーカー側にあるということだ。
実際に、低域からフラットに伸びたバランスの良さは、ダイナミックドライバー一発の、1万円台半ばのイヤフォンとしては図抜けている。特にいいのは、中音域の情報量が濃く、解像感が高いこと。
そうした印象はワイヤレスになっても変わらない。むしろ、イヤフォンジャック付きの古いiPhone 5cでワイヤードと比較した場合、ワイヤレスの方がダイナミックレンジの広さを感じられて好ましかった。これはBluetoothレシーバーがドライバーに最適化されているか、相応に優れているということでもある。
もちろん電波状態がコロコロ変わる屋外では、たまに音が飛ぶ。ワイヤードとの違いはその点でしか感じられなかった。もはやBluetoothは、音を諦めた上での消極的選択ではないのかもしれない。