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たかが葉っぱ、されど葉っぱ

スマホどうぶつの森 残念だった「葉っぱ」のこと

2017年12月08日 17時00分更新

文● モーダル小嶋/ASCII

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葉っぱの家具はダブルミーニングである

カイゾーに作ってもらった家具は段ボール箱(だと思う)に入れられて届きます。葉っぱにはなりません

 ポケ森の残念なこと。家具が「葉っぱ」ではなくなった点です。

 これまで、どうぶつの森シリーズでは、家具のアイコンが緑色の葉っぱでした(リメイクなどで、赤になったり黄色になったりします)。単にアイコンのデザインとして使われていたわけではなく、家具を出すときは、葉っぱが煙を上げて家具になります。逆にしまうときは、家具が葉っぱに戻ります。いわば、家具≒葉っぱなのです。

 家具が葉っぱであることに、どのような意味があるのか。そもそも「どうぶつの森」シリーズは、どうぶつたちが暮らす村にプレイヤーが移り住み、住人たちとの交流などを通してほのぼのとした生活を送る……のですが、そのスタートはタヌキのたぬきちに自宅を強制的に改築された挙句、多額の住宅ローンを組まされ、返済のために奔走することになるというストーリーでした(ざっくり言うと)。

 これを踏まえると、家具が葉っぱであることは、ポジティブにもネガティブにも受け取れる、2つの意味を内包しているように思えます。

テーブルも、椅子も、楽器も、食品も、もしかしたら、ただの葉っぱでは……

 1つは、どうぶつの森というファンタジックな世界の演出要素です。この森では、どうぶつは友達です。経済活動をしなくても生活はできます。そんな浮世離れしたポジティブなファンタジーの一部として、葉っぱが家具になるわけです。

 現実世界で考えてみましょう。たいていの家具は大きいうえに重く、家具店で購入した後の持ち帰り、部屋での組み立てはやっかいです。一度設置してしまうと移動にも困ります。不要になったら捨てるのは大変です。しかし家具を葉っぱにできるとしたら、それらの苦労から開放されます。

 どうぶつの森シリーズでは、木を揺らすと葉っぱが落ちてきて、拾うとそれが家具であったりしました。そんな不思議な設定を作り出すキーアイテムこそ葉っぱの家具であり、ほのぼのとしたスローライフの象徴の意味を持ちます。

 ただ、タヌキにローンを組まされた家に住んでいる……と考え始めた途端、葉っぱの家具はもう1つの意味を持つ。ネガティブな幻想をもたらすトリックスターとしての側面を見せてくるのです。

 部屋にどんなに家具を並べたところで、ドロンと煙に巻かれて気がつけば葉っぱに戻りました、広い机もぜいたくな棚もすべては幻、ということになりかねない。家具が葉っぱで示されていることは、深読みすれば、「豪華なものが揃っているように見えるけれど、あなたはタヌキに化かされているかもしれないよ」という任天堂らしい(?)ブラックジョークとも受け取れる。

 いずれにしても、葉っぱの家具は「あの世界は現実のものではない」ことを伝える二面性を持つ、かなりシンボリックな存在であるように感じられました。

 ところがポケ森では、家具は葉っぱではなく、ただの家具であり、それ以上でもそれ以下でもない(変な表現ですが)。もようがえをするときは、専用の画面で家具をタップすれば出したりしまったりできるのですが、葉っぱにはなりません。

家具を出す/しまうときは主人公が直接取り出すのではなく、専用の画面から配置していくスタイルで、「ハッピーホームデザイナー」に近い

「家具をおく」「しまう」には例の葉っぱのアイコンがあり、しまうときはドロンと煙が出る。このあたりに名残があるといえるかもしれません

 その代わりといってはなんですが、現実世界のお金で買える葉っぱのお金「リーフチケット」(1枚6円相当)が本作には存在します。葉っぱのお金です。これはこれで……むしろ葉っぱがお金というのはよりダイレクトな……いや、深く考えるのはやめておきましょう。

たぬきちくん、リーフチケットの風呂は快適か?

 家具が葉っぱであることは、筆者にとってどうぶつの森シリーズの世界観に欠かせない遊び心に思えたものです。ポケ森の家具が「家具であるだけの存在」になったことには、少し夢から覚めてしまったというか、なんだか現実的な印象を受けてしまいます。

 それは筆者の個人的な感傷にすぎるのかもしれません。しかし、ASCII編集部の盛田さんが「スマホどうぶつの森が地獄でした」と語っていたように、ポケ森にはよくも悪くもリアルの仕事を思わせるような内容になっている部分がある。葉っぱではなくなった“リアルな”家具は、「現実世界に近い」イメージを少しばかり助長しているようにも思える。そこはファンタジーを貫いてほしかった。

 一般的には大きな変更と受け止められてはいないかもしれませんが、個人的には、ちょっと残念に思えるのです。

かつては葉っぱを見るたびに、どうぶつの森を思い出したものですが、これからはどうなるでしょう


モーダル小嶋

1986年生まれ。担当分野は「なるべく広く」のオールドルーキー。ショートコラム「MCコジマのカルチャー編集後記」ASCII倶楽部で好評連載中!

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