基調講演は経済産業省の石井芳明氏で、テーマは「イノベーション・エコシステムの形成について」。石井氏の部署は新しい事業を興したり、スタートアップを応援するという事業を展開している。
産業の新陳代謝とベンチャーの加速というキーワードを掲げて、産業競争力強化法や企業のベンチャー投資促進税制、補助金などを展開し、産業革新機構ではベンチャー出資を増やしている。国としては機運を作ることを目指しており、起業家がヒーローになる世の中を作っていこうとしているという。そのため「日本ベンチャー大賞」を作り、総理大臣が自らが表彰するという制度も進めている。第1回の受賞は株式会社ユーグレナだ。
既存の産業を延ばすというのも大事だが、変化に対応することも必要。特に大企業のイノベーションの促進は大きな課題となっている。政府としては前述のように制度からも支援するが、現場の運動も重要になるという。そこで、3つの施策に力を入れている。
最初に紹介された「イノベーション100委員会」ではイノベーションに取り組む経営者を100人集めて、彼らの声を発信することによってイノベーションを応援している。これらは経済産業省の独自レポートやフォーブスといったところでに掲載されており、たとえば既存事業と新規事業を切り分けて同時に進める2階建ての経営を推進するべきであるといったメッセージを発信している。
2つめの「イノベーションリーダーズサミット」は出会いの場。カンファレンスや交流会を実施し、2000件以上のマッチングを実現しているそう。2017年は10月23日~25日に虎ノ門ヒルズで開催された。
最後に紹介した施策では「大企業とベンチャーの連携の手引き書」を公開しており、その中からも3つの事柄を紹介してくれた。まずは「画期的なイノベーションは下からくる」。これはイノベーティブな企業がいきなりハイレベルな企業体質になるということはあり得ず、下のレベルから台頭してくるという意味。大企業からベンチャーを見ると、経営体質や生産管理がいまいちといった課題があるが、そこを延ばしていこうという。
2つめが「成功確率は低いが、インパクトは大きい」。大企業とベンチャーはプレイしているゲームが違う。大企業はいくつか事業をしても大体成功するが、ベンチャーはおおむね失敗するという。ベンチャーキャピタルの投資は1割がホームラン、残りはあまりうまくいかないのが普通。ただし、ホームランは100倍を越えて伸びるようなところを探しているそう。
3つめは「Jカーブ 成功には時間がかかる」。ベンチャーは悪い方から結果が出てくるので、3年くらい経って下がったところでやめてしまわないで、上を目指して結果を出せるかが重要になってくるという。