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業界人の《ことば》から 第269回

PC事業売却メドが見えた富士通、VRはどう位置づけるのか

2017年11月01日 09時00分更新

文● 大河原克行、編集●ASCII.jp

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今回のことば

 「『パソコンを使うなら、VR』と言われるようにしたい」(富士通クライアントコンピューティングの齋藤邦彰社長)

 富士通のPC事業売却が大詰めに入ってきた。

 富士通の代表取締役副社長兼CFOの塚野英博氏は、2017年10月26日に富士通本社で開かれた2017年度上期業績発表の席上、レノボグループに対してPC事業の売却を含む提携交渉の進捗状況について説明。「PC事業に関しては、ご心配をおかけしているが、交渉は着実に進んでいる。卑近な言い方だが、交渉は、アディショナルタイムに入っている段階」と独特の言い回しで表現。「少なくとも、日本では勤労感謝の日、米国ではサンクスギビングデー(感謝祭)は、ゆっくりと過ごしたいというイメージで物事を考えている」とした。

富士通の代表取締役副社長兼CFOの塚野英博氏

 日本の勤労感謝の日と米国の感謝祭は、いずれも11月23日であり、これまでに売却交渉を完了させる考えだ。

 2016年10月27日に、富士通とレノボがPC事業における戦略的提携を開始していることを公表してから、ちょうど1年でようやく合意の道筋が見えたといえる。

 交渉が長期化した背景には、「様々な交渉のなかで、細かい数字までかなり仔細に確認をしたことが理由。範囲が広いこと、掘り下げ方が深いということで、時間がかかってしまった。どこかでお互いに譲ってしまえばいいということもあるが、お互いに一定規模を持った会社であり、細かいディテールにもこだわった」とした。

 PC事業を担当する富士通クライアントコンピューティングは、新たな体制のなかで、今後も独自を発揮することができるか、そして国内開発、国内生産を維持できるかが焦点となるだろう。

富士通がいち早くVRヘッドセットを出せた理由

 その富士通クライアントコンピューティングが、国内メーカー初となるWindows Mixed Reality対応のVRヘッドセットおよびコントローラーを発売した。

会場にあったWindows Mixed Reality対応ヘッドセット

 単体価格は5万円。ノートPCの「LIFEBOOK AH-MR/B3」とのセットで24万円前後。VRヘッドセットが動作可能な機種は、一体型デスクトップや液晶分離型デスクトップ、最軽量ノートPC、シニア向け製品など幅広く、今後、検証することでさらに拡大予定だという。情報は同社サイトなどで公開していくことになる。

 富士通クライアントコンピューティングの齋藤邦彰社長は、「価格設定はかなり頑張った。年末商戦の目玉にしたい」と意気込む。

 日本マイクロソフトとの連携により、全国400店舗以上で体験できるコーナーを用意。「実際に体験してもらうことで、VRの楽しさや新たな気づき、五感に訴える実在感などを感じて欲しい」とする。

 富士通クライアントコンピューティングが、国内メーカーとしていち早くVRヘッドセットを市場投入できた背景にはいくつかの理由があると、齋藤社長は説明する。

 ひとつは、日本マイクロソフトとの緊密な連携だ。

 日本マイクロソフト 執行役員常務 コンシューマー&デバイス事業本部長の檜山太郎氏は、「この協業は1年以上前から行なってきたもの。革新的技術をコンピューター上で体験してもらうために、富士通と連携をしてきた。400店舗以上の店頭展示は、世界的に見ても突出した規模になる。富士通と一緒に革新的ともいえる将来のコンピューティングの世界を拓くことができる」とした。

 米マイクロソフト パートナーデバイス&ソリューション バイスプレジデントのピーター・ハン氏も、「富士通との継続的な技術面での協力により、製品化できた」と語る。

 2つめは、富士通クライアントコンピューティングのエンジニアリングチームによって開発されたという点だ。齋藤社長は「自前の開発チームを持っていることが、他社より先行して製品を投入することにつながっている」とする。ヘッドセットは丸みを帯びたデザインとしているが、これも富士通クライアントコンピューティングのこだわりだ。「多くのヘッドセットがシャープなデザインを採用しているのとは一線を画している。女性でも使ってみたくなるように配慮した」という。

 齋藤社長は「できるだけ早く投入したいと考えていた。このタイミングで投入できたことには満足している」としながら、「品質もサポート体制も、日本のメーカーならではの安心感を提供できる。そして日本には、日本ならではのコンテンツも多い。日本のメーカーとしての期待に応えたい」とする。

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