今回のことば
「2020年には国内パブリッククラウド市場において、リーディングシェア獲得を目指す」(日本マイクロソフト・平野拓也社長)
日本マイクロソフトの平野拓也社長が、2018年事業年度(2017年7月~2018年6月)の事業方針を発表した。ここでは、「働き方改革」、「インダストリーイノベーション」、「デバイスモダナイゼーション」の3つを注力分野に掲げたが、その一方で新たな目標として示したのが、2020年に国内パブリッククラウド市場においてリーディングシェア獲得を目指すことだった。
日本マイクロソフト、新たな目標
これは、クラウドを成長の柱に据える日本マイクロソフトが新たな打ち出した目標である。
これまで日本マイクロソフトが掲げていたクラウドビジネスにおける目標は、2017年度中(2017年6月末)に、クラウドビジネスの売上げ構成比を50%にまで高めるというものだった。
結果は、2017年度第4四半期(2017年4~6月)実績で47%。「3%の未達ではあったが、これで良しとしたい」と平野社長は自己評価。確かに、クラウドビジネスをメインストリームに据えるという本質的な狙いを捉えれば、47%と50%の差はそれほど関係がない。しかも、3%の未達の要因は、法人需要を中心に予想以上にWindows 10搭載PCの販売が増加。
これによって、非クラウドビジネスの構成比が上昇したというものだった。マイクロソフトでは、インテリジェントクラウドの成長には、それを支えるためのインテリジェントエッジの成長が重要であるとする「インテリジェントクラウド、インテリジェントエッジ」の方針を掲げており、インテリジェントエッジの中核を占めるWindows 10搭載デバイスの伸張は、今後のクラウドビジネスの拡大においても大きな意味を持つ。言い換えれば、「3%の未達」はうれしい誤算によるものだったといっていい。
ただ注目しておきたいのは、これまでの目標が社内の数字であったのに対して、新たに掲げた目標は社外を対象とした数字であり、相手がある目標であるという点だ。具体的には、パプリッククラウド市場で先行するAWS(Amazon Web Services)に、真っ向から勝負を挑むものになる。
調査会社によって、国内パブリッククラウドの市場の見方は異なる。
MM総研によると、2015年度における国内パブリッククラウド(PaaS/IaaS)市場のシェアは、AWSが34.1%となり首位。Microsoft Azureのシェアは20.2%で2位となっている。
またノークリサーチの調査では、直近でクラウドインフラを導入した企業では、AWSが25.3%、Google Cloud Platformが15.8%となり、Azureは14.9%と3位になっている。
現在、日本マイクロソフトのパブリッククラウド市場における順位は、2位か、3位ということになり、いずれにしろ1位のAWSとの間にはかなりの差があるといえる。
平野社長は、「3年前の日本マイクロソフトシェアは6位だったが、いまでは2位や3位というポジションにまであがってきた」としながら、独自の見解をもとに、「現時点でパブリッククラウド市場におけるシェアは12~13%だと考えている。これを2020年には25~30%にまで引き上げることで、リーディングシェアを獲得できる」と語る。
そして「シェアは倍増だが、国内パブリッククラウド市場が大きく拡大していることを考えると、売上高は倍増以上の伸びをしなくてはならない」と、今後の高い事業成長に向けて意欲をみせる。
クラウドビジネスが好調な伸び
だが、こうした意欲的な目標に対しても平野社長は手応えを感じているようだ。
そのひとつが、日本マイクロソフトのクラウドビジネスの成長率が海外の成長を上回りはじめた点だ。
「数年前までは、日本マイクロソフトにおけるクラウドビジネスの成長率は、海外を大きく下回っていた。だが、2017年に入ってから海外の成長率を日本が上回るようになった」という。
米マイクロソフトが発表した2017年度第4四半期(2017年4~6月)の業績のなかで、Azureの成長率は前年同期比97%増になったことを明らかにしている。実に2倍近い成長だ。日本マイクロソフトの実績については明らかにされてはいないが、関係者などの話を総合すると、この成長率をさらに上回る伸びに達している模様だ。
平野社長は「日本のマーケットが、米国市場に比べて2、3年遅れで広がりをみせるという、IT業界における典型的なパターンのなかに日本が入ってきた。日本マイクロソフトにとってはポジティブな影響になる」とする。
しかも、数年前にはAWS一辺倒であり、Azureは商談のテーブルに乗らないこともあったが、いまでは必ずといっていいほど検討材料にあがっていることを指摘する。
「昨年来、AzureとAWSの名前が横並びで挙がるということが普通になってきた。市場におけるAzureの存在感が明確に変わってきている」と手応えを示す。
そして、2016年からスタートしたSAPをAzure上にリプラットフォームするマイグレーションサービスも大きな成果があがっており、ミッションクリティカル領域で活用できるクラウドサービスという評価が定着しはじめていることも追い風だという。
「AWSと比べて、機能面や品質面において劣るどころか、勝るところが出てきている。まだまだチャレンジャーではあるが、2年前とはまったく状況が異なることを感じている」とする。
平野社長が、「2020年には国内パブリッククラウド市場において、リーディングシェア獲得を目指す」と宣言したのは、Azureに対する市場の評価が変化し、今後のクラウドビジネス成長に向けた手応えを強く感じている証ともいえそうだ。
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