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NTT Communications Forumで平野社長が語ったクラウド、AI、働き方

3度の失敗を経て、働き方改革を成功させた日本マイクロソフトの知見

2017年10月20日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/Team Leaders

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10月5日に開催された「NTT Communications Forum 2017」にパートナーとして登壇したのは、PaaSやOffice 365の分野での連携を発表した日本マイクロソフト 代表取締役社長の平野拓也氏。平野氏はマイクロソフトのインテリジェントクラウド・エッジの戦略をアピールしつつ、働き方改革で失敗してきた知見を聴衆に共有した。

NTTコミュニケーションズ代表取締役社長の庄司 哲也氏、日本マイクロソフト 代表取締役社長 平野 拓也氏

Windowsの売り上げはすでに1桁 変化するマイクロソフト

 基調講演においてNTTコミュニケーションズ代表取締役社長の庄司 哲也氏からの紹介を受けた日本マイクロソフト 代表取締役社長の平野 拓也氏は、「ビル・ゲイツが会社を興して、すでに40数年経ち、いわば中年の会社になっている。創業当時は「机に1台、家庭に1台PCを」ということでWindowsを中心にビジネスを展開してきたが、すでにWindowsが占める売り上げは全体のうちの一桁台になっている。お客様もすでに75%が法人になっている」と語り、マイクロソフトが時代の潮流とともに大きな変化を遂げてきたことをアピールした。

 そして、「クラウドファースト、モバイルファースト」の時代にシフトしてきた現在、マイクロソフトはより先を見据えた「インテリジェントクラウド」と「インテリジェントエッジ」という分野にフォーカスしている。「今、デバイスはPCだけでも、スマホだけでも、タブレットだけでもない。車や家電まで含めて、すべてがいわゆるデバイスになっている。これらがお互いにコミュニケーションを始め、人工知能もエッジにつながりつつある」(平野氏)。

 クラウドとエッジ(デバイス)にインテリジェンスが投入されることで、ビジネスプロセスや仕事のやり方自体も大きく変わりつつある。「工場の生産ラインの不具合がクラウドに通知され、解析して停止するまで2秒かかったら、20個の製品は見逃されてしまうことになる。しかし、インテリジェントエッジであれば、ナノミリ秒単位で検知できる」と平野氏はアピールする。また、オフィスワークに関しても、海外拠点とのやりとりをリアルタイムに通訳し、議事録としてまとめ、アクションアイテムとして参加者に配布することまでAIで実現できる。マイクロソフトとしては、企業のデジタルトランスフォーメーションを実現すべく、モダンワークプレイス、ビジネスアプリケーションやデータ、AI、インフラまで幅広い製品やサービスを提供するという。

 一方で、デジタルトランスフォーメーションの重要性に関してはまだまだ認知が低く、アジアのビジネスリーダーの80%が重要さを認識しているにもかかわらず、日本では50%にとどまっている点をあわせて指摘。「少子高齢化で今後20数年で労働人口が25%減るという統計もある。こうした待ったなしの状態の中で、いかに楽しく、いかにエネルギーを持って、いかに効率的に仕事をするかが大切」(平野氏)。その上で、「AIやIoTなどかっこいい言葉も必要だが、安心・安全で、地に付いたテクノロジーを使うことも重要だし、迅速にデジタルトランスフォーメーションに挑んでいくことも大切だと感じている」と述べ、リーダーシップやマインドセットの変革を訴えた。

アジアと日本企業のデジタルトランスフォーメーションに対する意識の違い

AzureのPaaS連携やOffice 365の導入推進で提携

 後半は庄司氏と平野氏とともにトークセッションを披露する。NTTコミュニケーションズはEnterprise CloudとMicrosoft AzureとのIaaS領域での提携を3月に発表しているが、同日付でPaaS領域での提携も発表。Enterprise Cloudのオプションとして、SQL DatabaseやWebAppsなどとのAPI連携が提供するとともに、Azure Stackサービスの国内導入も準備するという。「セキュアな情報をわれわれのクラウドに保管し、リソースの最適化や大量データの分析などAzureの強みを組み合わせることで、安全・安心で、柔軟なクラウド化をみなさまに提供できると思う」と庄司氏はアピールする。

 NTTコミュニケーションズとのパートナーシップについて聞かれた平野氏は、「NTTコミュニケーションズ様とのパートナーシップはすでに20年に及んでいる。時代とともにサーバー、ネットワーク、クラウドとテクノロジーは進化し、先週は量子コンピューティングまで発表したが、今回のパートナーシップは20年の変わらない実績で実現したことが貴重だと考えている」と語る。また、Azure Stackの導入に関しては、「Azureをプライベートクラウドの中にも持ってもらえるハイブリッドクラウド向けの技術。お客様にとっては、プライベートとパブリックのシナジーを得ることができる」とアピールした。

 そして、今回の提携にはOffice 365とNTTコミュニケーションズのメール、インターネット接続、SD-WANなどサービスとの連携も含まれている。さらにNTTコミュニケーションズ自体もOffice 365の導入を発表しており、働き方改革を自ら実践していくという。「われわれ自身がまさにOffice 365を使った体験を元にお客様にご提案でき、マイクロソフトと連携してさらに使いやすい形で提供していく」と庄司氏も期待を寄せる。

会議中の内職をAIに指摘されるマイクロソフトの「My AI」シフト

 トークセッションで庄司氏は働き方改革の“先輩”でもあるマイクロソフトの施策について、さらに平野氏に突っ込む。働き方改革への取り組みを聴衆に聞き、その関心の高さを受け取った平野氏は、「働き方改革は以前から取り組んできたが、実は3回失敗している。オフィスのレイアウトを変えてフリーアドレスにしただけで失敗したこともあるし、テクノロジーが先行過ぎて使い切れなかった経験もある」と振り返る。

日本マイクロソフト 代表取締役社長 平野拓也氏

 その上で、2011年からはいったん仕切り直し、テクノロジーやオフィスのレイアウトだけでなく、リーダーシップ、プロセス、人事制度まで含めた包括的な取り組みを進め、試行錯誤とした結果として、働き方改革の成果を得られた。「単に『作業を自宅でできる』『時短で仕事ができる』だけではなく、鍵は個人と組織の力をどれだけ引き出すか。あとは、ワークライフ“バランス”ではなく、仕事とプライベートのワークライフ“チョイス”が重要だと考えている」(平野氏)。

 Office 365のようなサービスがあれば、いつでもどこでも仕事ができ、さらにエッジ側に「My AI」が入ってくることで業務の効率化はますます加速するという。平野氏は、「最近、うちの社員にはAIからレポートが来ます。『今週、一番コラボレートした社員はこの人です』とか、『ミーティングの最初の30分内職してましたね』とか言われます」というコメントで、会場は笑いの渦につつまれた。

 最後、パートナーシップの将来像について聞かれた平野氏は、「新しいビジネスモデルを作れるパートナーシップにしていきたい。NTTコミュニケーションズの安心・安全という強みとわれわれのグローバル標準をうまく組み合わせて、グローバルにも挑戦したいと思う」と語り、デジタルトランスフォーメーション支援に向けた強い意思を明らかにした。

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