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前田知洋の“マジックとスペックのある人生” 第51回

ドラゴンクエストXIの成功は引き算の美学!?

2017年09月12日 17時00分更新

文● 前田知洋

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 ちまたの噂では、400万本を超える売り上げが予想されている「ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて」(以下、ドラゴンクエストXI)。リアルタイムでドラゴンクエストシリーズに触れている世代の筆者としては、プレイしないわけにはいきません。

 本作は30周年記念作品。30年という長きに渡り愛されているドラゴンクエストシリーズということもあり、100時間ほどプレイしてみましたが、記念作品に相応しい完成形だと筆者は思っています。発売して2日で200万本を売り上げた今作ですが、その成功には「引き算の美学」があると筆者は推測しています。

皮や布、縫い目、盾の傷まで表現されたテクスチャー(ネタバレ防止に一部モザイク有り)

DQ11 引き算の美学 その1「アップデート、DLC無し」

 最近のゲームでは、すっかりトレンドになりつつあるDLC(ダウンロード追加コンテンツ)ですが、ドラゴンクエストXIではDLCやアップデートが無いことが当初から表明されています。魅力ある世界観に、追加の外伝がないのは少し残念ですが、製作陣の自信と潔さを感じます。
→『パッチなどでゲーム要素を追加する、いわゆるDLCのようなものは有償・無償問わず予定はしておりません。』(https://www.jp.playstation.com/games/dragon-quest-xi-ps4/

 とくに、アップデートによる武器や防具のスペック(能力)の変更がないことで、最後まで安心して遊べるのは嬉しいところ。昨今ではゲームバランスを調整するために武器の弱体化は日常茶飯事でその度に戸惑うばかりです。

DQ11 引き算の美学 その2「キャラクターボイスなし」

 発売直前まで噂されていた各キャラクターの声ですが、いままで通りセリフはテキストのみ。そのお陰で、漫画や小説のように、ユーザーそれぞれが心のなかでボイスイメージを想像するという効果を成功させています。

DQ11 引き算の美学 その3「苦行のレベル上げなし」

 ゲーム設計がしっかりしているというか、ロールプレイングゲーム特有のキャラクターのレベル上げにフィールドをウロウロをする必要がありません。これは、初めてドラゴンクエストを遊ぶユーザーへの「やさしさ」を意識したのでしょう。ただし、これは今までのドラゴンクエストシリーズを経験した筆者のようなライトゲームユーザーにもありがたいゲームバランスでもあります。

DQ11 引き算の美学 その4「いつまでも、なつかしい武器と防具」

 主人公がはじめから持っている「イシのつるぎ」や「布の服」など、いつものパターンはそのまま。シリーズ経験者なら、なつかしく、馴染みのある名前の装備品を買い換えながら、スタート~中盤まで冒険を進められるのも攻略データいらず、安心、快適です(笑)。

うれし懐かし主人公の不変の初期装備

DQ11 引き算の美学 その5「ワンソース、マルチユースな音楽」

 おそらく、「今作のオリジナル曲が少ない」など、これは賛否の分かれるところだと思いますが、筆者にとっては満足です。ドラゴンクエストシリーズの楽曲は完成度が高く、日本全国でオーケストラによるコンサートが開催されるほど。ドラゴンクエストXIのBGMについては「過去作品の使い回し」なんてネガティブな評価もあります。しかし、今作の「過ぎ去りし時を求めて」のサブタイトル通り、製作陣はあえて過去の楽曲を使ったと勝手に推測しています。それは筆者がポジテブシンキングすぎるのかもしれませんが…。

DQ11 引き算の美学 その6「あえてオフラインプレイ」

 このところ、筆者がプレイするのは「バトルフィールド1(BF1)」「DARK SOULS III」など、インターネット回線を利用したオンラインゲームばかり。そんなゲームトレンドのなか、ドラゴンクエストXIがオフラインにしたのは「プレイヤーそれぞれのレベルとペースで」というポリシーなのでしょう。ドラゴンクエストは成長の物語でもあることも、その大きな理由なはず。

 他にもプラットフォームを2機種にしぼったことなど、語ることはまだまだありますが…。最後にドラゴンクエストXIの引き算ではない「見どころ」を紹介したいと思います。

ドラゴンクエストXIの見どころ
装備のテクスチャーとモンスターの動きに感動と驚き

 筆者がプレイしたのはPS4版。まず感動したのはキャラクターのテクスチャーです。装備品など、皮や布、金属などの質感がとてもよく表現されています。服には縫い目まであるテクスチャーの細かさと、絵本のようなファンタジックな世界観を両立させているのも特筆です。

 もっとも感動したのはモンスターの動きで、鳥山明氏が生み出した愛らしいキャラクターに、前作にも増して血が通ったといっても言い過ぎではないはず。「このモンスター、こんなヤツだったのかぁ!」と、姿と名前のノスタルジックさと、なめらかでコミカルな動きの新鮮さの組み合わせはシリーズのファンにはたまらないはず。ゲームが進むにしたがい、ダレがちになるモンスター討伐がぐっと楽しくなります。

ドラゴンクエストならではのストーリー、演出の巧みさ

 ストーリーはとても秀逸。ネットでの評判も良く、登場するキャラクターのバックグラウンドもキッチリと作られています。エンドクレジットにも手を抜いておらず、筆者は泣きそうになりました。

 シリーズで遊んだ経験の有無や、ロールプレイングゲーム初心者を問わず、誰にでもお勧めしたいドラゴンクエストXI。「そういえば、スマホゲームばかりで、しばらく専用機のゲームはやってない」なーんて人にもオススメですよー。

前田知洋(まえだ ともひろ)

 東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。

 著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。

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