クルマの中で何をするかに則しての進化
ドライブ体験もさることながら、このクルマ自体が4G LTEの電波を拾い、クルマに乗っている人向けにWi-Fi環境を提供する仕組みを備えていました。米国外から来た旅行者にとっては、Wi-Fiがつながるクルマというのは非常にありがたい存在と言えます。もっとも周りに何もない田舎道で、そもそもの電波状況が良い場所ではないのですが。
また、USB端子は前席に2つあり、後部座席にはAC電源まで用意されています。前席のUSBにスマホをつなげば、iPhoneならCarPlay、AndroidならAndroid Autoの画面を前方のスクリーンに映し出すことができ、スマホで設定したナビでそのまま道案内をしながら、音楽を楽しむ事もできました。
しかも、いわゆるグローブボックスの天板はワイヤレス充電に対応しており、スマホを置くだけで充電することができる仕組みを提供していました。これも、今っぽい仕様だなと感心しました。こうした大きなクルマで家族や友人と長距離移動をする際に、クルマの室内でそれぞれがどう過ごすか、という変化に敏感な仕様と言えるかもしれません。
みんなでDVDの映画を観るなら、スクリーンが前席と後部座席にも備わって入ればよく、サバーバンではそうした仕様を選ぶこともできるようです。ただ現在であれば、スマホを1人1台ずつ持っており、クルマの中の時間をそれぞれのスクリーンで楽しめた方がよい、というニーズの方が強いでしょう。
USBプラグを人数分用意し、タブレットやiPod touchを持っている子供用にWi-Fiを用意する、といった仕様はアメリカ人がどんなロードトリップをしているのかを反映しているようで、興味深かったのです。
確かに、移動中の景色も楽しみの一つかもしれませんが、楽しい景色に巡り会う瞬間は4時間半のドライブで5回程度だったように思います。日本人としては地形の広大さにも感動を覚えるのですが。
アメリカでは、クルマが前提の日常は、おそらく当面変わらないと思います。むしろクルマを前提とせず生活できるのは、非常に限られた都市か、クルマを不要としたライフスタイルを組み立てられた人だけでしょう。
一方で、スマホは人々の生活の日常を担っています。必需品と言えるスマホとクルマの関係性に触れることができるのも、アメリカ生活ならではなのかもしれません。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
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