このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

産業用IoT基盤のPredixを医療分野にも展開、「Applied Intelligence」サービス

GEヘルスケア、データ分析で病院経営と医療現場の課題解決支援

2017年08月14日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

デジタル工場の“カイゼン”ノウハウを医療分野へ展開

 なお、Brilliant Hospitalビジョンの背景には、GEが自社工場で実証実験を推進するBrilliant Factoryがあるという。発表会では同社 製造本部 本部長 工場長の藤本康三郎氏が日野工場での取り組みを紹介したほか、工場見学も行われた。

 同社日野工場(GEヘルスケア・ジャパン本社)は、GEグループが持つ世界450工場の中で「Brilliant Factory」と認定された7工場の1つであり、Brilliant Factoryビジョンを牽引するためのショーケースとして位置づけられている。この認定を受けるためには、「デジタル」と「リーン」の2軸で成熟度を高めなければならず、最終的には2025年までにすべての工場をBrilliant Factoryにしていく方針だという。また、この取り組みを通じて得られた知見は、顧客の生産性向上を支援する提案にも生かされる。

Brilliant Factoryの構成要素として、GEではリーン生産方式/デジタル/先進製造技術/3Dプリンターの4つを挙げている

 藤本氏は、30年の歴史を持つ日野工場がBrilliant Factoryを推進するうえでは特に、既存の設備と人的資産を最大限に活用しながら最適化と生産性向上を目指すことを心がけているという。最新設備やロボットの導入を進めることよりも、まずは既存設備をネットワークにつなぎ、そこから得られたデータから洞察を導き、最適化を進めることで、コストを抑えた生産性向上が可能であり、実際に日野工場では「カイゼンを倍速化」したという。

 取り組みの一例として藤本氏は、工場内の生産ラインにおける従業員やモノの動きの可視化を取り上げた。これは、従業員やモノ(部品を載せるカート、可動式の備品など)が装着するビーコンの位置情報データを収集、蓄積し、スパゲティチャートやヒートマップの形で可視化するというものだ。たとえば、従業員が滞留している場所を調べることで、部品置き場やゴミ捨て場などの配置に無駄があることを発見し、レイアウト変更によってそれを改善できたという。

 藤本氏は「従業員の動きを可視化するスパゲティチャートは、手作業でやると1~2カ月もかかっていた」と述べ、リアルタイムに可視化できるようになったデジタル化の効果を評価した。

ビーコンによる位置トラッキングシステムの全体像とビーコン。工場内の従業員やモノが装着し、1秒ごとに位置情報を発信している

ビーコントラッキングによる業務改善例。作業者の移動状況を可視化することで無駄を発見し、レイアウト変更によりそれを改善した

 そのほか工場見学の中では、CTスキャナの組み立てラインにおいて、部品を載せたカートにRFIDタグを取り付け作業開始/終了時間のログを取ることで、作業工程ごとの作業時間のばらつきをチャート表示している様子も披露された。作業回ごと、作業員ごとのばらつきの大きい工程に関しては「作業の標準化がうまくできていない」と判断し、改善に取り組むという。

CTスキャナ(CTガントリ)の組み立てライン。あらかじめカートにセットされた500点以上の部品を取り付けていく。作業時間にばらつきのある作業については作業の標準化の見直しを行う

 日野工場には年間1000名ほどの工場見学者が訪れるが、その中には医療機関関係者も多く含まれるという。見学者からは、たとえばCTやMRIといった検査作業における担当者ごとのばらつきを可視化して作業の標準化を推進すること、医療機器へのビーコン装着で現在位置を把握し配置の改善や稼働率向上につなげること、といったアイデアが得られたというコメントが寄せられているという。

 「GEでは、まず自ら実証して、得られた知見を基にお客様に提案している。とくにIT関連、デジタル関連においては、自分たちの“体験”が重要になってくる。どのようなオポチュニティ(可能性)とペインポイント(悩み)があるのか、自らそれを体験することで、病院の抱える課題にも向き合うことができると考えている」(多田氏)

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ