「OpenStack Days Tokyo 2017」基調講演レポート
フォーチュン500の5割がOpenStackを利用、今後はEdgeにも導入が進む
2017年07月24日 07時00分更新
日本OpenStackユーザー会によるOpenStack Days Tokyo 2017実行委員会が主催する年次カンファレンス「OpenStack Days Tokyo 2017」が、7月20日~21日の2日間、都内で開催された。
5回目となる今年は、「オープン×コラボレーション」をイベントテーマに掲げ、OpenStackに関連するほかのオープンソースコミュニティとコラボ。1日目の基調講演には、OpenStack Foundation COOのマーク・コリアー氏のほか、Cloud Foundry Foundationのマーケティング責任者であるデビン・デイビス氏が登壇した。
ユーザー企業の半数は従業員数1000人未満の中小企業
OpenStackは、完全にオープンソースのIaaS基盤ソフトウェアを開発するプロジェクト。2010年にNASAと米Rackspace Hostingが共同でスタートした。その後2011年にNASAが開発から手をひき、2012年からは非営利団体のOpenStack Foundationのコントロール下で、300社以上の企業が参画して開発が進められている。
基調講演に登壇したOpenStack Foundation COOのマーク・コリアー氏は、グローバルでのOpenStackの最新動向についての数字を提示。OpenStackの採用は年率44%で拡大しており、現在、Fortune 500企業の50%がOpenStackを使っている。プロダクト環境でOpenStackが管理するコア数は、500万コアに上るという。「OpenStackが誕生してから7年。製品として成熟し、採用フェーズに入った」(コリアー氏)。
現在のOpenStack導入企業の規模をみると、従業員数100人未満の組織が28%、100人~999人の組織が21%であり、1000人未満の中小規模企業が全体の半数を占めている。
この動向を指して、コリアー氏は「OpenStackは、第2世代のプライベートクラウドのインフラになった」と語る。第1世代のプライベートクラウドは、ハイパースケールクラウドの分野で成功した。OpenStackもかつては、PayPalが代表的なアーリーアダプターであったことに象徴されるとおり、大規模なテクノロジー企業にしかフィットしなかった。現在の第2世代のプライベートクラウドは、企業規模に関わらず利用されるようになっており、OpenStackもより小規模な企業でも採用できるものに進化した。
OpenStack上で稼働しているアプリケーションツールは、Kubernetesが最も多く(45%)、次いでOpenShift(18%)、Cloud Foundry(18%)、独自構築システム(17%)、Mesos(14%)、Docker Swarm(14%)の順になっている。
オープンテクノロジーと組み合わせて課題解決
今回のイベントテーマである「オープン×コラボレーション」について、コリアー氏は、「OpenStackは、他のテクノロジーと連動するように設計されている。且つ、クラウドネイティブなインフラとして開発されてきた。例えば、TensorFlowなどオープンな機械学習テクノロジーや、オープンなアプリケーションマネージメント基盤のKubernetesと組み合わせて、クラウド上で問題解決をすることができる」と説明した。
OpenStackと他のオープンソースを組み合わせたアーキテクチャの一例として、コリアー氏は、リアルタイムデータ処理のシステムを提示。(Twitter Pollerで取得した)TwitterのリアルタイムタイムデータをApache Kafka → Apache Spark → HDFSのフローで処理するシステムの基盤は、Kubernetesによるコンテナー環境、OpenStackのコンピュートサービス「NOVA」、ベアメタルサーバー(OpenStackの「Ironic」を使うとOpenStackの管理でベアメタルをプロビジョニングできる)を、オープンソースのSDNソフトウェア「OpenContrail」で接続して構築できる。
今後はエッジコンピューティングにもOpenStack
最後にコリアー氏は、OpenStack Foundationの現在の活動を紹介した。「OpenStackは、7年間で圧倒的な数のコンポーネントが生まれた。これらすべてを使うことには意味がなく、一部のコンポーネントで問題解決ができればよい。ユーザーからはコンポーネントが多すぎて複雑だという声があるので、使われていないコンポーネントやオプションは削除し、活発でないプロジェクトは停止していく」(コリアー氏)。
また、OpenStackと、AWSのようなパブリッククラウドと比較して理解したいというユーザーニーズも強い。このような声に応えて、OpenStack FoundationではOpenStackの各プロジェクトを一般的なインフラレイヤーに当てはめて図説したマップを整備している。
OpenStack Foundationが今後注目するテクノロジーにコリアー氏が挙げたのは、ベアメタル(「当初はOpenStackの中で重要だとは思っていなかった」とコリアー氏)、NFV、エッジコンピューティングなど。特にエッジコンピューティングについては、「これまでクラウドデータセンターにあったコンピューティングをエッジに持っていくテクノロジー。今後2~3年で急速に進化する分野だと予想している。OpenStackを、店舗端末などあちこちで使う時代がくる」(コリアー氏)と展望した。
Cloud Foundryは2週間に1回のリリースサイクルで開発
続いて登壇したCloud Foundry Foundationのデビン・デイビス氏は、Cloud Foundryの導入事例、コミュニティの状況を紹介した。
Cloud Foundryは、オープンソースのPaaS基盤ソフトウェア。米VMwareが開発を始め、2011年にオープンソースとして公開した。その後Cloud Foundryの開発は、VMwareとEMCが設立したPivotalに移管された。2014年に、Pivotalは非営利団体のCloud Foundry Foundationを設立して、Cloud Foundry開発のガバナンスを同団体に移管。現在は、Cloud Foundry Foundation統括のもと、Linux Foundationの支援を受ける形で開発が進められている。
米国のケーブルテレビ会社コムキャストは、2015年に顧客向けの主要サービスの基盤をCloud Foundryに移行した。現在は、1万1800個のアプリケーション、1億8000万トランザクションをCloud Foundry上で処理している。Cloud Foundryを採用したことで、従来数カ月を要していたアプリケーションのスケーリングが数秒程度まで短縮されたという。
また、インテルのITデベロッパーチームは、Cloud Foundry上で1400のアプリケーション、2400のデータベースを管理している。Cloud Foundryの採用によって、コストを60%削減できたとする。
デイビス氏は、Cloud Foundry Foundationの現在について、「参加メンバー企業数が65社と設立当時の2倍に拡大している。2400人以上のコントリビューターがいて、これまでに5万1000件のコミットがあった」と説明。新機能の開発は、2週間に1回のリリースサイクルで進められているそうだ。
6月には、Cloud Foundry開発者を認定するプログラム「Cloud Foundry Certified Developer(CDCD)」を開始した。「入門者向けの無償のMOOC、Eラーニングのコースが用意されている。開発者の皆さんには、まずは、MOOCをのぞいてみてほしい」(デイビス氏)。