日本オラクルは7月19日、先月付で日本オラクルの執行役 CEOに就任したフランク・オーバーマイヤー氏の記者会見を開催した。オーバーマイヤー氏は「新体制のもと、日本オラクルはクラウドの旅路の“第2章”に入る」と宣言し、前任の杉原博茂氏(今回、取締役会長に就任)が掲げてきた「2020年にクラウドナンバーワン」という目標を引き継ぎ、顧客のクラウド移行を支援していく姿勢を強調した。
オーバーマイヤー氏は、1991年7月のヒューレット・パッカード ドイツ入社以後、IT業界で25年以上の経験を持つ人物。Computer 2000(現Tech Data)、オラクル・ドイツ、オメガITソリューションズ、Unit.Net スイス、アバイア ドイツ、デル ドイツなどを経て、2014年4月には米ヒューレット・パッカード(現HPE)ワールドワイドチャネルセールス担当VPに就任。2015年2月には再度オラクル・ドイツに入社し、テクノロジーセールスビジネスユニットVPを務めた。
「この3年間はオラクル・ドイツで、クラウドトランスフォーメーションとインダストリー4.0を牽引してきた。かつて日本を訪れたことがあったが、ここに住んでみて美しい国だと感じた。ビジネス面では、この3年間で日本オラクルもクラウドの旅路へと踏みだしており、そこで培ってきたものをさらに伸ばすことを目指す」(オーバーマイヤー氏)
現時点では「オラクルのクラウドビジネスはナンバーワンではない」と語る オーバーマイヤー氏だが、顧客との対話を重視し、顧客の抱える課題を理解するなかでナンバーワンへの成長を遂げていく方針だという。ちなみに「2020年にクラウドナンバーワン」という目標については、「社内ではもっと早い段階でナンバーワンを獲得する目標を掲げている」と述べている。
記者会見のスライドでは、優先事項として「日本の顧客とビジネスニーズ、期待を理解すること」を掲げるとともに、「日本市場に必要な『Open/Scalable/Complete/Ready』なクラウド環境の構築を実現する」との方針も示している。誰もが利用でき、拡張可能であらゆるワークロードに対応し、IaaS/PaaS/SaaSのいずれも利用でき、必要に応じてすぐに利用できる、そんなクラウドという意味だ。
一方、2014年から日本オラクルCEO/社長を務め、取締役会長となった杉原博茂氏は、3年前に掲げた「クラウドナンバーワン(VISION 2020)」の目標について「ある部分、区切りがついたと考えている」と語った。
「社内外ともに『オラクルはクラウドにシフトする』という認識ができ、意識改革ができた。次の3年間で、もっとクラウドビジネスを飛躍させるためには、箱根駅伝のように、タスキを新たなリーダーにつなぐ必要がある。タスキを渡すのは、ドイツでクラウドビジネスを立ち上げ、成功させたフランク(オーバーマイヤー氏)だ。日本オラクルを成長させ、日本の社会と顧客に対して、エンターブライズソリューションを提供していくことができると考えている」(杉原氏)
オーバーマイヤー氏は、ドイツにおける知見も生かしながら、顧客の「クラウドの旅路」を支援していく姿勢を強調した。
「すでに数10社の重要な顧客と対話したが、すぐに、すべてのワークロードをクラウドに移行させるわけではない。クラウドに向けた旅路が必要であり、それに向けた旅路を辿る上で、スピード、スケール、コスト効率といったところで、顧客から評価されることが必要である」「ドイツでは、日本と同じことが、いまから3年前に起こっていた。20~30%のワークロードでしかクラウドは使われておらず、顧客は顧客のペースで、クラウドへの移行を図っていく。(現在は)その変革のなかにある」(オーバーマイヤー氏)
また、オラクルクラウドの強みについては、「AWSの顧客は、AWSをIaaSとして利用しているが、オラクルであればデータベースのワークロードを利用でき、その上にアプリを持ってくることもできる。オラクルのクラウド戦略はオープンであり、数多くのクラウドサービスを揃えていくことができる。オラクルは、クラウドでは遅れていない。顧客のニーズにフォーカスすることができるのが特徴だ」と述べている。
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これまでワンポイントリリーフ的に外国人社長が就任することがあった日本オラクルだが、少なくとも中期的な登板を前提とした外国人トップの就任は今回が初めてと言える。日本IBMがそうであるように、米国本社におけるキャリアアップの道筋として、日本法人トップが位置づけられ始めたとも言えそうだ。