第6回は、Kiteさんこと株式会社キテレツのCEO古賀海人さん。受託制作のかたわら、WordPressなどのオープンソースソフトの貢献者としても活躍するKiteさんに、これまでのキャリアとライフスタイルについてお話いただきました。
ピアノ演奏者を目指していたシアトルでの生活から一転、Webの世界へ
小島 今回のゲストは、株式会社キテレツのKite(カイト)さんです。まずは普段どんな仕事をされているのか教えていただけますか?
Kite 普通のWeb制作会社みたいな請負の仕事が多いですね。もともと独立したときから自社サービスやアプリを作りたいとは考えているので、今後取り組んでいきたいとは思っています。あとは、オープンソースのプロジェクトやコミュニティ活動にも積極的に参加しています。
小島 WordPressのコントリビューターとしても活躍されていますよね。
Kite WordPressは4.0からコントリビューターとして参加しています。WordPress関係だと、地域の勉強会のWordBenchや、年に1回のWordCampにも関わっていますね。一昨年はポーランドのWordCampにも登壇し、貴重な経験をさせてもらいました。
小島 WordPressの書籍『世界一わかりやすいWordPress 導入とサイト制作の教科書』も最近、執筆されましたね。海外には頻繁に足を運んでいるんですか?
Kite 去年はウィーンに行きましたし、今年はパリに行く予定です。ウィーンはよかったですね。もともとポーランドへ向かうついでにウィーンへ足を伸ばしたんですけど、その後、WordCampでもう1回行きました。
小島 英語は得意ですか?
Kite アメリカに2年間住んでいたことがあるので。
小島 アメリカにいたときはWebのお仕事を?
Kite いまとはまったく違っていて、当時はプロのピアノ演奏家を目指していました。それでアメリカへピアノの勉強に行っていたんです。ちょうど9.11のテロがあったときで、一度日本に帰ってきたら、アメリカにはもう戻れなくなってしまって。それでビジネスに役立つことでも学ぼうかと思って、早稲田大学の商学部に入りました。
小島 大学時代はどんなことを?
Kite 在学中にアパレルの会社を立ち上げました。卒業後は関西の広告代理店に入って、グラフィックデザインの仕事をしていましたね。
小島 Webではなく、ポスターとかチラシとかのデザイン?
Kite そうですね。いわゆるアートディレクターとか、クリエイティブディレクターと呼ばれる仕事でした。Webの仕事がしたくなったので別の会社に入って、そこではWebをメインに2年ほど働いて。その後独立して、いまは自分の会社(キテレツ)を経営しています。
小島 最近のKiteさんはプログラマー寄りのイメージですけど、キャリアのスタートはグラフィックデザイナーだったんですね。
Kite 大学在学中に立ち上げたアパレル会社では独学でECサイトを作ったので、そのころからコードを書いてはいました。もともと数学が好きだったのもあるんですけど、プログラミングやコーディングは当時から好きで。絵を描くのも好きなので、デザインもプログラミングもどちらも好んでやる、といった感じです。
小島 最近のお仕事としては、WordPressのサイト制作が多いんですか?
Kite そうですね。お客さんからの要望が多いので。たまにRuby on RailsでWebアプリを開発する案件とかもありますけど。
小島 1日のお仕事のサイクルはどんな感じですか。いまは一人でやっているんですよね?
Kite 外部の人と一緒に仕事することもありますけど、同じ空間にいることはめったにないですね。サイクルは日によってバラバラで、深夜0時公開の案件もあったりしますし、深夜のほうが集中できることもあります。コミュニティ活動もしているので、平日が忙しければ土日に働くこともありますし。唯一、毎日欠かさないのがGitHubのコミットです。
小島 定時で決まっているんですか。
Kite 時間は決めていませんが、0時を過ぎたらなるべく早い時間にコミットすることにしています。
小島 お仕事は自宅で?
Kite 自宅兼オフィスが基本ですが、気分転換にコワーキングスペースにもよく行っています。仕事でデザインするときはペンタブレットを使うので、ペンタブレットが必要ならオフィスで作業しますけど。
デザインの原点はエディ・スリマン
小島 このインタビューではいつも持ち歩いているものを見せてもらっていますが、今日はどんなものを?
Kite お気に入りはこれですね。サンワサプライが出しているCOCOONのGRID-IT(グリッドイット)です。インナーバッグなんですけど、ガジェットやケーブル一式を留められて、バッグにすぽっと入ります。バッグを替えるときもこれだけ取り出して入れ替えるだけでいいのでラクなんです。
小島 バンドがばらばらに張られていて、自分の好きなように留められるんですね。
Kite そうなんです。ちょっと重たいですけど、気に入って使っています。
小島 こちらは?
Kite 先ほど話に出ていたペンタブレットです。デザイン作業はだいたいワコムのペンタブでやっています。さすがにこれは普段は持ち歩いていませんが。
小島 ペンタブにもいろいろなサイズがありますよね。これはデスクトップ用ですか?
Kite そうですね。一回り小さいのもあって、それでもいいんですけど、僕の場合は絵を描いたりもするので、ちょっと大きめにしています。ペンタブでグラフィックデザインをする人は結構いるんですけど、Webのデザインをする人は意外といないんですよね。
小島 それからこちらは……?
Kite 僕のデザインの原点とも言えるファッションデザイナー、エディ・スリマンの写真集ですね。もともとディオール・オムのデザイナーで、去年まではサンローランのデザイナーだった方で、その10年間の作品を収めた写真集です。すべてモノクロなんですけど、写真もそうですし、何より彼のファッションが大好きで。僕のいまのデザインは全部ここから始まっているかもしれないと思っています。
小島 全部で4冊ありますね。
Kite イギリス、アメリカ、フランス、ロシアの国別になっていて、それぞれの国で撮影した写真がまとまっています。写真自体は実はブログでほとんど見られるんですよ。でも手元に持っておきたい本ですね。
小島 これはもう、好きな人にはたまらないやつなのでしょうね。
ピアノからスノボまで多彩な趣味
小島 仕事関係のものを見せてもらいましたが、ここからは趣味について聞きたいと思います。
Kite 趣味は結構多くて、ピアノとスノボ、スケボー、それにビリヤードですね。
小島 ピアノはプロを目指していたんですよね。弾くのはクラシックですか?
Kite クラシックをずっとやっていました。好きでよく弾くのは、ショパンの幻想即興曲。ショパンが大好きなので、ノクターンの第2番あたりもよく弾いています。
小島 ポピュラーは弾かない?
Kite 楽譜を見て弾くような曲ならクラシックに限らずポピュラーも弾きますよ。ジャズのような即興を求められるものはクラシックとは流儀が違うので、なかなか難しいですが。
小島 スケボーやスノボはずっとやっているんですか?
Kite もともと横乗り系が好きで。スケボーは小さいころからかっこいいなと思って、ちょっと乗ったりはしていたんですけど、高校1年生ぐらいからスノボにハマって、そこからどっぷり。いろいろ道具も買い揃えて……という感じですね。
小島 スノボはいろいろ競技があるじゃないですか。
Kite 競技に参加するほどではないんですけど、グランドトリックが好きで、パークに行ってオブジェクトに乗ったりはしますね。
小島 ボードのデザインやファッションがお仕事とリンクするところもあったり?
Kite 普段僕はミニマルなデザインが好きなんすけど、スノボやスケボーのデザインって、すごくグラフィカルで、独特ですよね。普段とは全然違うんですよね。アリだとは思いますが。小島さんはスノボはやらないんですか?
小島 スノボはやったことないんですよね。スキーはあるんですけど、やってみたいと思いつつ、チャンスを逃していて。
Kite 今度一緒に滑りましょう。
小島 ぜひ。あとはビリヤード。
Kite 以前は頻繁に行っていたんですけど、最近はちょっと減りました。一応マイキューも持っています。
小島 ビリヤードも僕はまったくやったことがないんですけど、Kiteさんは似合いそうですよね。
Kite ビリヤードって、なかなか機会がないですよね。やってみると面白いですよ。僕は小さいころから何となく大人たちに連れられて始めた感じですが。
(明日公開の後編へ続く)
[撮影:阿部岳人]
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