これからのApple製品は「4K HDR」が標準になる?
JPEGと比較して2倍の圧縮率という言葉が意味するところは、同じ品質の画像を半分のデータサイズで格納できるという効率性の部分と、データサイズが縮小するぶんより高い画質を狙えるという質的改善の部分のふたつがある。iOS 10以降はRAW形式での撮影がサポートされ、JPEG以外の選択肢も増えたが、データサイズはJPEGに比べ格段に大きくなり、日々のカジュアルな撮影には適さない。HEIF/HEVCの採用には、"JPEG以上RAW未満"を狙うという側面もあるのだろう。
すでに触れているが、新しいHEIF/HEVCフォーマットでは10bit画像をサポートする。これまでiPhoneで8bit以上の色深度を持つ写真を手に入れようとすると、サードパーティー製アプリを使いRAWフォーマットで撮影するしかなかったが、HEIF/HEVCでは10bitの静止画を扱うことができる。
JPEGではRGB各色8bit/合計24bit、発色数は約1677万色が上限となるが、RGB各色10bit/合計30bitをサポートするHEIF/HEVCでは約10億6433万色もの色数を表現できる。8bitカラーでは、夕焼けのように滑らかな色のグラデーションがある場所ではバンディング(濃淡の縞)が発生しがちだが、10bitカラーではほとんど気にならない。
10bitといえば、OS X 10.11 El CapitanからiMac 5K/4KやMac Proなど一部機種を対象に、特定のGPUとディスプレイが接続された場合にかぎり、10bitの色深度がサポートされている。A&V用途のテレビでは、すでに10bit以上の高階調(HDR)と広色域(BT.2020)が普及段階に入っているが、iOS 11およびmacOS High Sierraで10bitデータを扱いやすい静止画/動画フォーマットを投入するということは、Apple製品もいよいよ本格的な10bit次代を迎えようとしていると考えてよさそうだ。
次のiPhoneが「(10bit対応の)HDRディスプレイ」を搭載するかどうかはまた別の話だが、2月にSONYが「Xperia XZ Premium」を発表するなど、スマートフォンにも4K HDRの波は到来している。10bitコンテンツを扱いやすいHEIF/HEVCのサポートはAppleあげての準備かも、と結論付けるのはいささか短絡的だろうか。HEVCの10bitハードウェアエンコードに対応するチップが現状存在しないことも、よく考えれば意味深だ。新端末が投入されるであろう9月を待ちたい。
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