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川崎のチネチッタで7.1chの重低音再生に文字通り震える

体で感じる重低音、BLAME!の音が生まれる場所に潜入

2017年05月17日 13時00分更新

文● 小林 編集●ASCII

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7.1chのLIVE ZOUNDはドルビーアトモスとも相性がいい

 BLAME!はドルビーアトモス対応だが、実は7.1chの劇場とも相性がいいという。その理由は、ドルビーアトモスという規格自体が、7.1chのサラウンドにオブジェクトオーディオを組み合わせる考え方で作られているためだ。7.1chとドルビーアトモスの違いとしては、天井スピーカーがない点が挙げられる。ここは7.1chに振り分ける必要があるが、そのコンバートもスムーズだという。

お話をうかがった岩浪美和監督(中央)、クラブチッタの制作事業部 音響セクションの山室亨チーフ(右)、取材対応していただいたチネチッタの藤本恵弘課長(左)

 筆者が実際に現場で音を聞いた感想としても、水平方向の音のつながりが非常にスムーズで、高さ方向の表現も良好だった。7.1chでの再生ということで「点で移動するようなものはできないが、逆に音圧感は出やすいかもしれない。いいポジションで聞けば、頭の上の音なども聞ける」(岩浪監督)とのことだ。

 チネチッタではBLAME!の上映を、CINE8以外のスクリーンでも予定している。LIVE ZOUNDではないが、他のスクリーンでも7.1chでの上映が可能なのだ。劇場の主流は5.1chとなっており、7.1chの劇場というのは非常に少ないが、劇場側の好意で5.1chを7.1chへバージョンアップする対応がなされたという。

 つながり感という意味では、サラウンドスピーカーを含めて同じブランドで統一されている点も大きい。LIVE ZOUNDを称し、フロントにラインアレイシステムを入れたのは昨年の9月17日からとのことだが、今年の1月からサラウンドもJBL製からd&b製に変更した。

劇場では珍しい欧州製だが、スタジオに近い再現性

 ちなみに劇場用スピーカーは約9割が米国メーカー製で、d&bのようなドイツのメーカーは珍しい。しかし岩浪監督によると制作現場では逆に、映像・音響・音楽用途のいずれも9割がヨーロッパ製の機材になっているという。

 「d&bの音は普段スタジオで聞いている音に近い。ドイツらしい真面目な音で、アメリカ製のように派手な感じはないが、密度が高く調整がしやすい。特にLIVE ZOUNDでは、アレイスピーカーでも耳をつんざくような感じがなく、聴き疲れしにくい。なおかつ出すべきところは出すし、迫力もある。BLAME!では、声をきれいに出すことが狙いのひとつなので、そこも楽しんでもらいたいと思う」(岩浪監督)

 BLAME!の上映では、女性の観客が多くなると想定しているそうだ。そのため、臨場感だけではなく、声に特化してなおかつ迫力がある点を重視しているという。

 「キャラクターの声がきれいに聞こえて迫力も兼ね備える調整。空間自体が大きくて、劇場が持つ響きもいいので、そこを生かすようにしました。BLAMEは閉塞的な空間の物語だが、これが劇場のサイズとマッチして、すっとストーリーに入り込めるようになっていると思う」(岩浪監督)

 深夜の作業はコメント取りを含めて約2時間にわたった。

 劇場ごとに内容は多少変わると思うが、「いい音を届けたい」という想いから、全国の劇場に脚を運び、音響の監修をする岩浪監督の姿勢には頭が下がる思いがした。

 同時に2作品の音を並べて聞くと、劇場版 シドニアの騎士からBLAME!までの数年の間に、アニメ音響が飛躍的な進化を遂げたという点も実感する。短期間ではあるが、BLAME!の上映に先立ち、シドニアの騎士の再上映がなされているので、こちらも合わせて観てみたい。特に各チャンネルから音が発せられるのではなく、空間に包み込まれる感覚は圧巻で、サラウンド技術の如実な進歩を感じる部分だ。

 BLAME!は2週間限定の上映だが、チネチッタでは集客しだいで延長も検討するとのこと。可能ならばぜひ劇場に脚を運んでみてほしい。アニメ映画の最先端のサウンドを体験できるとともに、いい作品をいい環境で届けるという作り手の情熱も感じ取れるのではないかと思う。

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