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共感度MAX!JAWS DAYS 2017レポート 第6回

JAWS DAYS 2017の初っぱなは業界カルチャーをえぐるエモいセッション

鍵は実践とリスペクト!組織と自分をクラウド対応にする現実解とは?

2017年05月09日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●JAWS-UG写真班(中井勘介、金春利幸、加我 貴志、平野文雄)

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SIerの組織対立は飲食店のホールと厨房のような自明のもの

斎藤:小野さんが指摘するように、SOR系というか、ウォーターフォールでしっかり作りましょうみたいなトラディショナルな「モード1」系と、SOE系というか、新しい顧客を生み出すような「モード2」系は、システムの作り方が違うと言うより、関わる人たちの文化が違う。それが意外と社内の対立になり得る。

自身の実践論を展開する小野さんと、経営者に厳しめな斎藤さん

はっきりいれば、モード2の人たちは稼げない人たちというイメージがある。新しいことをやっているのはわかるし、会社にとっては必要。でもほかの人たちからすれば、「あいつら、お金も稼げないのに、面白いことだけやってる」って、嫉みにつながる。

大谷:新規事業やっているところって、だいたいその圧力にさらされますよね。

斎藤:この対立って、けっこうどこにでもある。これに対して、僕は会社分けちゃったらどうですか?と提案したい。つまり、文化が違うんだから、業績評価の基準も違うんですよ。サービスとストックで稼ぐところに、旧態依然とした売り上げと利益をベースにした基準を同じように求めること自体が組織と現場の矛盾。だったら、組織を分けて、業績や評価の基準も分けてしまい、別の人種として扱った方がよいと思うんですけど、どうでしょうか?

小野:トラディショナルなSIerがクラウドに行けない最大の理由は、斎藤さんがおっしゃった文化的な対立です。当たり前の話で、やっぱり自分が否定されたらいやですよね。今までのやり方を守りつつ、失敗しないというのが「モード1」で、新しいことをスピーディにやるベンチャーみたいなのが「モード2」。僕自身は10年近くベンチャーを経営してきて、その後トラディショナルなSIerに入って、お互いが否定し合うことがよくわかった。たとえば文系に対する理系、飲食店におけるホールと厨房みたいな関係です。

大谷:(笑)。構造的に対立は分けられないということですね。

小野:トラディショナルな人たちは、新しい人たちに対して、「あいつらチャラチャラしやがって」「いつも遊んでやがって」「いつもSlackばかりしやがって」「出社時間だってバラバラだ」みたいなことをディスる。新しい人たちは、トラディショナルな人たちに対して、「上の言ったことしかできない」「自分で考える頭がないんじゃないの」「恐竜の化石の中でもとりわけ動きが遅い」とかディスる。こういう対立軸は実際にある。でも、この解決策を私は見つけたんです。みなさんメモしてもいいですよ。

大谷:大丈夫です。私が記事に書きます。

小野:敬意が足りないことが問題なんです。だから、新しいことをやりたい人は、モード1の人たちに対する敬意に満ちあふれたトークからスタートさせればいいんです。「みなさんのおかげで会社の売り上げや利益が安定しています。みなさんなしではこの会社はありえないです。本当にありがとうございます」とか言うんです。そうすれば気分悪くならないです。

大谷:土日出勤したときには、かみさんに「家のことありがとうね」と言ってみるって感じですかね。

小野:その例えはよくわからないです(笑)。そもそも奥さんと対立してないし。

大谷:すいません。うちでは今日出るときにもめたんで、ホントすいません(笑)。

小野:対立する二者はやはりお互いが敬意を払うことが大事。その上で、クラウドとか、IoTとかやってみたい、きっとあなた方にも役に立つって言えば、モード1の人たちも聞いてくれるんですよ。敬意を払うだけで、ものすごく変わります。

で、これを理論づけたのが実はGoogleのHRTの原則。Googleは成功したプロジェクトと失敗したプロジェクトを調べあげたところ、どんな天才エンジニアがいるチームよりも、謙虚さ(Humility)、尊敬(Respect)、信頼(Trust)のHRTが関係者の間で保たれているチームの方が成功しているんですよ。クラウドの導入をメインフレームの人に提案するのも同じで、やっぱり「HRT」で行けばいいんです。敬意を払って、信用して、最後にありがとうございますと言う。敬意を払えば、クラウドは入れられる。これが僕の持論です。

「会社の文句言う前に、アクションしようよ」と言いたい(斎藤)

斎藤:わかります。原則論としてはすごく理解できるし、ITに限らず、どんなビジネスでも基本中の基本だろうと思います。でも、あえて言わせていただくと、なかなかそういう気持ちになれないという人もいるんです。プライドとか、不信感とか、そういう壁ってありません?

小野:普通にやると、確かにそうなると思うんです。でも、ビジョンとか、標語とかって、普通とは異なる方向に引き寄せるためのものじゃないですか。その点、HRTの原則やバイモーダルといった言葉って、「重力のくびきで地上に落ちそうなものを引き上げる効果がある」と思うんです。だから、行き詰まったときに実践してみると、意外と効果が出ると思います。

大谷:うちの会社の場合、出版だけじゃなく、Webやゲーム、映画などいろいろなコンテンツを手がけていますが、出版事業の人たちがきちんと本を作って、売ってくれているからこそ、われわれのようなWeb事業の人間は新しいチャレンジができている。そういう気持ちやリスペクトをきちんと伝えられる場が必要ということですよね。

斎藤:私もいろんなところで講演していますが、懇親会で必ず出てくるのは、経営者や上司の悪口です。うちの会社はダメだとか、うちの会社は遅れてるとか、そういう話題が出てくる。まあ、事実そうなんだろうし、文句を言うのはいいんだけど、そういう人には「じゃあ、あなたはなにをしているんですか?」と問いかけたい。実際、「なにかアクションを起こしているんですか? 文句言う前に、小さい成果だけでも出してみましょうよ」という話はよくします。

大谷:本当ですよね。こういうコミュニティに行くと、組織にもまれながら、自ら動いている人が多くて、すごく感心します。

斎藤:たとえば、私はIT×災害の理事をやっているんですけど、被災地に行って、ITのことを話すと、みんな思い出すのは、コピーやFAX、パソコンなんですよ。ITを使うことで仕事が楽になるなんてまったく思ってなくて、清書や記録の道具くらいにしか考えてない。でも、避難所のアンケートをサイボウズのkintoneとタブレットで作ったら、これはすごいですねとみんな興味を持って使い始める。結局、理屈じゃなくて、見せてしまう。

大谷:まさにさっきのPractice over Theoryですよね。

斎藤:そうそう。HRTでも同じで、相手に対して、まずは役に立つモノをきちんと見せてしまう。クラウドを使えば、プロトタイプすぐに作れる時代じゃないですか。だから、経営者に対しても同じアプローチがとれるんじゃないかと思うんですよね。

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