アジャイル+DevOps+マイクロサービスの「モダン・ソフトウェア・ファクトリ」を提言
20周年の日本CA、顧客のデジタル変革を後押しする2018年度戦略
2017年04月20日 07時00分更新
CA Technologies(日本CA)は4月19日、2018会計年度の日本市場における事業戦略説明会を開催した。日本法人が20周年を迎える今年度は、3つの新製品ローンチを通じて、アジャイル開発/DevOps/マイクロサービス化を前提とした「モダン・ソフトウェア・ファクトリ」のコンセプトを、デジタルトランスフォーメーション(デジタル変革)に取り組む先進的な国内企業に提言していく。
「総じて大きな成果が出せた」2017年度の振り返り
昨年4月から同社社長を務める反町氏は、昨年度(2017年度)の1年間を振り返り「とてもエキサイティングだった」と語った。メインフレーム管理製品を中心とする旧来のCAではなく、アジャイル開発/DevOps/API/セキュリティといった先進的なテクノロジーをサポートする新たなCAの姿を実感したという。
昨年度は、CAとして「顧客のデジタルトランスフォーメーションを支援するベストサポーター」になるというビジョンを掲げ、「ソリューションへのフォーカスと拡充」「パートナーとの販路拡大と顧客満足度向上」「日本法人の持続可能な成長」という3つのテーマを軸にビジネスを推進してきた。
この3つの事業テーマについて、反町氏は「総じて大きな成果が出せた」と総括する。
ソリューション関連の取り組みでは、APIマネジメントやアジャイル分野のビジネスで、対前年比40~50%の高い成長率を実現した。また、日産自動車やANA(全日本空輸)、NTTドコモ、NTTデータといった顧客における、先進的な導入事例も発表している。
ANAにおいては、国内線予約システム刷新プロジェクトにおいて、内部システム間連携の要として「CA API Gateway」を導入し、システムの疎結合化を促進。またテストの自動化/効率化を図るために「CA DevTest Solutions」が導入され、テスト工数の大幅な削減を実現しており、同社の開発生産性向上に寄与したという。
また日本市場におけるビジネス推進の取り組みとしては、フィンテック(FinTech)やIoT、DevOpsなどの分野で新たなパートナーを拡大し、すでに30以上のパートナーと協業している。また、顧客満足度(NPS:Net Promoter Score)はグローバルのCAでトップの向上を見せたという。
「顧客からの声として、『(CAは)グローバルでの対応ができる』『マルチプラットフォーム対応である』『開発効率の良いソリューションを展開している』といった評価をいただいた。引き続き満足度向上に取り組んでいきたい」(反町氏)
「モダン・ソフトウェア・ファクトリ」とは何か
「デジタルトランスフォーメーションのベストサポーター」というビジョンは、今年度も引き続き掲げていく。反町氏は、各国企業のデジタルトランスフォーメーション成熟度を比較した調査結果を示し、日本企業の改革が「まだまだ遅れている」と説明した。
「興味深いのは、タイやインドネシア、マレーシアといった“ITの開発途上国”というイメージの国々が、デジタルトランスフォーメーションにおいては急速に発展している(上位にランキングされている)こと。“過去のしがらみ”のない国のほうが堅調」(反町氏)
デジタルトランスフォーメーションというコンセプト自体は、国内企業の経営層においても徐々に浸透しつつある。しかし、その具体的な取り組み、たとえば「新規事業の収益率向上」や「新規プロダクトの市場投入スピードの短縮」といった部分では、世界平均に大きな後れを取っているという。
反町氏は、国内企業におけるデジタルトランスフォーメーションの課題について、2つのパターンがあると説明した。大部分が「まだ具体的に取り組めていない」パターンだが、もうひとつ、「取り組んではいるものの、なかなか成果が出ない」パターンの企業も「意外に多い」(反町氏)という。
この後者について反町氏は、「部分最適」ばかりを考えて「全体最適」が実現されていないためだと分析する。たとえば、アプリケーション開発にアジャイルのスタイルを取り入れたものの、DevOpsの仕組みを備えていないため、アプリケーションのリリース工程で詰まって(リリースが遅れて)しまう、といった状況だ。「つまり、全体がスムーズに流れていない」(反町氏)。
こうした課題に対し、CAが新たに提唱するのが「モダン・ソフトウェア・ファクトリ」のコンセプトだ。アジャイル、DevOps、マイクロサービスというモダンなアプリケーション開発のコンポーネントを、ポートフォリオ管理やプロジェクト管理、リリース自動化、パフォーマンスモニタリングといったツール群と共に統合/連結し、テスト実施やリリース作業を自動化することで、効率的かつ迅速なアプリケーション開発とリリース、フィードバックを実現していく。
反町氏は、CAでは2010年以降、積極的なM&Aと自社開発を通じてモダン・ソフトウェア・ファクトリを構成するためのテクノロジーを蓄えてきており、こうした要素を網羅的に揃えているベンダーはCAだけだと強調した。
「CEOにマイク・グレゴアが2013年から(M&Aや研究開発の)投資を加速させている。昨年から今年にかけては大きく3つ、パフォーマンステストツールのブレーズメーター(BlazeMeter)、アプリケーションセキュリティテストのベラコード(Veracode)、ビジネスロジックの自動化を行うオートミック(Automic)を新たに買収している。いずれも各分野でトップ3に入るベンダーだ」(反町氏)
こうしたテクノロジーのコンポーネントが揃い、モダン・ソフトウェア・ファクトリが構成可能になったことで、今年度はこれをデジタルトランスフォーメーション実現のためのソリューションとして国内顧客に提案していきたいと、反町氏は説明した。
「インダストリーフォーカス強化」「新製品」など、2018年度の戦略
2018年度における事業戦略の方向性、フォーカスするエリアは、昨年度と大きく変わらない。昨年度の成果を受け、それをさらに拡大していくという。
ビジネスにおいては、4つの注力インダストリー(金融、製造/自動車、テレコム、サービス)に対してさらにフォーカスを強めていく。グローバル企業である強みを生かし、海外顧客におけるデジタルトランスフォーメーション成功事例を国内に紹介しつつ、展開を図る。
また、顧客企業を3つの層に分類し、それぞれに適した提案を行っていく。すでに長期のCA顧客であるプレミアカスタマーに対しては、提供ツールをさらに拡大し、連携させることで、モダン・ソフトウェア・ファクトリの実現に近づけていく。また、新規のエンタープライズ顧客に対しては、インダストリーソリューションの提案も含め、ハイタッチ営業を仕掛けていく。また、中堅規模以下の企業群に対しては、すべてパートナーとの協業を通じて展開していく。
加えて、今年度は、モダン・ソフトウェア・ファクトリの核となる3つの新製品のローンチも行う予定だという。アジャイル開発向けのプロジェクトマネジメント製品となる「CA Agile Central」、パフォーマンステストツールの「CA BlazeMeter」、そしてクラウド環境における特権ID管理ソリューションの「CA Privileged Access Management」だ。
「日本ではまだまだデジタルトランスフォーメーションが進んでいない。これを実現するための全体最適モデルが、モダン・ソフトウェア・ファクトリであり、5年後を考えたときにその核となる新製品が3つローンチされる。日本法人の20周年はすばらしい年になると考えている」(反町氏)