博報堂グループと日本MSが共同開発した広告配信システム「Face Targeting AD」
Azureの感情認識APIを「鏡」に搭載、人の気持ちに合わせた広告を鏡へ配信
2017年03月24日 07時00分更新
白雪姫の「鏡よ鏡、世界で一番~」のくだりで登場する“魔法の鏡”は、魔女の感情を逆なでするようなことを言ったが、最近の感情認識AIを実装した鏡は、鏡をのぞきこんだ人の気持ちを理解する。
博報堂の「スダラボ」、博報堂アイ・スタジオ、日本マイクロソフトが3月9日に発表したアウトドア広告配信システム「Face Targeting AD」は、顔認識と感情認識のAIテクノロジーを使って、鏡にうつる顔の特徴や感情に応じた商品広告を“鏡の上”に表示するものだ。
たとえば、髭が生えている男性の顎の上にシェービングクリームの動画広告を表示したり、悲しそうな表情の人に「思い切り泣ける映画」をおすすめしたり、目の下のクマを認識して栄養ドリンクを提案するといったことができる。
AIの機能は、Microsoft AzureのAI API群「Microsoft Cognitive Services」を採用した。Cognitive Servicesの顔認識API「Face API」、感情認識API「Emotion API」、画像内のモノを認識する「Computer Vision API」を、鏡デバイス「Face Targetingミラー」に実装している。
鏡デバイスの中身は、Surface Pro 4だ。Surface Pro4のフロントに薄い鏡をかぶせ、鏡の裏から光を照射して鏡面にアニメーション広告を表示している。鏡をのぞきこんだ顔は、Surface Pro 4のフロントカメラで認識する仕組みだ。
スダラボの須田和博氏は、「デジタルサイネージなどのアウトドア広告配信システムの課題は、インターネット広告とは違って広告へのアクセス履歴がとれない点にあった。Face Targeting ADはAzureに接続されており、広告を観た人数、AIで分析した性別や年齢層といった属性情報をAzure上で集計して広告主にレポートできる」と説明した。現行のシステムには実装していないが、広告を観た人がどのような感情を持ったのかを把握することも技術的には可能だ。
「顔の画像」の広告利用にはプライバシーへの配慮が必要だが、同システムでは、フロントカメラで取り込んだ顔の画像をAzureへ送信し、Cognitive Servicesで分析をして数値データを得たあとは画像を廃棄している。マイクロソフトが顔認識技術のトレーニングデータに利用することもしないそうだ。