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Cognitive Servicesの利用規約変更、屋外広告や来客分析に活用しやすく

MSのクラウドAI、「データの二次利用をしない」方針へ変更

2018年02月19日 09時00分更新

文● 羽野三千世/TECH.ASCII.jp

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 マイクロソフトは2018年2月、Microsoft Azureで提供している学習済みAI APIサービス「Microsoft Cognitive Services」の利用規約(OST)を改定し、Cognitive Servicesを利用するためにAzureへ送信された顧客データの収集、保持、使用、複製、二次著作物の作成を行わない方針に変更した(公式ブログでの発表)。

 同社は、AzureやOffice 365、Dynamics 365などの企業向けオンラインサービスに「プライバシーポリシー」を設けており、「顧客データを広告やマーケティング目的でマイニングしない」、「マイクロソフト社員であっても顧客データへのアクセスは制限される」、「サービス利用終了時には顧客データを削除する」などの条項を規定している。企業ユーザーがビジネスクラウドサービスで扱うデータについては、(マイクロソフトが合意したサービスを提供する目的以外で)マイクロソフトが二次利用することはない。ただし、Cognitive Servicesについては例外で、この企業向けオンラインサービスのプライバシーポリシーが適用されていなかった。

 今回同社は、Cognitive Servicesへのプライバシーポリシーの適用例外を撤廃し、他のAzureサービスと同様に、顧客データをマイクロソフトが二次利用しないこととした。Cognitive Servicesで扱うデータは、ユーザーが所有・管理し、ユーザーが削除できるようになる。

 利用規約の変更はAPIごとに段階的に適用し、「Computer Vision」、「Face」、「Content Moderator」、「Text Analytics」、「Bing Speech」は2月1日に変更済み、「Language Understanding(LUIS)」は3月1日に変更予定、「Translator」は5月1日に変更予定だ。なお、「Bing Search」については変更を予定しない。Bing Search以外のその他のAPI、および今後新たに追加されるAPIについても変更が適用される。

広告やマーケにCognitive Servicesが利用しやすくなる

 Cognitive Servicesは、マイクロソフトが開発した音声認識、画像認識、テキスト解析、機械翻訳などのAIをWeb APIの形で利用できるサービスだ。APIを自社サービスに実装して広告やマーケティングに活用する事例が国内でも増えており、例えば、エイベックス・グループ・ホールティングスは、音楽ライブのイベント会場にCognitive Servicesの感情認識AI「Emotion」を導入。会場内に設置したカメラで来場者の顔を検知し、ライブの盛り上がりや、演奏されている楽曲と来場者の感情を分析、数値化している。将来的に、ライブイベントの効果測定ソリューションとして外販する計画だという。

 また、電通は日本マイクロソフトと共同で、Cognitive Servicesの顔認識AI「Face」などを使ってOOH広告(屋外広告)のオーディエンス分析・効果測定を行うデジタルサイネージシステムを提供している。このシステムでは、デジタルサイネージの広告を見ている人物の顔画像をカメラで取得して性別・年齢・感情を判別し、属性に合わせた広告の出し分けを行うという。

 個人情報保護法の観点では、ライブ会場や店舗に来た客や、OOH広告をみた通行人の「顔画像」および顔画像から抽出した「特徴量」は個人情報にあたり、広告などへの利用には情報主体(個人)の同意を得る必要がある。しかし、店舗の来客や屋外広告のオーディエンスから都度データ利用の同意を得ることは現実的ではない。屋外や店舗に設置されたカメラ画像データのビジネス利用を推進するために、総務省と経済産業省が事務局を務める「IoT推進コンソーシアム データ流通促進ワーキンググループ」では、個人を特定する以外の目的(属性の推定、人の行動履歴の生成など)でのカメラ画像を活用するためのガイドライン(「カメラ画像利活用ガイドブック ver1.0」)策定している。

 ガイドラインでは、屋外や店舗のカメラ画像データを消費者の性別・年齢の把握、購買行動・行動履歴の把握などに活用するケースで、本人同意に代わる事前告知の在り方の具体例が示されている。同時に、カメラ画像データの利用にあたって「データのライフサイクル」を厳格に定めており、「カメラ画像から利活用に必要となるデータを生成または抽出等した後、元となるカメラ画像は速やかに破棄する。また生成したデータについても、個人の特定に繋がる場合は、利活用目的を達成した後、速やかに破棄する」と記載されている。

 従来のCognitive Servicesでは、顧客(カメラ画像を活用する事業者)がAIで分析するためにAzureへ送信した顔画像データは、マイクロソフトが収集、保持、使用、複製、二次著作物を生成することが可能だったため、事業者が「データの破棄」を管理することができなかった。

 今回のCognitive Servicesの利用規約変更によって、Cognitive Servicesで扱うデータは、顧客(カメラ画像を活用する事業者)が管理・削除できるようになった。これにより、総務省・経済産業省が出しているガイドラインに則った運用で、屋外や施設内で顔認識AIなど使った広告、マーケティングが可能になる。

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