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「情報マネジメントの会社」への転換を目指す製品プラットフォーム戦略、社内改革

シマンテックから独立後1年、CEOが語るベリタスの変化と成長

2017年03月13日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 「『バックアップやストレージの会社』から『情報マネジメントの会社』への転換。これが、この1年間における最大の目標だった」。米ベリタステクノロジーズ CEOのビル・コールマン氏はこう切り出した。

 シマンテックからの“再独立”から1年以上が経過し、ベリタスは「情報マネジメント(Information Management)」を旗印として、次々に新しい製品群を展開し始めている。すでに日本でも、「Information Map」「Resiliency Platform」といった、「NetBackup」によるバックアップデータに新たな活用価値をもたらす製品をリリースしている。

 あらためて、現在のベリタスはどこを目指しているのだろうか。今回は同社CEOのコールマン氏、そして同社SVPでAPJプレジデントを務めるクリス・リン氏に話を聞いた。(インタビュー実施日:2016年2月28日)

米ベリタス CEO(最高経営責任者)のビル・コールマン(Bill Coleman)氏

1年間で製品/ソリューションを大きく変革、目標を上回る成長を達成

 ベリタスはプライベートカンパニーであり、具体的な業績の数字は開示していないものの、「前四半期の売り上げはわれわれの目標を大幅に上回り、大きく成長した」とコールマン氏は語る。

 このビジネス成長の背景には、大きく2つの要因があるという。製品/ソリューションの変革、そしてベリタス自身の企業としての変革だ。

 「率直に言って、1年前までの(分社前の)ベリタスは、『レガシーなデータセンターに最高の製品を提供するベンダー』としては認知されていたものの、『クラウド統合』や『デジタル変革』といったエリアですぐに名の上がるベンダーではなかった。そもそも5年間ほど、新しい製品をリリースしてこなかった」(コールマン氏)

 多くのエンタープライズ顧客が現在取り組むテーマが「デジタルトランスフォーメーション(デジタル変革)」であり、将来的なその実現に向けてITを準備していかなければならない。また、データ保存/活用の領域では、欧州一般データ保護規制(GDPR)のような法規制への対応、コンプライアンスの達成が求められる。分社前のベリタスは、顧客が変革を望んでいる領域で出遅れていたというのが、コールマン氏の素直な見方だ。

 製品/ソリューションにおいては「情報マネジメントのための統合プラットフォーム」実現に向けた戦略を立て、1年間でポートフォリオを急速に強化してきた。冒頭に挙げた発言のとおり、「『バックアップやストレージの会社』から『情報マネジメントの会社』への転換」を図ったわけだ。

 この統合プラットフォームを実現するための第一歩が、バックアップ製品の「NetBackup」を中核とした「360度データ管理」ソリューションだという。

 「(2016年末に)NetBackupを3年ぶりに刷新し、API経由ですべての製品を統合可能にした。メタデータからデータ状態を可視化する『Information Map』、事業継続(BCP)を支援する『Resiliency Platform』、SDS NASの『Access』、DevOps環境で役立つコピーデータ管理の『Velocity』といった製品と連携するプラットフォームだ」(コールマン氏)

 さらに次の四半期には、OpenStack向けのスケールアウト型SDSである「HyperScale for OpenStack」をリリース予定だという。

「360度データ管理」ソリューション(Velocityは国内未発売)

 こうしたポートフォリオ強化によって、ベリタスは、顧客のデジタルトランスフォーメーションやコンプライアンスの実現を統合プラットフォームでサポートするベンダーになった。情報マネジメントの統合プラットフォームというコンセプトは「エンタープライズ顧客が待ち望んでいたものではないか」と、コールマン氏は自信を覗かせる。

 実際、前述した前四半期の大幅な成長にも、この統合プラットフォーム戦略が大きく関わっている。ある欧州の大手銀行顧客は、もともとこのタイミングで700~800万ドル規模の契約更新を予定していたが、デジタルトランスフォーメーションのための統合プラットフォームの話をしたところ「まさに当社が将来やりたいことだ」と評価され、その結果、3100万ドル規模の取引に拡大したという。

 「顧客は(製品やソリューションに対し)、『今あるもの』ではなく、『将来どういうことをやってくれるのか』を求めているのだ」(コールマン氏)

カスタマーフォーカス強化のための社内組織や営業プロセスの改革

 またこの1年は、経営陣や社内組織の改革にも取り組み、「アグレッシブにビジネスを進められる体制ができた」とコールマン氏は語る。営業体制、セールスプロセスも、分社以前とは大きく違うものに変えたという。

 「ひとつはカスタマーフォーカスを強めたこと。分社前は専任営業もおらず、(エンタープライズ顧客の)CTOやCIOへの接触ができていなかった。それが製品面で後れを取る原因にもなっていた。そこでまず、顧客の声を吸い上げるべくセールスプロセスを一新した。営業部門が使うツールやトレーニングも変えた。もちろんこれで終わりでなく、これからもさらにコンサルティング力強化を進めていく」(コールマン氏)

 加えてAPJプレジデントのリン氏は、既存パートナーとの関係を維持/強化しつつ、新たにAWSやマイクロソフトといったクラウドパートナーとの連携を始めたこと、そして顧客に対しても新しいアーキテクチャを使いこなすスキルなどのアドバイスを始めていることを紹介した。

顧客企業に対するアドバイス、アセスメント、導入支援、トレーニングといったサービスも強化している

 なおこのインタビュー後の3月8日、ベリタスはグーグルとのクラウドパートナーシップ強化も発表している。またリン氏は、グローバルクラウドプロバイダーと同時に、アリババ、日立といったローカルプロバイダーとの協業も進めており、顧客が選択肢を持てるよう協業を拡大していく方針を示した。

顧客企業が望むデジタル変革は「ITの」変革ではない

 将来的に、従来の“レガシーなデータセンター向け”ビジネスと、新しい“情報マネジメント”のビジネスはどういう比率を目指すのか。それを問うたところ、コールマン氏からは、両者は個別に存在するものではないという答えが返ってきた。

 「将来的にも、レガシーなデータ管理のビジネスがなくなるわけではない。ただし、NetBackupのバージョンアップによって、将来的には情報マネジメントの基本機能が追加され、必要に応じて360度データ管理の機能もアドオンしていくというかたちになるだろう。3~5年後には、それぞれの顧客が何らかの情報マネジメント機能を導入していることになるのではないか。特にコンプライアンスの面で、保管しているデータをきちんと把握していかなければならないからだ」(コールマン氏)

 コールマン氏は、ベリタスが提供するデジタルトランスフォーメーションとは、顧客が持つデータを「情報」に変え、その情報を「洞察」に変え、その洞察から「ビジネス価値」を生むことを支援するものだと語った。

 「顧客はデジタルトランスフォーメーションにおいて、決して“ITシステムの”変革を望んでいるわけではない。競争力向上のために“社内にあるデータの活用戦略”の変革を望んでいるのだ」(コールマン氏)

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