イーサネットの普及にともない
売上が爆発的に伸びる
さて3COMに話を戻すと、同社は当然ながらイーサネットにフォーカスした製品展開を目指した。まず1980年10月には、ベンチャーキャピタル3社から総額110万ドルの資金を調達。これを原資にイーサネットカードの開発を行なう。
1981年にはまずDECのLSI-11やVAX-11向けのイーサネットカードと、IBM-PC向けのイーサネットカードをそれぞれ出荷し、ついでその他のさまざまなミニコンあるいはメインフレーム向けのイーサカードも順次ラインナップしていった。
特にDECの場合、後追いの形でDEC自身からもイーサネットカードは出荷されたが、わずかにDECに先んじて製品投入できたことは大きく、ここで一定のシェアを獲得している。
また当初はIBM-PC向けのイーサネットカードの売れ行きはさほどでもなかったのが、この後急速にこの分野が伸びることになり、これが同社の原動力となった。
1981年3月に同社は社長としてL. William Krauseを迎え入れ、Metcalfe博士はCEO兼取締役会議長のポジションについたが、その1981年はまだ市場が小さいこともあって、売上は180万ドルに過ぎなかった。
この売上の少なさの責任を取って、Metcalfe博士はCEOを降り、セールス&マーケティング担当副社長に降格。代わりにKrause氏がCEOの座に着くが、ここから同社は急速に売上を伸ばしてゆく。
1983年度の売上げは470万ドル、1984年度には1670万ドルまで増えた。営業利益も1984年度には230万ドルを確保しており、利益率も悪くはなかった。1986年度には売上げが6400万ドルに達している。
この売上の原動力となったのは、1984年にIBMが投入したIBM-PC/AT向けの16bitイーサネットカードである。ちなみに1986年における3COMのネットワーク分野の売上シェアは8%ほどとなっている。
ことIBM-PCに関して言えば、まだIBM純正のイーサネットカードやソフトウェアの方がこの時点では売上が高く、28%ほどのシェアを握っていた。
こうしたトレンドを念頭においてか、3COMは単にイーサネットカードだけを売るのではなく、ソフトウェアやサービスまで包括的なソリューションを提供する方向に舵を切る。
1984年に同社はソフトウェア部門を新設し、1986年にはネットワークOSとして3+シリーズの提供を開始する。3+Share(ファイル及びプリンター共有)、3+Mail(電子メール)、3+Remote(シリアルポート経由でのネットワーク接続)といったソフトウェアの提供を開始する。
またこれとは別に、マイクロソフトのLAN Managerをベースにした3+Openという、やはりファイル/プリンタ共有ソフトを提供した。
ほかにも、こうしたものを組み合わせてネットワークシステムを構築するための機器として、3C588 MultiConnect Repeaterや各種ターミナルサーバー/ターミナルエミュレーター、さらには3Serverと呼ばれる3+シリーズのサービスを提供するサーバー、3Stationというディスクレスワークステーションなど、さまざまな製品ラインナップを展開する。
画像の出典は、“InfoWorld 1987年9月7日号”
ちなみに写真の手前左にあるのはLanscanner(ネットワークケーブルの接続状態を確認できるテスター)、手前右がPairtameter(10BASE2と10BASE-Tの変換を行うアダプター)である。
さらには公衆回線とのゲートウェイとなるGS/1-X.25やIBMのSNA(Systems Network Architecture)とのゲートウェイになるCS/1-SNAや、Sun MicrosystemsとのゲートウェイとなるNCS/1など、さまざまなホストとのゲートウェイなども後追いで追加されていった。
下の画像は1989年頃の同社の雑誌広告であるが、さまざまな拠点(図の中にはボストン、ワシントンD.C.、ダラス、シカゴ、ロサンゼルス、シアトル、ツーソンとヨーロッパが挙げられている)や、1つの拠点でも複数の部署(シカゴにはMain NetworkのほかにBlack Network、Production、Training、Engineeringといったネットワークが分離されている)があり、こうした複雑なネットワークを3COMの製品で全部つなけると説明しているものだ。
画像の出典は、“COMPUTERWORLD 1989年6月19日”
言ってみれば、単純なイーサネットカードのみを売るビジネスから、トータルのネットワークソリューションを販売する会社に進化したのがこの時期である。

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