ドコモは、東京無線協同組合、富士通、富士通テンの4組織合同で実証実験中の「AIタクシー」の成果報告およびデモストレーションを都内で開催しました。
お客さんのいる場所をAI技術で予測
AIタクシーとは、運転手に対して各社の情報を基に算出した「リアルタイム移動需要予測情報」を提示し、タクシーに乗りたいと思う人がいるところへ営業をうながす仕組みのこと。
タクシーを利用する側から見れば、より乗りたいと思ったときにタクシーがあらわれるようになります。一方、タクシーの事業者側から見れば売り上げアップ、空車時間削減によるコストと排出する二酸化炭素を削減できるというわけです。
AIタクシーの肝である「リアルタイム移動需要予測情報」は、今回、ドコモの携帯電話利用者の情報を基にしたモバイル空間統計、タクシー運行、気象、施設データなどから、NTTグループのAI技術「corevo」の多変量自己回帰とディープラーニングで算出しています。
なお、ドコモのモバイル空間統計には電話番号など個人を識別できる情報は使わず、生年月日などの情報は20代、40代のような一定の年齢層に変換しており、プライバシーは守られているとのこと。
実験で売り上げは向上、新人教育にも効果があった
実証実験では、2016年6月から2017年3月までのあいだ東京23区と武蔵野市、三鷹市にて実施。学習用に使われたタクシーは4425台、実際フィールド実証が行なわれたのは、12台となります。
結果としては、11月から12月への売り上げ変動の平均が、東京無線協同組合のタクシー全体と実証参加者を比べると実証参加者の方が約49%も高くなっていたとのこと。
また、AIタクシーの仕組みは新人ドライバーへの教育にも好影響。東京無線協同組合によれば、ベテランのタクシードライバーになると積み重ねてきた経験から普段行かないような地域でも、どのあたりタクシー待ちのお客がいるかわかるとのこと。新人ドライバーは、その足りない経験値をリアルタイム移動需要予測情報から学びとることができるということです。
東京無線協同組合 常任理事 無線委員会委員長の橋本栄二郎氏は「効果を実感している。長年の経験がないとわからないことが補完できた」と語っており、導入までの課題については「12台から約4000台になったとき、同様の効果が得られるか、今後も実証実験をつづけて検討したい」と述べました。
運転手は地図に表示された情報を頼りに
お客さんがいると思われるところへ
実際にAIタクシーに乗ってみると、通常のタクシーの違いは助手席近くに設置されたタブレット端末のみ。タブレット端末には地図が表示されており、中央に現在地を示すアイコンがありますが、一見するとただのカーナビのよう。
リアルタイム移動需要予測情報は、対象地域を500メートル四方のエリアで区切り、エリアごとに30分後までのタクシー需要の予測評価値を算出。その後、再度運行情報を入れて計算することでそのエリア内を25分割した小エリアにピンポイントで運転手を案内します。
運転手は地図上に表示された赤い点線のエリアに向かうだけ。赤い点線内に表示される矢印はお客の多い道路方向を示しています。
今回の実証実験ではタブレットと備え付けのカーナビがいっしょについていましたが、ドコモ IoTビジネス部の谷直樹部長いわく「今後、実験が進んでいけば、リアルタイム移動需要予測のシステムを車載端末に直接表示・連携できるようにしたい」とのことで、さらなるブラッシュアップも期待されます。
現代では、スマホでタクシーを呼ぶさまざまなサービスが用意され非常に便利ですが、こと日本においては配車依頼をすると、追加料金が発生します。AIタクシーは「タクシーを待っている人がいる可能性が高い場所」へ運転手を誘導する技術となるため、実用化して客側のタクシーに乗りたいという気持ちを先読みしてもらえるならば、配車依頼するより安く利用できるようになるかもしれません。