脱税について税理士に聞きました!
確定申告「脱税」の基本 これやらかしたら犯罪です
確定申告で気になるキーワード、それは「脱税」。伊丹十三監督の名作映画『マルサの女』ではあの手この手で税金を払うまいとする悪党たちが出てきましたが、実際に脱税にあたる行為はどんなものがあるのでしょう。税理士・宮原裕一先生に聞いてみました。
1.脱税の方法にはどんなものがありますか?
手口として挙げられるのは、「隠す」「でっち上げる」というものですね。
・売上を「隠す」
→帳簿に載せていない口座に代金を振り込んでもらうとか、現金でもらって請求書は捨てちゃうとか。レジを打たないでポケットに入れちゃうとか。
・経費を「でっち上げる」
→存在しない人に外注を払ったり、手がき領収書の数字を上書きしちゃったり、そもそも勝手に領収書作ってみたり。
2.家族を従業員扱いにする脱税方法などはありますか? また、故意ではなくても「うっかり脱税してしまった」という例などはありますか?
そもそも家族を従業員とするときは、青色申告の場合は「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出して要件に合う範囲での経費となりますし、白色申告の場合は「専従者控除」という形で一定限度までしか控除できません。当然ですが、税務調査ではその実態を確認することになりますよ。
「うっかり脱税」ってのも変ですが、結果として申告もれになってしまったという例としては、やはり税務の取り扱いや経理を知らなかったことで起こることが多いでしょうね。
・仕入れた商品や材料などを自分のことに使った
→売れてないものが経費に入った状態になってしまうので、家事消費売上という収入を計上しなければなりません。
・経理上の間違いによる二重計上
→カード決済の経費で、領収証を見て経費を入れて、カード明細を見て経費を入れて、と経費が2倍になってしまってる
・借入金の返済を元本もろとも経費にしている
→元本は借りたお金を返しただけなので経費ではありません。
当然これらのものは計算間違いなどの話なので、重いペナルティにはなりませんが、ないにこしたことはありませんね。
3.脱税はどのように見つけられますか?
調査官は脱税の手口を知り尽くしています。先に挙げたようなものは、定番ですからね。例えば売上先には請求書がある訳ですから、事前にそのデータがあれば突き合わせて帳簿に売り上げがのっていないことがわかります。架空の人件費は、実際にその人がいるかどうかを確かめればわかってしまいます。領収書の改ざんなんてのは見慣れてます。
また、儲かっていないはずなのに生活レベルが高かったりといった、資産・生活状況などから怪しまれたりもしますね。
4.大企業でも中小企業でも、脱税は同じように見つけられ、罰されますか?
中小企業は納税の面ではいろいろと特例があって税金が安くなったりしますが、脱税については当然ながら罰が軽くなることはありません!
脱税の規模によっては、通常の任意調査とは異なり、刑事告発を伴う強制調査となる、いわゆる「マルサ」になることはあります。国税庁の発表では平成27年度の告発した事案1件当たりの脱税額は9700万円とのことです!もちろん、私たち個人事業主ではめったにないでしょうが……。
5.任意調査の場合、調査官からはどうやって連絡があるんでしょうか?
基本的には電話で連絡があります。あくまでも任意ですので調査の日程は考慮してもらえますが、調査に応じる義務がありますので実質的に断ることはできません。
調査は1日~2日程度でみなさんのところへ出向き、帳簿などをベースに請求書・領収書、日報などを確認します。調査というと『マルサの女』みたいに家の中をひっかきまわされるイメージをもたれる方もいらっしゃいますが、任意調査の場合はすべて調査官の求めに応じてみなさんが書類を出したりします。勝手にさわったり立ち入ったりということはありませんのでご安心ください。
年度を見比べて数字が異常に変わっているとか、業界の平均値とかけ離れているというような場合は対象になりやすいので注意しておきましょう。
6.脱税が見つかったら、どのような罰則がありますか?
通常の税務調査で悪質な行為による申告漏れを指摘された場合は、重加算税というペナルティがあり、脱税に対しては原則として次のような割り増しがあります。
・修正申告の場合…原則として本来納める税額の35%
・無申告の場合…原則として本来納める税額の40%
※過去5年以内にやらかしている場合にはさらに10%増しになります。また、法定申告期限を過ぎていることに対して延滞税という遅延利息もかかります。
さて、これまで「脱税」という言葉でひとくくりにしてきましたが、この重加算税などは自動車で言えばスピード違反の交通反則金のようなものです。いわゆる行政罰というもので、つぎからちゃんとしなさいよ、的なものなんですね。これに対して先ほどの告発を伴うマルサの場合は、起訴、裁判へと進み、所得税の場合は10年以下の懲役もしくは1千万円以下の罰金という刑事罰を受け、前科がつくことになります。
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