19chの球体マイク「ZYLIA ZM-1」
個人的に、今回のNAMMで出展されたもので、一番驚いたのがこの謎の丸いマイク。スタジオに1本ぽんと置くだけで、バンドの各楽器がバラで録れてしまうというもの。本体の「ZYLIA ZM-1」、ソフトウェアの「ZYLIA Studio」、そして録音したデータを保管・共有するクラウドサービスの「ZYLIA Cloud」で成り立つ、なにかの手品のようなレコーディングシステムです。
ちなみにメーカーのZYLIA(ジリア)は、あのフォン・ブラウンの出身地であるポーランドはポズナンの会社。頭良さそうです。ひとまず動画をどうぞ。
この地球儀のような球体には、19個のマイクカプセルと、48KHz/24bitのUSBオーディオインターフェースが19ch分内蔵されています。要するに19chのUSBマイクですね。これをパソコンに接続すると、専用ソフトを介して各楽器の音にフォーカスし、各々を独立したトラックとして記録。演奏後に適宜ミキシングして、バランス取り放題というもの。
典型的な用途としては、まずバンドのリハーサルの録音でしょう。ステレオのポータブルレコーダーで録る場合、各楽器のバランスはレコーダーを置くポジションに依存します。大抵はドラムばっかり大きかったり、ボーカルが全然聴こえなかったり、ギターがやかましかったりする。まずは、そんな問題の解決に役立ちそうです。
このマイクの技術的核心であるところの音源抽出システムは「永年の研究の成果」ということで謎に包まれていますが、デモを聴く限り、ほどほどにセパレーションが取れており、かつミックスした音源に位相の乱れもなく、綺麗に出力できているようです。
もしデモ通りのクオリティーで録れるなら、バンドの一体感を活かしたスタジオライブの録音など、リハーサルのチェックを超えた使い方もできそう。マイクをいっぱい立てなくていいし、ミキサーもいらない。壁で楽器の間を仕切ったり、ヘッドフォンでほかのメンバーの音をモニターする必要もないので、いい雰囲気で録れそうです。
ただ、価格はそれほどお安くありません。通常価格1299ドル。でも、19本のマイクとケーブルがまとまった19chのUSBインターフェースと考えると、かなり安いような気も。いまなら30%オフの999ドルで買えるようですよ。
この見た目ですから、VR方面に使えるかどうかは誰もが期待するところでしょうが、マルチトラックで切り出したものを5.1chや7.1chにアレンジすることはできるものの、まだ3次元立体音響の収録には対応していないようです。その方面への応用も期待したいところです。