超強力なAbleton Linkの同期
なぜかメーカーのウェブサイトでは表向き説明されていないのですが、Soundbrenner Pulseのモバイルアプリ、The Metronomeは「Ableton Link」に対応しています。Ableton Linkは端末内のアプリだけでなく、同じLANに接続されたほかの端末、パソコンのDAWと勝手に同期してくれる機能。これは強力です。
たとえばKORG Gadgetのシーケンスを再生しながら、Soundbrenner Pulseを走らせれば、オケと同期したクリック……いや振動が返ってくる。これでオケを鳴らしつつ、そのテンポにドラムやベース、ギターを合わせることができる。パソコン用のDAWにAbleton Liveを使っているなら、Soundbrenner Pulseをペアリングしているモバイル端末とリンクすれば、同じことができます。
いずれの場合も、Soundbrenner Pulse側からテンポの操作が可能で、ほかのアプリやパソコンのDAWがそれに追従するのが、なかなかダイナミックです。ちなみに先日発表されたMac OS版のKorg Gadgetも、このAbleton Link対応ということで、ローカルネットワークを使った同期システムとして将来性も期待できそうです。
DAW Toolsを使うとMIDIコントローラーにも
パソコンと同期する方法はもうひとつ。Soundbrenner提供の「DAW Tools」を使う方法。これはパソコン用の常駐ソフトで、今のところMac OS X(10.10以上)でしか使えませんが、Ableton Liveだけでなく、Pro ToolsやLogic Proにも対応するのがいいところ。DAW Toolsを使う場合は、Soundbrenner Pulseとパソコンを直接ペアリングするので、モバイルアプリのThe Metronomeは使いません。
このソフトがおもしろいのは、Soundbrenner PulseをMIDIコントローラーとして使えるところ。本体のタッチセンサーとロータリーエンコーダーに、コントロールチェンジ(CC)を割り当てれば、パンやエフェクトのようなDAW側のパラメーターが操作できます。LANが使える環境では、複数台を同期できるAbleton Linkの方が便利ですが、この機能で使い分けできそうです。
気になるのはバイブレーターの慣性
さて、ワイヤレス接続に付き物のレイテンシー。つまり、シーケンサーの再生に対して、振動のタイミングが遅れてしまうこと。DAW Toolsの表示によると、9msから15msの間で常にそれは存在し、しかも常に揺れ動いているようです。
そういう微妙なものに対して、バイエルの下巻で挫折した程度の私が感想を言っても参考にならないでしょうが、タイミングが遅れているようには感じませんでした。それより気になったのはバイブレーターの慣性です。
バイブレーターが強力ということはモーターも振動子も大きいということですから、パルスのように一瞬で立ち上がり、一瞬で消えるというわけにはいかない。だから、どうも「カウントの山」みたいなものがつかみづらい。アプリで振動の大きさや減衰カーブは設定できるのですが、振動のタイミングそのものを微調整する機能があっても良かったかもしれません。
ただ、リズムというのは反復するもので、しばらく使っているうちにバイブレーターの「演者としてのノリ」は把握できるようになります。要は慣れの問題ですが、絶対的なタイミングより、バイブスを感じるつもりで使えばいいということです。そこが耳で聴いて、頭で悩まなければならないクリックと違うところ。これは体験として新鮮でおもしろいです。
同期で悩んでいる方は、ぜひお試しください。
著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)
1963年生れ。フリーライター。武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。新しい音楽は新しい技術が連れてくるという信条のもと、テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレとエスプレッソ