このページの本文へ

前へ 1 2 3 4 次へ

JAWS-UG首都圏勉強会レポート 第10回

AWSとネットワークをディープに語る勉強会開催

キャリアを超えてネットワークを語り合うNW-JAWSが始動!

2017年01月06日 07時00分更新

文● 重森大

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

2016年11月21日、キャリアを超えて、ネットワークとAWSについてディープに語り合うJAWSの新支部「NW-JAWS(ネットワークJAWS)」初の勉強会が開催された。会場となったNHNテコラスのセミナールームは150人を超えるネットワーク・インフラ関係者が集まり、アマゾンウェブサービスジャパンの荒木靖宏さんのセッションを筆頭に、6本のLTが披露され、大いに盛り上がった。

所属する会社やキャリアを超えた情報交換の場に

いまさら言うまでもないことだが、AWSはインターネットを通じて利用するクラウドサービスだ。それはつまり、インターネットなどのネットワークが健全に利用できることが前提になっているということだ。なのにだ。これまでネットワークに特化したJAWS-UG支部は存在していなかった。そう、これまでは。ついに有志が集い立ち上がり、サーバーやアプリよりもネットワークインフラについて注目するエンジニアが情報交換できる場が生まれた。それが、NW-JAWS(ネットワークJAWS)だ。

 第1回NW-JAWSの司会を買って出たのは、スカイアーチネットワークスの岡田行司さん。そして場を盛り上げる特別司会ということで、ハンズラボの長谷川 秀樹さんも登場した。

挨拶をする司会のスカイアーチ 岡田さんと、初回特別司会を務めるため準備中のハンズラボ 長谷川さん

 そして会場を埋め尽くした参加者を前に開会の挨拶に立ったのは、NTT東日本の里見 宗律さんだ。「これまで通信キャリアやデータセンターなど、それぞれが自分たちの扱える範囲でネットワークを工夫してきました。これからはアプリケーションエンジニアと同じように、ネットワークエンジニアもキャリアや所属企業を超えてノウハウを共有し、力を合わせて課題解決できる場を持つべきです」(里見さん)

 記念すべき第1回の勉強会は、講演が1枠にLTが6枠という構成。ネットワーキングと懇親会に多くの時間を割いており、勉強会というよりは場作りを強く意識した構成だと感じた。

NW-JAWSを、ネットワークの闇の領域に引き込む魅惑的な場へ

 1枠設けられた講演では、アマゾンウェブサービスジャパンの荒木 靖宏さんが登壇。まずはAWSをとりまくネットワーク状況を知るという基本のキからスタートとなった。

アマゾンウェブサービスジャパン 荒木 靖宏さん

「お客さんと話をしていて一番よく聞かれるのが、リージョン間のネットワークはどうなっているのか?ということです。リージョン間をつなぐキャリアはいっぱいありますと答えるんですが、高くないのか?など疑問が残るようです」(荒木さん)

 そう言って荒木さんは、AWSのリージョン同士を結ぶネットワークについて説明を始めた。多くのキャリアが、大陸間に大容量の回線を引いている。新たに回線を引いたキャリアがAWSに売り込みに来るので、複数の回線を用意できたり、既存キャリアとの価格競争が起きたりしてAWSにとっていい方向に環境が整っていくことになる。

「しかし、大きな需要が見込めない場所には、キャリアは回線をひいてくれません。たとえばオーストラリアと北米の間など。そういう場所にはAWSが出資して回線を引くというところに踏み込みました。それが、2016年6月に発表したリリースです。2018年にはオーストラリア、ニュージーランド、フィジーなどオセアニアと北米とを太い回線で結ぶ予定です」(荒木さん)

 その他に、AWSのネットワークとアマゾンのネットワークはどちらが大きいのかという質問も多いという。アマゾンは小売りビジネスとしてはとても大きく、トラフィックも相当なものと想像されるようだ。しかし実際にはアマゾンもAWSの一顧客でしかないらしい。

「AWSがスタートして1年3ヵ月で、AWSのトラフィックはアマゾンのトラフィックを上回りました。今でもアマゾンは大きな顧客のひとつではありますが、最大の顧客ではありません」(荒木さん)

 エンタープライズからは、グローバルなネットワークを使いたいという要求が多い。中でもネットワーク帯域の観点で厳しいのは、VDI(Virtual Desktop Infrastructure)だ。そのVDIを、アマゾンは世界中で20万人の社員に使わせている。しかも、社員からのアクセスでさえすべてを信頼するのではなく、間にセキュリティ装置をかませているらしい。それだけのことをしているアマゾンでさえ、AWSにとっては大きな顧客のひとつでしかないというのだから、AWSが持つネットワークの巨大さが伺える。

 続いて荒木さんは、ネットワークエンジニアとして生きていくには何を学んでいくべきかという話を始めた。ネットワーク技術を身につけたいと思っても、周りが求めているのはネットワークそのものではない。ネットワークがもたらす価値、つまりDDoS攻撃に耐え、自分の好きなデバイスが使えて、高負荷にも耐え、マルチクラウドが使えることだ。そういうことを学んで行かなければ、ネットワークの人として生きていくのは難しいと荒木さんは語る。

「コネクタをカシメて機器につないでランプがついてうれしい! って私がそうなんですけど、そういう人はだんだんただのヤバイ人になっていきます(笑) 大事なことは、ネットワーク専門家以外の普通の人はどんどんサービス指向になっていっているということです。こうしたトレンドをつかんでいかなければなりません」(荒木さん)

ネットワークに求められるものにもトレンドがある

 ネットワークは高度化の一途をたどっていて、コントロール自体をプログラミングできるようになってきている。AWSにもVPCという機能があり、これは恐らく世界で一番実績があるSDNだと荒木さんは言う。CDNやロードバランサなどの機能もAWSではすでにクラウドで提供している。足りない機能をサポートしてくれるISVとのエコシステムも構築されている。

「とはいえ、低いレイテンシを求められると今はまだ難しい状況です。4Gや5Gで求められるレイテンシをAWSで実現する術をこれから模索していかなければなりません。そういう話を、このNW-JAWSでしていきたいと思っています。逆に、個別のサービスについての話をするつもりはあまりありません。ネットワークを使いこなす方法、それも手動ではなくコードでできることについて話をしたいと思います」(荒木さん)

 AWSとしても情報提供を行ない、AWSでSDN的なことをできるようにお互いに勉強していきたい。そう荒木さんは言う。

「みなさんがしゃべれるような場にしてもらって、みなさんをネットワークの闇の領域に引き込んでいきたいと思います」(荒木さん)

前へ 1 2 3 4 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事