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「The Machine」実証実験に成功、数年後にはその新技術がさまざまなHPE製品に搭載される

HP Labsフェローに聞く“メモリ主導型アーキテクチャ”はなぜ必要?

2016年12月27日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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ソフトウェアも「メモリ主導型」に最適化されたものに変化していく

 ブレスニカー氏は、メモリ主導型アーキテクチャに合わせて、アプリケーションの側でも新しいアプローチを研究開発していると語った。これまでとは違う、高速かつ豊富なメモリリソースが使えることを前提としたアプローチだ。現在は、メモリ主導型アーキテクチャをソフトウェアでシミュレートした「Superdome X」マシン上で研究を進めており、発表によると新しいソフトウェアプログラミングツールを使うことで、ワークロードの実行速度は「最大8000倍」も改善したという。

メモリ主導型アーキテクチャのメリットを最大限引き出すために、OSやアプリケーション側の研究開発も進められている

 一例として、ブレスニカー氏は、膨大な数の画像から類似画像を検索するアプリケーションを取り上げた。これまでのプロセッサ主導型アーキテクチャでは、豊富なコンピューティングリソースを生かして「検索(クエリ)のたびに計算処理を実行する」アプローチを取っていた。しかし、プロセッサの進化が止まり、他方で対象画像の数がさらに増えていくならば、やがてこのアプローチでは処理が追いつかなくなる。

 一方で、豊富なメモリリソースを前提としたメモリ主導型アーキテクチャの世界では、個々の画像の特徴(フィンガープリント)をあらかじめ計算/インデックス化しておき、その巨大なインデックスを丸ごとメモリに格納するアプローチを取ることができる。検索実行の際には、単純にこのインデックスを参照するだけでよく、高速な処理が可能になる。

 実際に、HP Labsが画像検索アプリケーションを開発した結果、インメモリシステム(プロセッサ主導型アーキテクチャの)比で数十倍、ディスクベースシステム比では数千倍の高速化が実現している。

HP Labsが開発した「類似画像検索アプリ」(左、https://www.similaritysearch.labs.hpe.com/)での速度比較。ディスクベースシステムで3分、従来型のインメモリシステムで2秒かかっていた検索が、50ミリ秒で済んでいる

 もっとも、メモリ主導型アーキテクチャの利点は、大量のメモリリソースを必要とするワークロードだけで得られるわけではないと、ブレスニカー氏は説明した。前述したとおり、同アーキテクチャの最終形ではメモリ/ストレージの階層がなくなる。ブレスニカー氏は、「メモリリソースがペタバイトでもメガバイトでも、メモリトランザクションがとてもシンプルになる」ため、ソフトウェア開発者にとっては魅力的だろうと語った。

 メモリ主導型アーキテクチャに最適化されたソフトウェアの開発を促すため、HPEではサードパーティのソフトウェアベンダーへの協力を始めている。たとえば今年5月には、Hortonworksとの共同プロジェクトを立ち上げ、分散インメモリ分析処理プラットフォーム「Apache Spark」をメモリ主導型アーキテクチャに最適化する取り組みを始めた。また、アプリケーション開発者向けのプログラミングツール、前述したLinux OSやライブラリ群、シミュレーターなどのオープンソース公開もスタートしている。

高速で大容量の「次世代不揮発性メモリ」開発がカギを握る

 しかし、現在とはまったく異なるアーキテクチャでコンピューターを構成するとなると、現実にはとても高価なハードウェアになるのではないか。その点について質問すると、ブレスニカー氏は「コスト的にはそれほど不利な要素はないと考えている」と答えた。

 「基本的には、現在開発を進めている『高速で大容量の不揮発性メモリ』(だけが特殊なテクノロジー)であり、それ以外の、たとえば半導体プロセスなどは現在の標準的な技術を採用している。(コストが割高にならないのは)いわば『やり方を変える』だけだからだ」(ブレスニカー氏)

 HPEではすでに「ReRAM(抵抗変化型メモリ)」を用いた次世代の不揮発性メモリ開発に取り組んでおり、昨年10月にはReRAMテクノロジーに関してサンディスク(現在はウェスタン・デジタル傘下)との提携も発表しているが、現時点ではまだ商用化には及んでいない。したがって、メモリ主導型コンピューターのコストは、この次世代型不揮発性メモリの研究開発と量産化がうまく進むかどうかにかかっていると言える。

 なお英国The Registerの報道によると、「HPE Discover 2016 London」で披露されたプロトタイプでは、不揮発性メモリとしてすでに製品化されているNVDIMM(従来型のDRAMとNVRAMを組み合わせたもの)技術が用いられていたようだ。将来的に、これがReRAMベースのものに代われば、現在の1ラック320TBからペタバイト、エクサバイトクラスへと、共有メモリプールは格段に大容量化するだろう。

 ブレスニカー氏は、The Machineプロジェクトで開発している新たなテクノロジーが、今後数年間でさまざまなHPE製品に組み込まれていくだろうという見通しを語った。HPEの発表でも、それぞれのテクノロジーを商用化していく方針が示されている(ただし、The Machineそのものの製品化については明らかではない)。

 たとえば次世代型不揮発性メモリに関しては、バイト単位でアドレス可能な(つまりメインメモリとして利用可能な)不揮発性メモリ技術の開発を続けており、早ければ2018~2019年には製品としてリリースされる予定だ。

 フォトニクス技術に関しては、来年(2017年)にはモジュラー型の統合インフラ製品「HPE Synergy」などの先進的な製品群に組み込んで行く計画。ストレージ製品を含むその他の製品群においても、早ければ2018~2019年ごろにフォトニクス技術を投入していく。加えて、今年発足したGen-Z Consortiumで開発されている高速インターコネクトプロトコルを活用し、メモリファブリック製品を投入する計画もあるという。そのほか、メモリ主導型コンピューターを活用するソフトウェア、セキュリティ技術についても、それぞれ商用化を進めていく方針を示している。

 「The Machineプロジェクトの最終目標は、メモリ主導型コンピューティングのベネフィットを、HPEが提供するすべての製品やサービスで得られるようにすることだ」(ブレスニカー氏)

 HPEが掲げる「コンポーザブル・インフラ」のビジョンにおいても、最終的にはThe Machineがビジョンに掲げるような、巨大かつ柔軟に組み合わせられる物理リソースプールの実現が求められている。将来的には、このSoftware-Definedなインフラ技術の動きとも融合して、柔軟かつ自動化された物理ハードウェア管理が実現することになるだろう。

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