ヤマハのネットワーク機器20周年を記念して、システムエンジニアの過酷な実態をコミカルに描く電撃文庫の異色作『なれる!SE』とコラボ! スペシャル短編を全7回にわたってお届けするぞ。楽しく読めてヤマハのことをもっと知ることができる内容になっているので、ぜひチェックしてね!
6回目はこちら
登場人物
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室見立華
実力のあるネットワーク系のSEだが十代にしか見えない少女。四六時中仕事をしているワーカホリックでツナが大好き。
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桜坂工兵
知識も経験もないシステム開発会社に就職した新人社会人。教育係である室見のもとで激務に追われる日々。
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橋本課長
立華たちの顧客である業平産業の課長で、仕事のできるクールなキャリアウーマン。工兵の飲み友達でもある。
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「む、室見さんがヤマハルーター好き? え、ちょ、ちょっと待ってください。じゃあなんで業平さんへのヤマハ導入、あんなに嫌がってたんですか。『C社機器を取り下げるくらいなら私が社長の人生、取り下げてやる!』って息巻いてたでしょう。あれは嘘だったんですか?」
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「嘘じゃないわよ。てか、既存設定流用前提の見積もりで新規機種の構築とか無茶苦茶だし。再設計の時間もなかったから構築担当として文句も言いたくなるわよ。どうせ社長、プロジェクトの期間も予算も握り直してないだろうから最終的に詰め腹切らされるのはこっちだし。せめてクレームくらい入れておかないと」
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「はぁ。……じゃあフリーハンドでネットワーク設計していいって言われたら、必ずしもC社を選んでなかったってことですか? もし予算や時間が自由になっていたら」
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「そ、それは個人的な好みを言わせてもらえれば色々チャレンジしてみたかったわよ。LANマップをDCラックに導入してポートアサイン表を廃止してみたり、GUI画面から配下スイッチのVLAN設定を一括変更してみたり……きっと、劇的に管理負荷が下がると思うのよねー。胸熱だわー」
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「(むっちゃヤマハ限定のチャレンジだし……)」
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「(愛が感じられます……)」
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「そもそも私とヤマハルーターとの出会いは十年前に遡るわ。あれはある寒い雨の日、とある電気街のパーツショップで、当時まだネットワーク初心者だった私はなけなしの小遣いを握りしめてショーウィンドウのRTA50iを(以下、百二十行ほど自分語りが続く)」
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「む、室見さん。もうよく分かりましたから。つまり今回の件とか関係なく、室見さんは昔からヤマハルーターのファンだったってことですね?」
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「まぁファンなんて言うのはおこがましいレベルだけど、それなりに好ましくは思っていたわね。普通のユーザーより少し長く触れていたくらいの自負はあるわ」
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「(少し……)い、いや、だったらなおさら納得いきませんよ。袋井の工場に行く時、室見さん無茶苦茶不機嫌だったじゃないですか。『呑気に食事してる場合じゃない』とか言って」
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「それは憧れのルーターの製造現場に行くのに、悠長にコーヒーなんておかわりしてられないでしょ? どこを重点的に確認するか、なんの質問をするべきか、きっちりシミュレートしていかないと」
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「工場で『ありえない』、『信じられない』とか毒づいてたのは?」
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「目の前でRTXシリーズの基板が作られているのよ! 普通にアンビリーバボーでしょ。きっちり自制していないと部品に飛びついちゃいそうだったわ」
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「じゃ、じゃあそもそもの話! 新幹線の中でずっと不機嫌そうに舌打ちしてたのは!?」
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「緊張してたのよ!」
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「……」
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「……」
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「というわけで、もう遠慮の必要はないわね。桜坂、残りの時間で私がヤマハルーターの魅力についてたっぷり説明してあげる。全部解説するまで帰さないから! 覚悟しなさい!」
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「え、えええ!?」
*
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「そもそもWANルーターをメインで売り物にしていたヤマハがなぜLANマップなどのソフトウェア提供に乗り出したのか。ここには製品戦略の根本的な転換・変更があったのよ」
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「もともとヤマハルーターは非常に故障率が低くて『拠点と拠点を繋ぐ』、『遠隔地を接続する』ことに関しては安定した品質を担保できていたの。でも実際、ユーザー的にネットワークが繋がってるっていうのはPCからウェブサイトまで一気通貫で接続されてることでしょ? そういう意味だとWANの通信品質のみ高めていっても不十分だとヤマハは考えたの」
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「そこで出てきたコンセプトが『端末とサービスを繋ぐ』、たとえば導入済みのルーターからクライアント・サーバーの接続状態を閲覧できるようにすること。要はエンドツーエンドの『見える化』ね」
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「普通、メーカーがこういう機能を売り出そうとするとすぐ専用サーバー・アプライアンスの開発に走ったりするけど、ヤマハは違ったの。なんと既存で売り出しているルーターに標準機能として載せてしまった。なぜこういうアクションを取ったかと言えば理由はシンプル。ユーザーの視点に立てば『ルーターやスイッチという既存設備への投資を活かしたまま』『ネットワークを見える化』した方が嬉しいに決まってるから。つまり顧客のニーズを最大限に活かした結果が今のLANマップの製品仕様に繋がっているわけよ」
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「ユーザーの意見の吸い上げについては、前にも説明したように rt100i-usersのメーリングリストがあるけど、重要な機能を果たしているコミュニティはもう一つあるわ。それがヤマハネットワークエンジニア会。ヤマハのネットワーク機器を取り扱うエンジニア同士、またはエンジニア〜ヤマハスタッフ間で様々な情報交換が行えるSNSよ。ここではYNEドリル・遠隔検証プログラムという教育カリキュラムも提供されていて新規ユーザーの裾野を広げていっているわ。こうした地道なサポートこそが今のヤマハルーターの隆盛に繋がっているのよ」
*
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「というわけでヤマハのサービス精神の原点について説明していくと−−」
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「(や、やばい、絶好調だ。この人、止まらない)」
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「(H田さんも橋本課長も呆れてるんじゃないかな。他社のオフィスで独演会なんて。そろそろ止めないと)……って、あ、あれ? H田さん、橋本さん、なんで荷物片づけ始めてるんですか。PCの電源まで落として」
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「いやぁ、実はこのあと軽い懇親会でもと考えてまして近くのウナギ屋さんを予約してあるんですよ。で、そろそろ時間なので移動しようかなと」
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「申し訳ないです。一日案内していただいた上に、お食事の席までご用意いただけるなんて」
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「いえいえ、お気にせず。せっかくの浜松ですから名物を食べていっていただきたいんですよ。浜松ギョウザもありかなぁと思っていたんですが、それはまた次の機会に。あ、桜坂さん達は大丈夫ですよ。この会議室、まだ押えてありますんで、お話が終わってからゆっくり来ていただければ」
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「い、いや、僕もウナギ……」
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「では桜坂さん、先に行っておりますので。ごゆっくり」
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「はいはい何よそ見してんの! 説明続けるわよ! 有線の話ばかり続いたから次は無線ね。WLX302の無線LAN見える化ツール! これはすごいわよ! そもそも電波という見えない接続手段を解析しようと思ったら−−」
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「あの……ウナギ、なくならない内にいらしてくださいね。私もそれなりに好物なので取り置きできる自信がなく……」
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「いや、いや待ってください! もう説明終了でいいです! ヤマハのよさはよく分かりましたから、僕にもウナギを!」
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「本当に分かってる人間は自分で『分かってる』なんて言わないわ! とりあえずYNEドリル、全問正解するまで今日という日は終わらないわよ! さぁレッツチャンレジ!」
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「もう勘弁してー!」
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