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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第379回

業界に痕跡を残して消えたメーカー SCSIカードで市場を制覇したAdaptec

2016年10月25日 11時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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SCSIがエンドユーザーにも普及
爆発的に売上が伸びる

 Adler氏がCEOになった1986年以降が、Adaptecの黄金期と言えなくもない。まずAppleがMacintoshの全モデルにSCSIを採用したことでSCSI機器の市場がコマーシャル向けにも立ち上がり始めた。

 同様にIBM-PC互換機もSCSIの普及が次第に始まっていく。この市場に対し、Adaptecはホストコントローラーとデバイス側のコントローラーの両方のチップ、およびそのチップを搭載したカードを広く販売していくことで、大きな売上を獲得していった。

 この時期の製品として非常に有名なのが、AHA-1520シリーズやAHA-1540シリーズのSCSI HBA(Host Base Adapter)だろう。

 おそらく読者の中にもAHA-1542Bや、その後継のAHA-1542C/AHA-1542CFを使ったことのある方がまだおられよう。

 AHA-1500番台のカードはISAバスに装着されるFast SCSI(最大10Mbps)のカードである。ちなみにAHA-1510/20/30番台はPIO(Programmable I/O)による転送方式、AHA-1540番台はDMAによる転送方式をサポートする。

 連載107回でも触れたが、ISAバス自身は16bit幅で8MHz(8.33MHzという説もあるが、長くなるので割愛する)のクロックなので、理論上は16MB/秒の帯域を持つはずである。

 ところがマザーボード側のDMAコントローラーが遅いため、実効転送速度は4MB/秒そこそこでしかない。このため、より高速な転送をしたいカードは自前でDMAコントローラーを転送することになった。

 AHA-1540シリーズもこの1つで、実質6~7MB/秒の転送が可能ということで、i386~i486の頃のAT互換機ユーザーにはずいぶん愛用されていたはずだ。

 ちなみに国内に入ってきたモデルは第2世代のAHA-1540B/1542B以降がほとんどで、第1世代のAHA-1540A/1542Aはあまり流通していなかったと記憶している。

 実はこの2つ、型番は近いがカードそのものはほとんど別物である。下の画像はそれぞれのインストレーションマニュアルのジャンパセッティングの図を抜き出したものだが、AHA-1540AはフルサイズのISAカードなのに対し、AHA-1540Bはハーフサイズになっている。

フルサイズのAHA-1540A(左)と、ハーフサイズのAHA-1540B(右)

 AHA-1540Aの時にはまだDMAバスマスターの機能を1つのチップにまとめられず、カードの上に山のようにチップを載せてバスマスター機能を実装していたのが、AHA-1542BではこのDMAバスマスター機能をワンチップに収めることに成功、カードサイズも大幅に縮小することが可能になっている。

 ただこの時代、ISAバスのDMA番号やポートI/Oのアドレス、あるいはメモリーマッピングのアドレスなどはすべてボード上のジャンパピンで設定する必要があり、これを間違えると、例えば他の拡張カードと同じアドレスや番号を指定してしまうと、デバイスドライバーを入れた瞬間に固まるなどいろいろ不都合があった。

 この不都合をなんとかすべく、インテルとマイクロソフトが共同で制定した規格がPNPISA(Plug & Play ISA)で、こうした設定を自働で行なうというものだったが、これがまたうまく動かなかった。

 むしろPNPISAでないほうがまだ解決が楽だったという事態に陥り、「差して動かす(Plug & Play)」ではなく「差して祈る(Plug & Pray)」だなんて揶揄されたりした。

 このあたりはEISAでもある程度解決に向けて色々実装したものの十分ではなく、最終的にPCIの登場で解決した(もっとも初期のPCIではまだ色々問題があったりしており、こなれてきたのはPentium IIが登場した頃だっただろうか?)。

 余談ついでにもう少し説明すると、AHA-1522あるいはAHA-1522AはPIO方式での転送だったので、CPUがi486DXの頃はAHA-1542Bに性能が劣っていたが、CPUがi486DX2あたりになってからは、むしろベンチマークするとAHA-1542Bを上回る性能をたたき出したりした。

 これは、CPUの高速化によりAHA-1542BのDMAバスマスターを上回る頻度でI/Oリクエストを出せるようになったからで、その意味では単純にSCSIコントローラーの性能ではなくシステムの構成で性能が変わるという、ある意味古き良き時代の製品であった。

後継機で処理能力を高速化
Ultra Wide SCSIなどにも対応

 この後、EISA向けのAHA-1740/42、MCA向けのAHA-1640などが登場する。AHA-1542の世代では内部に独自のCISC MCUが搭載されていたが、AHA-1640/1740/1742などではRISCベースのPhaseEngineと呼ばれるコアがプロトコルの処理をするようになる。

 続いてPCI向けのAHA-2740/42やVLバス向けのAHA-2840/2842などがラインナップされるが、こちらにはPhaseEngineをデュアルで搭載して処理性能の高速化を図った。

 処理性能の高速化は、1つはホストバスI/Fの高速化が理由であるが、SCSIバス側の高速化も理由として挙げられる。 初代のSCSI-1は5MB/秒、Fast SCSIで10MB/秒だったが、この頃になるとWide SCSI(16bit/10MHz)やUltra SCSI(8bit/20MHz)、Ultra Wide SCSI(16bit/20MHz)などの新規格が登場し、より転送速度が向上していったことへの対応と考えれば良い。

 SCSIはこの後Ulta 2 SCSIやUltra 2 Wide SCSI、さらにUltra 160/320と進化していき、Adaptecもこれに対応したコントローラーやカードをリリースしていく。

Ultra SCSIカードの「Adaptec SCSI Card 2915LP」

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