旧機種へとソフトを提供する移植ビジネスも開始
主力機種がPC-9801へと移行していくと、大手メーカーとはいえ、MSXなどの旧機種で作品をリリースする余力がなくなってしまう。もちろん主力機種に比べれば売れるだろう本数は小さいとはいえ、せっかく売れるタイトルなのに、そのままにしておくのはもったいない。
「そこで始めたのが移植ビジネスです。「開発メーカーを用意するので、ウチで移植させてください」と頼みに行きました。基本的にはソースを開示してもらうだけで、開発費も何もかからずメーカーとしては旧機種版が出せるわけです」
実際ソーサリアンのMSX版はこうして登場し、かなりのヒット作となった。またこれとは逆に、メーカーが古いタイトルを自力でPC-98x1へと移植した場合、以前のPC-8801版やMSX版がロングテールとなってくるため、それをTAKERUへと入れてもらうことができた。
「旧作をTAKERUに入れておけば、メーカーもサポートで「昔のものはないんですかと」聞かれたときに、「それはTAKERUにありますよ」といえるわけです。そういう業界の便利屋のような使われ方をして、いい関係が築けました」
最初の構想であった、「最新ソフトはすぐに売り切れてしまうけど、TAKERUを使えば売り切れがない」というものからは違う形となってしまってはいたが、最新は無理でもその後のロングテールは取れるという点で、着実に足元を固めていった。
同人ソフトとの出会いと募集
TAKERUで同人ソフトを扱うようになったのは、秋葉原を巡っていて、たまたま目にしたのがきっかけ。こういうのもあるんだと新鮮に感じ、その場で数タイトル購入した。当時はメールアドレスなどは一般的でなかったため、購入した同人ソフトの中に書かれていた連絡先へとTAKERUで売ってみないかと声をかけたのが最初だ。
「同人ソフトを始めたのが1993年ごろでしょうか。これがことのほかよく売れました。これは少し拡大してみようってことになり、当時の同人ソフトの販路を聞いてみたところ、秋葉原のショップかコミケなどの同人即売会がメインでした。そこで、コミケでTAKERUで売りませんかっていうチラシを配ったこともあります」
その後はTAKERU PRESSに募集情報を載せるなどして同人ソフトを集め、多い時には週に100本ほど同人ソフトが集まっていたという。
「送られてきた同人ソフトは、金曜日にまとめて審査していました。箱を2つ用意して、こっちは合格、こっちは不合格といったように分けていましたね。一発芸みたいなものやクリアできないゲーム、公序良俗に反するものは不合格にしていました。合格していたのは3本に1本くらいです。TAKERUで売っている同人ソフトにハズレはない、という風にしたかったので、厳しめに見ていました」
合格した同人ソフトの作者には振込口座の書類や、タイトル、メーカー名、説明文などを記入するような登録キットを送って、その後、TAKERUでの販売という流れになっていた。作者へ支払うロイヤリティは、だいたい40~50パーセント程度。中にはロイヤリティはいらないので安く売って欲しいという人もいて、その場合はメディア代金としてFD1枚200円くらいで販売するようにしていたという。
同人から始めて有名になったメーカーも
メジャーな同人ソフトとなれば、月に数万どころか数十万も売り上げることもあったという。また同人ソフトから出発し、その後ソフトメーカーの設立までしたのが、『メビウスリンク』や『鉄道模型シミュレーター』で有名なアイマジックだ。
「TAKERUで同人ソフトを販売するときの名前は「インダストリアルマジック」になる予定だったのですが、これ、TAKERUの文字数制限で入らなかったんです。そこで「アイマジック」と変更してもらいました」
実は、家のPCでTAKERU登録ソフトをカタログのように見られる『おうちでTAKERU』というソフトも、このアイマジック製だ。店頭でソフトを検索し、説明文を熟読するとソフトを選ぶだけでも時間がかかってしまい、次の人が待ちくたびれてしまうというのが悩みだったが、先に家で購入ソフトを決めていけば、すぐに購入できるというのが狙いだった。この『おうちでTAKERU』はTAKERUで販売したほか、雑誌の付録などへも収録されていた。
惜しまれながらも1997年の2月に終了
1986年の3月から始まったTAKERUも、10年目の1997年の2月についに終了となった。パソコン通信もまだ珍しかったころから始まったソフトのダウンロード販売だったが、1997年といえばプロバイダーが多数登場し、ダイアルアップでのインターネットサービスが普及し始めた頃だ。ソフトのダウンロードやオンライン販売が一般的になるに従い、TAKERUはその使命を終えていった。
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