「メディアの評判が悪いとヒットする法則」とは?
この原稿がアップされている頃は、iPhone 7の実機がユーザーの方々のお手元に届いていることでしょう。キャリアの2年契約がちょうど更新されるiPhone 6/6 Plusユーザーや、アーリーアダプターにとっては楽しいひとときのはず。もしくは『ポケモンGO Plus』が手に入らず、「ちくしょー!Apple Watch Series 2とセットで買ってやる~!」なんて豪快な方もいらっしゃるしょうか…(笑)。
もはや、伝統になりつつある「メディアの評判が悪いと、その製品がヒットする法則」。メディアと一言で申しましても、「大手の…」というか「旧マスメディア系」。もしかしたら、記者が「ライブで(それも深夜の)Appleのキーノートを見られなくて、事前のリーク情報で原稿を仕上げた…」なんてことはサンフランシスコの新作発表に行けない筆者の邪推なのかもしれませんが…。
初代iMacのときは「フロッピーディスクが使えないから売れない」とか、iPodのときも「新しい技術じゃない…」、日本に初上陸したiPhone 3Gでも「絵文字が使えないからダメ」なんて、斜め上のコメントで酷評記事でしたが、結果はご存知の通りです。
筆者の周りでも、イベントのときに「一緒に写真をお願いします…」なんて声をかけてくださる観客のスマホを見ると、だいたい7割ほどがiPhoneユーザー。もちろん、エンターテイメントに興味がある方々のシェアなので、市場シェアとは微妙に一致しないのかもしれませんが…、とにかくそれが実感。
Appleのキーノートを見るポイント
以前は、キーノートは「基調講演」なんて訳されていましたが、最近は「新作発表」なんて分かりやすい日本語にするのがトレンドのようです。あるときは、観客がリアルタイムで会場の写真を含めてツイートしたり、勝手に自力でライブ中継したこともありました。しかし、ここ数年は、Appleが世界に向けて同時ライブ中継するのが定番となってきました。
Appleのキーノートの見どころは、新機能や新しいスペックではなく、じつは観客の反応だと、筆者は思っています。というのも、近年、新機能やスペックは、デベロッパー(開発者)向けのOSの解析やパーツ製造工場からのリークなどで、予想やウワサの的中率が上がってきたからです。そんなこともありITメディアの「ほぼ予想に近い」ことがほとんど。
今回のキーノート、iPhone 7/7 Plusの紹介で客席からの歓声が上がったのは、カメラのデュアルレンズ(今のところPlusのみですが)、光学式手振れ補正、光学式ズーム(Plusのみ)、さらにAppleのワイヤレス イヤフォン「AirPods」が発表されたとき。これはちょっと意外でしたが、「AirPods」が発表されたときは大きな拍手と歓声が上がりました。
もしかしたら、ブルートゥースイヤフォン(ハリウッド映画などに登場する片耳につける電話用のイヤフォン)の浸透、文化の違いがあるかもしれません。昔は「アップルファンが集まる」と揶揄されたキーノートも、WWDC(ワールドワイド デベロッパーズ カンファレンス:開発者向け発表)の名の通り、開発者たちによるフェアな反応にシフトしています。つまり、巨大マーケットに成長したアップルの新商品への期待はデベロッパーたちの死活問題でもあるからです。
日本市場にフィットする新機能、防水防塵、加速するFelica搭載、
雨の多い日本では防水機能は嬉しいですし、Felica搭載(Suicaやおサイフケータイなど)は他社のスマホの後れを取り戻すアドバンテージになるはずです。クレジットカードの代わりになるApple Payは、その仕様、「指紋承認しながらレジでのタッチ」を不便だとする批判もあります(Suicaなどでは指紋承認は不要)。しかし、現状のカード会社が補填してる不正使用が「指紋承認しながらレジでのタッチ」で減少することが予想され、長い目で見れば(手数料の軽減など)ユーザーメリットにつながることから、Apple Payの普及が加速することも予想されます。
iPhoneやApple Watchでのキャッシュレスの買い物について、筆者は以前、「アメリカ標準のNFC type-A/Bが日本でも将来的に普及する」と予言しましたが、今回のiPhone7/7 PlusのFelica搭載で見事に予想をハズしたことになります。少し言い訳をさせてもらえば、「AppleのCEO、ティム・クック氏の新しいAppleのフットワークが日本市場の動きよりも速かった」だけかも…、なーんてね。
Apple Payについては、店舗や決裁を仲介するアップル社がクレジットカード番号を保持しないトークン方式を採用していることから、「顧客のクレジットカード番号流失」なんて事件を防げる。そんな側面も企業のリスクマネージメントにとってはさらに重要になるはず。
そんなわけで「メディアの評判が悪いと、その製品がヒットする法則」、今回も発動しちゃう気がするんですよね…。
前田知洋(まえだ ともひろ)
東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。
著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。
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