「柔軟なデータプラットフォーム」として、幅広い業種にソリューションを拡大していく
機械学習も取り込み適用範囲を拡大するSplunk、CEOが戦略を語る
2016年08月16日 07時00分更新
あらゆるマシンデータを単一のデータリポジトリに収集し、データのアナリティクスや可視化、高速な検索などを可能にするSplunk(スプランク)。近年採用が増えているセキュリティ/SIEM用途だけでなく、柔軟なデータプラットフォームとして、さらに広範な領域での採用を目指している。その鍵の1つは機械学習技術だ。同社CEOのダグ・メリット氏、カントリーマネジャーの纐纈昌嗣氏に聞いた。(インタビュー実施日:6月30日)
ITオペレーション/セキュリティ/IoTの“3本柱”で強い成長を維持
――昨年も貴社幹部にインタビューさせていただきましたが、まずは昨年度のSplunkのビジネス概況を振り返ってみて、いかがでしょうか。
メリット氏:Splunkは強い成長を維持している。2016会計年度(2015年2月~2016年1月期)の総売上は6億6800万ドルと、かなりいい数字を上げることができた。また営業利益(Non-GAAPベース)も、昨年度に続いて2回目のプラスとなる3.8%だった。
引き続き、新年度の第1四半期(2016年2月~4月期)も業績は好調で、総売上は1億8600万ドルと、前年同期比で48%の伸びとなっている。Splunkでは、どの四半期でも常に「対前年比で45%以上の成長」を維持できるよう心がけている。
――1年前のインタビューでは、Splunkのビジネスは「大きく3つの分野で構成されている」と伺いました。それぞれのビジネスの売上比率に変化はありますか。
メリット氏:Splunkのビジネスを構成する「3つの柱」に大きな変化はない。毎四半期の売上比率も、「ITオペレーション」が40%、「セキュリティ」が40%、「IoT、その他」が20%と、大まかに言って変わっていない。
――昨年12月のインタビューでは、国内市場に投入されたばかりの「Splunk User Behavior Analytics(UBA)」のお話をうかがいました。その後、国内市場におけるUBAへの反応はいかがですか。
纐纈氏:国内顧客からのUBAに対する期待値は大きい。どんな顧客においても、現在はセキュリティアナリストの人材不足が問題になっている。そこで、大きな人的リソースをかけずに済むようになるのではないか、という期待がUBAに対してあるわけだ。すでに、具体的にどう導入していけばよいかという検討を行っている企業も増えている。
UBAの導入を検討しているのは、セキュリティサービスを顧客に提供しているサービスベンダーだけでなく、自ら社内でSOC(Security Operation Center)を構築しようとしている大手企業も含まれる。SOCを効率するうえで、どれだけ効率化できるかという観点から、UBAに興味を持っていただいている。
メリット氏:サイバー攻撃の高度化と複雑化に伴って、多数のセキュリティベンダー製品を導入しなければならなくなっている。ある調査では、エンタープライズ1社あたり、160社もの異なるベンダーセキュリティを使っているというデータすらある。Splunkは、あらゆるデータストリームを柔軟に取り込み、アナリティクスを実行できるというユニークさを持っており、そこが他社に真似のできない強みとなっている。
Splunkプラットフォーム上で機械学習のフレームワークを提供、活用を促進
――UBAにも機械学習技術が取り込まれていますが、機械学習は極めて汎用的な技術です。セキュリティ以外の分野も含め、Splunkとして、機械学習技術の活用にはどのように取り組んでいますか。
メリット氏:Splunkにとって、機械学習は大きな可能性をもたらすものであり、取り組むべき課題だと捉えている。すでにUBAのほか、ITオペレーション分野では「Splunk IT Service Intelligence」という製品で機械学習技術を活用している。(Splunkの3つの柱である)ITオペレーション、セキュリティ、IoTのそれぞれにおいて、機械学習を適用することで、顧客がいかに迅速に「価値」を見いだせるかを考えなければならない。
機械学習に関して、Splunkではサードパーティに対して機械学習のフレームワーク、およびそのフレームワークの“コンテンツ”(アルゴリズム)を提供している。アルゴリズムについては、Splunk自身だけでなくサードパーティがコミュニティに提供しているものも数多くある。
これらを活用して、サードパーティが開発した1000以上のSplunk Apps(アプリケーション)がすでに公開されている。機械学習の適用領域は広範にわたるが、ツールキットを利用して顧客自身やパートナーがアプリケーションを開発して、その価値を享受できるわけだ。
たとえば「Splunk App for AWS」というアプリでは、CloudWatchやBillingなどAWSのサービス全体からデータを取り込んで、ユーザーが契約中のAWSサービスが有効活用できているか、無駄なインスタンスが立ち上がっていないか、などを診断してコスト削減に役立てることができる。
IoTソリューション提供のためには各業界のSIパートナーとの協業強化が必須
――今後はさらに、IoT分野でのSplunk活用が期待できると思います。どのような戦略を考えていますか。
メリット氏:Splunkの柔軟なデータプラットフォームは、もちろんIoT分野でも活用できる。これまで、ITオペレーションやセキュリティの目的でSplunkを導入してきた顧客が、同じデータリポジトリにIoTデータも格納して、マーケティングやセールス、製造などの業務に活用できることに気づき始めている。
現在は、産業機械のデータを取り込んで活用するケースが多い。そして多くの顧客が、GEやBoschの産業用ソリューションと一緒にSplunkを導入し、アナリティクスや可視化の機能でそれらを補完する役割で活用している。
ほかの分野と同様に、IoT分野においてもパートナーとの協業が欠かせない。製造、電力、公共、自動車、エネルギー/石油など、各業界の現場ニーズを把握しているパートナーと手を携えて、そうした現場でSplunkのアナリティクス能力を活用していけるようお手伝いしていきたい。
纐纈氏:国内のIoT事例としては、日立ビルシステムがエレベーターの稼働データを使ってメンテナンス業務を効率化した事例がすでに公開されている。また最近は、電力系の企業で、Splunkを活用したいというニーズが高まっているようだ。われわれ自身は電力業界について詳しいわけではないので(笑)、そこは当然、その業界に詳しいSIパートナーと一緒になって提案を進めていくことになる。
Splunkはあくまで“柔軟なデータプラットフォーム”であり、この上でどんなソリューションを組んでいくのかは、顧客のビジネスをよく理解しているSIベンダーの役割。われわれは、そうしたSIパートナーとの協業を通じて、エンドユーザーに「価値」を提供していくという戦略だ。