7月末、中国のLeEcoが米国のテレビメーカーVizioを買収することを発表した。買収金額は20億ドル。Vizioについては数年前に米国市場での躍進を耳にした人もいるかもしれないが(日本メーカーの苦戦とともに)、日本ではともにあまりなじみのない名前だろう。だが、LeEcoの動きはスマートフォン市場にも関係がある。さらには携帯電話のみならず、自動車までを”端末”ラインナップに揃えようという野心的な企業だ。今回はそのLeEcoについて取り上げたい。
”中国のNetflix”、LeTVとしてスタート
LeEcoという企業名を初めて聞いたとしても不思議ではない。そもそもLeEcoは少し前までLeTVとして中国を中心に展開してきた。2015年のテレビの販売台数は約300万台。販売チャネルがオンラインのみという点を考慮すると悪くない。2016年には1500万台を目指している。
創業は2004年。Leshi Internet Information & Technology(楽視網信息技術)という社名で、2010年に深セン証券取引所に上場している。創業者で会長を務めるJia Yueting氏の想定資産は73億ドル。Forbesの世界の億万長者リストでは41位にランクインしている。
だが、Jia氏はTVメーカーとして創業したのではない。LeTVは動画サービスサイト(http://Letv.com/)として誕生し、中国の映画監督Zhang Yimou(張芸謀)氏との提携などコンテンツを強化させてきた。同社の動画プロダクション事業はLe Vision Picturesとして運営されており、米国や欧州のコンテンツ産業との提携も進めている。
コンテンツから始まるエコシステムを提供
LeTVのLeは「楽しい」「幸せ」の意味だそうだが、LeEcoのEcoはエコシステムの略だ。その名の通り、エコシステムの構築と運用を事業の核とする。
エコシステムの中心はコンテンツだ。Wikipediaによると、すでにletv.comは10万件以上のTVドラマ、5000件以上の映画があり、一日のページビューは2億5000万件、月間ユーザー数は3億5000万人という。「LeEcoがやろうとしているのは、コンテンツの販売だ」とStrategy Analyticsのアナリスト、Woody Oh氏は語る。
letv.comは”中国のNetflix”とも呼ばれているそうだが、letv.comのコンテンツ拡充とともに、同社のここ数年の戦略はコンテンツを利用できる端末ラインナップを増やすことにある。TVに加えて2015年にスマートフォンに参入、「Le 1」「Le 1 Pro」「Le Max」、そしてそれぞれの2世代目となる「Le 2」「Le 2 Pro」「Le Max 2」と、「Le」ブランドで展開している。
なかでも4月に発表された最新のハイエンド機種「Le Max 2」の上位モデルでは、WQHD解像度の5.7型液晶と21メガ(イン8メガ)のカメラを搭載、Android 6.0を採用する。チップはSnapdragon 820でメインメモリーは4GBか6GB。バッテリー容量は3100mAh。これらのスペックの中で際立つのがUSB Type-Cの端子だ。またヘッドフォンジャックのないスマートフォンでもある。超音波指紋認証スキャナーも初とのこと。
Le Max 2は2000~2500元程度(約3~3.8万円)で提供されるが、スペックやiPhoneライクな外観だけが人気の理由ではない。ユーザーは追加料金を払うとLeEcoと提携企業のコンテンツを見ることができる。ちなみにLeEcoは同じく中国のスマホベンダーCoolpadの株式も取得している。共同開発のハイエンド機種が発表されるという憶測もある。
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