国内導入企業が明かす「活用の心得」、OpenStack Days Tokyo 2016基調講演(前編)
JFEスチールがグループクラウドにOpenStackを採用した背景
2016年07月13日 07時00分更新
7月7日の「OpenStack Days Tokyo 2016」では、「エンタープライズに聞くOpenStack活用の心得。なぜOpenStackの導入を決めたか。」と題する基調講演が行われた。国内のOpenStack導入企業からJFEスチール、NTTドコモ、富士通の各社が登壇し、導入の経緯や活用の実態を紹介した。
本講前編ではエンタープライズ領域におけるOpenStack採用の現状やJFEスチールの講演の模様を、また後編ではNTTドコモと富士通の講演の模様をお伝えする。
OpenStackは“アーリーアダプター”からエンタープライズへ
司会進行役を務めた日本OpenStackユーザ会会長の水野伸太郎氏は、今回の基調講演では「エンタープライズ」と「破壊的革新と多様性」をキーワードとしたと説明する。
エンタープライズ(大規模企業/組織)領域におけるOpenStack導入は、この1、2年で急速に進んできた。1日目の基調講演では、OpenStack Foundation COOのマーク・コリアー氏が、すでに米国Fortune 100企業の半数がOpenStackを採用していることを紹介している。
エンタープライズ領域における採用の加速は、OpenStackの技術的/市場的な成熟度が高まってきたことを示す指標だと、水野氏は説明する。付け加えるならば、OpenStackが半年ごとのリリースで着実に機能を増強し、仮想サーバーだけでなくデータセンターインフラ全体をカバーする能力を持つようになった結果でもあるだろう。
OpenStack Foundationの年次ユーザー調査によると、2014年段階ではまだ、比較的規模の小さい“アーリーアダプター”の導入が多かった(500人以下規模の企業/組織が過半数)。しかし今年(2016年)の調査では、1000人以上の企業が過半数となり、1万人以上の企業だけに限っても30%強を占めるまでになっている。エンタープライズへの「普及期」が始まっていると言えるだろう。
もう1つの「破壊的革新と多様性」は、OpenStackの導入をビジネス的な成功につなげるためのキーワードだと、水野氏は説明する。今年4月の「OpenStack Summit Austin」では、プライベートクラウド基盤としてOpenStackをグローバル導入したフォルクスワーゲンやAT&Tなどの先進的な成功事例が紹介されたが、そこからは「単にOpenStackというソフトウェアを導入するだけでは、真の価値を手に入れることはできない」という結論も導かれるという。
「(OpenStackの導入だけでなく)業務フローを含め、抜本的な見直しと革新を進め、さらにオープンソースの多様性を受け入れる。そういった取り組みを成し遂げてこそ、真にOpenStackを導入した『成功事例』だと言える。日本でのそうした成功事例を、本日のキーノートではお届けしたい」(水野氏)
JFEスチール:「もはや手が加えられない」ほど複雑化したITインフラを統合へ
国内導入企業として最初に登壇したのは、JFEスチール IT改革推進部の渡邉健太郎氏だ。
JFEスチールは、日本鋼管と川崎製鉄の鉄鋼部門を統合するかたちで、2003年4月に発足した。東日本(千葉、京浜)、西日本(倉敷、福山)の製鉄所、知多の鋼管専門工場と、合計5地域に国内製造拠点を持つ。
同社では、「迅速に変化に対応できるグローバルレベルのIT活用先進企業」になるというITビジョンを掲げ、IT改革を進めている。しかし、ここで最大の課題となったのが、これまで個別に構築されてきた製造システムやITインフラだった。
「(合併した2社、製造拠点5カ所の)それぞれが、それぞれの思想でシステムやITインフラを作り上げてきてしまった。30年も使っているようなプロプライエタリな基盤上で、個別に独自アプリケーションが作り込まれている。古い構造で複雑化しており、もうこれ以上は新規に手を加えられないような状態だ」(渡邉氏)