やはり店員の人によって「熟練度」が異なる
2つめにヒットした店舗はマクドナルド横浜西口店で、繁華街の中心部ではあるものの若干駅からは離れている。伊勢佐木町店とは異なり、1階の外側に注文用のカウンターがずらりと並び、客席は同じビルの別フロアーという繁華街型の店舗構成になっている店が特徴。決済端末の並びは伊勢佐木町店と同じだが、こちらは過去にも利用者がいたのか店員の決済端末の操作はスムーズだった。
ただ、こちらが「Apple Payを使いたい」と最初に告げると先方には通じず、次に「(読み取り端末のボードにあるVisaのマークを指して)ここに書かれているpayWaveを使いたい」と告げると「カード決済ですね? カードを渡してください」と説明された。さらに携帯を見せて「かざす」動作を行なったことで、先方もようやく理解して「NFC Pay」を選択し、決済が完了した。
マクドナルドのNFC決済対応は
Apple Pay日本上陸の先鞭となるか
今回確認できたのは横浜市内のマクドナルドのわずか2店舗のみだが、同社がクレジットカード決済とNFC決済の両対応を進めているのは興味深い。一般に、NFC決済はICチップ付きクレジットカードである「EMV」の「EMV Contactless」と呼ばれる仕組みでオプション扱いとなっており、店舗へのクレカ決済(EMV)導入とNFC決済導入は不可分な存在となっている。EMVのみの導入も可能だが、NFC決済を導入する場合には必ずEMVがついてくる。
米国では2015年10月に「ライアビリティ・シフト」と呼ばれる小売店でのEMV対応が義務化されたが、この際に「EMV Contactless」の導入を広く喧伝していたため、EMV普及と合わせて非接触のNFC決済対応店舗が一気に増加したという背景がある。
日本でも経済産業省が中心となって2020年の東京オリンピックまでにEMVを義務化する法制度の準備が進んでいると言われているが、推進方法しだいでは一気にNFC決済が普及する可能性を秘めている。
NFC決済のみが可能な現状のApple Payの場合、インフラが整備されていない日本国内ではほとんど利用できない。2016年秋の国内上陸を目指して関係者らがインフラ整備を進めているが、なかなかその成果が表面化してこないのが現状だ。国内レストランチェーンで最大手となるマクドナルドで、試験導入ながら展開が進み始めたのは大きな一歩だと言えるだろう。ただ、本稿で紹介した試験導入の概況と、今後の展開計画について日本マクドナルド広報部に問い合わせてみたところ
「(海外からのお客様など)利便性を考慮して一部店舗でクレジットカード決済を導入している例はあるが、今回の(NFC決済)対応もその一環であり、会社全体として(直近の)導入計画が進んでいるわけではない」
とのことだった。おそらくは実験的に導入が進んでいるものではあると思うが、今後上記の2店舗以外にも新たにNFCベースのプラットフォーム決済に対応する店舗が登場する可能性があり、注意深く見守りたい。
また、Apple Payなどの海外発行のクレジットカードを使うサービスでなくても、このマクドナルドのNFC決済が利用可能なことが確認できている。
同業者の平澤寿康氏と小山安博氏の協力をいただいて、国内発行のクレジットカードを使った「payWave」と、ドコモが提供しているiD/NFC(旧名「iD/PayPass」)の2種類を試してもらったところ、後者はiD/NFCの場合は決済が正常に終了しなかったものの、前者の「payWave」は問題なく動作しており、すでに国内外問わずに非接触のクレジットカード決済が可能になっているようだ。iD/NFCはもともと国内利用では決済処理が通らない仕様になっているため、この場合はiDを利用するようにしたい。