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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第355回

業界に痕跡を残して消えたメーカー MITSを追いかけたIMSAI

2016年05月09日 11時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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IMSAI 8080の構成と価格は
Altair 8800とほぼ同じ

 IMSAI 8080の基本的な構成はAltair 8800と同じである。バックプレーンはS-100バス(キットは6スロットで、別に22スロットオプションが提供された)で、フロントパネルに入出力のLEDとスイッチが配され、標準状態でのI/Oはこれだけ、というのもAltair 8800と変わらない。

 ちなみにCPUボードにメモリーが一切搭載されていないのは、Altair 8800よりも潔いかもしれない。ただしスイッチはAltairよりもはるかに耐久性が高いものが採用され、またS-100バスのスロットはフロントパネルと直交する形で奥に伸ばされた。

 また電源も、5V/30Aと±16V/3Aが提供されており、拡張カードを増やしても電源供給が不安になることはなかった。Altair 8800は控えめに言ってもホビー向けの域を出ることはなかったが、IMSAI 8080はこれをビジネス向けに耐える品質に高めたもの、としてもいいだろう。

 また元々がソフトウェアの会社だったため、ソフトウェアにも気を配った。マイクロソフトはIMSAI 8080向けにもBASICやFortranを提供したし、やや後になるが1977年にはDigital Researchと契約してIMSAI 8080向けにCP/M Version 1.3のライセンスを受け、これをカスタマイズしたIMDOSと呼ばれるOSの提供も行なわれた。これもIMSAIのニーズを高めることに貢献した。

 1976年に入り、IMSAI 8080の出荷は非常に順調であった。もはや当初のコンサルティング事業はほとんど行なわれておらず、これもあって社名をIMSAI Manufacturing Corporationと改める。

 1977年には社員数が170名を超え、会社もビル2つと倉庫2棟を占めるほど大きくなった。当然ながら製品ラインも拡充された。まずはPCSシリーズと呼ばれるもので、1996年にはPCS-80/21・PCS-80/22を、1977年にはPCS-80/10・PCS-80/14・PCS-80/15・PCS-80/30・PCS-80/35・PCS-40/42/44が追加される。

PCSシリーズ。当時のPCSシリーズのカタログより

 上の画像はPCS-80/30のものだが、3MHzの8085を搭載し、2.25KBのオンチップRAM(4/16/32/64KBのRAMボードと3KBのROMが拡張可能)、シリアル/パラレルポート、80行×24桁表示が可能なCRT、キーボードなどをパッケージ化したものだ。

 さらに、5インチのFDDまで一体化したVDPシリーズも発売され、こちらもVDP-40/42/44やVDP-80/32(32KB RAM)・VDP-80/64(64KB RAM)などのラインナップが提供される。

VDPシリーズ。PCSシリーズよりもCRTが多少大きい気がする(表示文字数そのものは変わらない)

 上の画像は1978年のVDP-80のデータシートの表紙であるが、当時のビジネス向けシステムに求められる機能と要求をほぼひとまとめにした形だ。後はプリンターだけ、用途に応じてつなげば完成といったところである。

 価格そのものは9995~1万2995ドル(FDDやRAMの構成によって変化あり)だが、そもそもIMSAI 8080をベースに必要なものを追加していくと、おおむね同程度の価格になるうえ、ホビー向けではなくビジネス向けであることを考えたら、妥当な金額の範囲だろう。

 昨今のPCの価格からしたら考えられないかもしれないが、例えば、価格も時代も違うが日本でもNECのPC-9801(初代)に漢字ROMや高解像度モニターやFDDを全部純正でそろえると、やはり軽く100万を突破していたことを考えれば、そう高いとは言いがたい。

 こうしたオフィス向けシステムとは別に、8048をベースとした小型の8048 Control Computerや、8048 Express Control Computerといった組み込み機器向けシステムも1977年に発表するなど、同社は完全にコンピュータ製造メーカーに生まれ変わっていた。

8048 Control Computer。名前の通り制御用で、例えば温度やモーターの回転数などの制御に向けたシステムだった

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