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VRおじさんの「週刊VRかわら版」 第6回

私は届いてません

あなたのOculus Riftは届きましたか?

2016年05月08日 10時00分更新

文● 広田 稔 編集●飯島恵里子/ASCII.jp

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VR業界の動向に日本一詳しいと自負するエヴァンジェリスト「VRおじさん」が、今週のVR界の出来事をお知らせします!

「求めよ、されば与えられん」だとよかったのですが、今は待つしかない!?

 どもども!! VRおじさんことPANORAの広田です。今週はゴールデンウィークだっため、国内はVR系のニュースが目立ったものはありませんでしたが、海外は別。5月7日、NVIDIAが発表した「GeForce GTX 1080」(関連記事)もVR業界にとってビッグニュースですが、Oculus VRのニュースをまとめてみました。


お祭りムードに急ブレーキが……

 唐突ですが、日本でOculus Riftを注文された方々は、お手元に製品が届いておりますでしょうか? 製品版のOculus Riftは、今年1月7日の午前1時からプレオーダーを受け付けて、3月28日より出荷をスタートしたというのは、この連載の第1回で語ったとおりです。クラウドファンディング「KickStarter」で出資してくれた方々に無料で製品版をプレゼントするという粋な計らいがあったり、プレオーダー1人目に創業者のパルマー・ラッキー氏が製品版を手渡しに行くなど、当初はかなりのお祭りムードでした。

 しかし、その後一転して、Oculusから4月頭に発送されたメールがユーザーに衝撃を与えます。なんと予期せぬ部品不足に対応するために、予定していた出荷を遅らせるとのこと。代わりに送料を無料にするという措置がとられましたが、その後、2月からプレオーダーを受け付けていたPCとのバンドルモデルを注文した人のほうが、早く出荷されるという謎の現象が起こってさらに雲行きが怪しくなります……。

後に始まったプレオーダーのほうが先に届く謎

 さらに4月末、日本向けのOculus Riftには「各種規制により日本で流通できない状態」という理由で「Xbox One ワイヤレスアダプター」が同梱されないことが明らかになりました(PANORAに寄稿した記事)。おそらく技適マークの取得ができなかったものと思われますが、なぜ発売後1ヵ月のこのタイミングで判明したのか。

 さらに追い討ちだったのは、今週7日より米家電量販店の「Best Buy」にてOculus Riftのデモを開始し、数量限定ですが店頭販売も始めるというニュースです(PANORAの該当記事)。ここでもプレオーダーした人向けに、店頭で製品をゲットした場合、バンドルソフトや下半期に発売を予定している、ハンドコントローラー「Oculus Touch」の優先予約などのプレオーダー特典を、そのまま移行できるという措置がとられましたが、そのニュースを報じたOculusのブログ記事には「何のジョークだ?」といった辛辣なコメントが並びます(しかも北米在住の方々から)。

 ちなみに「VR猛者」も多い筆者のTwitterで「Oculus Rift届いた?」というアンケートを取ってみたところ、回答数82人のうち届いたのは17%(14人)。一方で初日にプレオーダーしたけど、まだ届いてないという方が62%(51人)を占めました。ちなみに筆者も初日プレオーダー組で、CESに向かう飛行機を降りた1月7日の午前4時44分に注文しましたがまだ届いてないです(涙)


新COOの合流で製造が安定化?

 量産におけるトラブルというのはKickStarter発のプロダクトではよくある話で、出荷が1、2年遅れるというのもザラにあります(この辺の難しさは以前、Cerevoの岩佐氏にインタビューしました)。KickStarterでガジェットを漁っているアーリーな方々にとっては「またか……」という事案だったものの、今回はFacebookという後ろ盾があって、期待が膨れあがった上での「製品版」だったため世間の捉え方も大きく違ったようです。

 Oculusにとっては、AmazonやBest Buyなどの各所を立てる意味があったのかもしれません。一方でコアなファンほど、この1ヵ月に立て続けに起こったトラブルに失望を深めた人も多かったのかも? 実際に製品版のOculus Riftを触ってみると、表示のシャープさ、軽くてヘッドホン付きで運用しやすいなどのよさを実感できるだけに、別の面で損しているのが残念です。

 ほかのVRヘッドマウントディスプレーを見てみると、HTCはスマートフォンで培った量産技術があるせいか、4月頭に発売になったHTC ViveでもOculus Riftより早く届いたという話が聞かれます。同じOculus Riftと韓国のサムスン電子が共同開発した「Gear VR」も昨年に無事販売がスタートし、米国ではGalaxy S7にバンドルされるという大盤振る舞いができるほど製造が安定しています。

 こうした事態をOculusも重く見ているのか、今週6日、Oculus VRはCOO(最高執行責任者)として、腕時計型フィットネス端末を手がける米Fitbitよりハンス・ハートマン氏を迎えることを発表しました(PANORAの該当記事)。COOといえば、故スティーブ・ジョブズ氏がCEOだったときのアップルで同役職を務めたのが現CEOのティム・クック氏でした。市場の需要を見極めて、的確に製造と在庫の管理をした彼なくしては、アップルは黄金時代を築くことができませんでした。ハードの分野に長けた人材が入ることで、Oculusも今後、ビジネスチャンスに合わせて的確にプロダクトを提供していけるようになる……と信じたいですね。


広田 稔(VRおじさん)

 フリーライター、VRエヴァンジェリスト。パーソナルVRのほか、アップル、niconico、初音ミクなどが専門分野。VRにハマりすぎて360度カメラを使ったVRジャーナリズムを志し、2013年に日本にVRを広めるために専門ウェブメディア「PANORA」を設立。「VRまつり」や「Tokyo VR Meetup」(Tokyo VR Startupsとの共催)などのVR系イベントも手がけている。


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