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これを、こうじゃ

アパホテル社長が人工知能になった Slush Asia 2016

2016年05月13日 18時01分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)

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 アパホテル元谷芙美子社長が人工知能になった。

 人工知能アパ社長に会えるのはスタートアップイベント「Slush Asia 2016」。5月13~14日の2日間、千葉・幕張メッセで開催している。フィンランド本国のSLUSHは世界最大のスタートアップイベントとして知られている。

アパ社長が1人、アパ社長が2人

人工知能と化したアパ社長

 人工知能アパ社長はフロントの受付係。マイクを使ってチェックインをお願いしてみたところ「Check in」を「Chicken」と聞き間違えるミスが。「Check in please」とゆっくり言うと、今度は「Chicken Fries」と間違えていた。

 しかし、さすがに社長もプロ。こちらから聞きとれたのはChicken Friesにもかかわらず「Do you have a reservation?」(ご予約はされていますか?)と宿泊の確認に移り、無事にチェックインの手続きを進めていった。

アパ社長は「チェックインプリーズ」を「チキンフライ」と間違えながらも手続きを進めた

 からくりとしてはチャットボットの裏側に人間がいて、会話が乱れたときだけフォローにあたる仕組みだ。フォロー内容は機械学習に回される。OJT研修のようなイメージであることから、開発元では「MINARAI」システムと呼んでいる。

 人工知能アパ社長を開発したのは2012年設立の人工知能ベンチャー・ネクストリーマー。ふだんは大手自動車メーカーなどから依頼を受けて人工知能システムを開発している企業だ。向井永浩CEOがたまたまインドで元谷社長に会い、人工知能化の許諾を得て、社長をチャットボットにすることに成功した。「次はジョンデジ万次郎を作りたい」と言っていた。高知に研究拠点があるらしい。

 会場で説明をしていたアパホテルの女性従業員は、最近は訪日外国人客も増えていることから「まだシステムとして導入しているものではありませんが、こうしたシステムがあると助けられる場面があると思います」と話していた。

 「元谷社長には似ていると思いますか」という質問に対しては「かわいいと思います」と話していた。

ネクストリーマーの展示。甲冑は顔を認識して動き、観覧客を怯えさせていた

 Slush Asiaはフィンランド本国のSlushを見事に模したもの。スモークマシンの霧に包まれ、赤い照明に照らされた会場は薄暗く、クラブイベントのような雰囲気。Slush Asiaと書かれたちょうちんを天井から提げているのが日本らしい。

 スタートアップの事業紹介(ピッチ)、有識者による先進技術やビジネスに関する講演(キーノート)、スタートアップが製品を紹介している展示会場(デモエリア)が見どころ。食べもの・飲みものの出店も立っていてお祭り的だ。

Slush Asia会場。スモークがたかれて妖艶な雰囲気

レーザーまぶしいキーノートエリア。「映画のスパッて切れるやつだ」という声が聞こえて怖くなった

スタートアップが製品を紹介しているデモエリア。手前に見えているのは月面調査機HAKUTO

独特のランプシェードがかぶさったミニピッチエリア。本国のSlushで見たのとおなじだ

ピッチエリア。Pepperを使ったサービスをプレゼン中

 キーノートではちょうどDeNA南場智子元社長が登壇しているところに通りかかった。「ちょっと緊張してます」「なぜですか?」「英語なので……」と、南場元社長は少しおずおずと英語で受け答えをしていた。

キーノートエリア。ちょうどDeNA南場智子元社長が登壇しているところだった

「ナーバスで……」と南場元社長。英語でのインタビューには不慣れな様子だった

 デモエリアでは、ジェリーウェアの「wordee」がおもしろかった。丸っこいマウスのようなものを動かすと、蓄光マットに光の字や絵が描ける。スマートフォンのアプリとつながり、教育おもちゃとしても使える。

 もともとはローラーブレードの靴につけるために開発をしていたが、床をすべて蓄光素材にするのはたいへんだということで、まずは机上で遊べるおもちゃから作りはじめたとか。7月にもクラウドファンディングをはじめ、1万円を切る価格で製品化をねらっていきたいとのこと。3000円台に落ちないだろうか。

デジタルおもちゃwordee。ベイマックスのようでかわいい

光で字が描ける。マウスっぽい見た目でも「猫」とはこれいかに

 展示会場ではフィンランド企業ノキアが「OZO」を展示していた。OZOはディスプレーで撮影中の映像を確認しながら360度を撮影できるVRカメラ、日本にもちこまれるのは初めてだ。OZOで撮影した動画はGear VRで見られるようになっていて、口をポカーンと開けたまま周囲を見回すお客さんの姿が印象的だった。

 いまのノキアは携帯電話会社ではなく、旧シーメンスグループが主体となったネットワーク会社。次世代無線通信技術「5G」の推進役だ。OZOのようなVR技術も、屋外でVR映像を観賞するためには5G回線が必要だからという理由で進めているそうだ。ちなみにノキアは今年で151周年というご長寿企業だ。

ノキアブース。Mobile World Congressでも使ったブースを空輸した。エコロジーというが費用が気になる

VRカメラOZO。なかなかいいファンネルだ

映像を確認しながら撮影できるリアルタイムレンダリングが特徴

 スタートアップだけではなく大企業も出展している。たとえばグーグルはエイプリルフールにつくった「Google日本語入力物理フリックバージョン」を展示していた。さすがに入力はできないがカチカチできて楽しかった。

Google日本語入力物理フリックバージョン。カチカチできた

 Slush Asiaはテクノロジーのお祭りだ。参加費用はちょっと高いが、いろいろな出会いがおもしろい。アパ社長の人工知能も待っている。


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盛田 諒(Ryo Morita)

1983年生まれ、記者自由型。戦う人が好き。一緒にいいことしましょう。Facebookでおたより募集中

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