地元のハッカソンに地元の人が来ない理由
内藤:今日はいろいろ話聞いてきましたが、横須賀の課題って、人口流出よりも、老年化率が高いことだと思っています。私の両親も池上に住んでいますが、地元の小学校は統合されて、すでにない。統合されても、1学年で3クラスくらいありません。
水野:ある会計士に聞いたら、コンビニができると、周りの店が10店舗くらいはなくなるそうです。で、コンビニも儲らないと、廃業してしまう。そうなると、お年寄りは買い物ができなくなる。一方で、駅前も地権者が複雑で、開発ができない。
大谷:せっかく人口がいるのに、大型マンションや商業施設などが建ちにくいんですね。そうなると、地元の足となっている京浜急行とかも、会社として横須賀の現状は無視できないんじゃないですか?
相澤:京急もけっこう深刻だと思います。昨年度は創業以来初の赤字が出て、三崎口から先の延伸と沿線の宅地開発を凍結しましたからね。
水野:たとえば、横須賀の先の三浦市は消滅可能性のある自治体としては、より事態が深刻なので、いろいろチャレンジしています。その点、横須賀は中途半端に幸せなんですよ。地方創生って本質的には経済をいかに回すかが重要なんですが、横須賀の中でもその議論は本格的にはなされていない感じがします。
相澤:先日、ヨコスカバレーで初めてのハッカソンをやったんですけど、横浜と東京から人は来たけど、横須賀の人は来なかったです。でも、横浜だと地元の人が集まるんです。ハードルの高さ、リテラシの差を痛感しました。
大谷:午前中にコワーキングスペースを取材しましたが、そこの小坂さんも横須賀のリテラシの低さは指摘していましたね。
水野:うーん。2~3年は土台作りだと思います。正直、即効薬はない。単年度予算で地方創生ができれば、どこでもやってます。
土屋:予算も厳しいし、目に見えたモノを作らなきゃいけない。
水野:新しいことやろうと思ったら、日本は規制や既存のしがらみがあってなかなか難しい。私も数十年前に携帯電話の試験をやろうと思ったら、法規制で難しかった経験がある。今でも「ドローンをやれやれ」というわりにはすぐに規制がかかってしまうでしょ。でも、3Dプリンタでも、ドローンでも、IoTでも、どれか横須賀で先んじればいい。絶対に横須賀でできるはず。ドローンで横須賀変えるという熱い人、ヨコスカバレーにもいますからね。
相澤:こういう取り組みって、今のところ福岡の高島市長に全部持って行かれてますよね(笑)。
水野:横須賀がプライオリティを持っている部分っていっぱいあるんですけど、それを見失っているんですよ。ITはわかりやすいですけど、特定の産業を引き上げなければならないことってあるんです。それを公平にやろうとするから、難しくなるんです。
まさかの吉田市長飛び入り!ヨコスカバレーへの思いとは
相澤:隣から聞き慣れた声が聞こえてきたんだけど、なんか吉田市長来た?
吉田:みなさん、おつかれさまでーす! 15分くらいだけど寄ることにしました。
相澤:おつかれさまです!本当に来てくれて、ありがとうございます。
吉田:いやあ、20年ぶりに内藤と呑むなんてね。弓道部の後輩なんですよ。
内藤:先ほどまで同席していたうちの広報が、「吉田市長の前だと、内藤さんがいきなり部活の後輩モードになって面白い」と話していました(笑)。
吉田:でも、20年も経って、タメ口聞いていたら、横須賀市長は礼儀を知らないとか言われたら、どうしようかと話してたんだよ(笑)。
大谷:先ほど内藤さんも、「吉田先輩は僕が池上出身とかよく覚えてたよなあ」と驚いていました。
内藤:昔、吉田先輩と呼んだら、「オレのことは雄人と呼べ」と言ってたの思い出しました(笑)。
吉田:ユーティー、ケンちゃん、ツッチーとか、ヨコスカバレーのボードメンバーはみんなあだ名で呼ぼうというのもそこからだね。いやあ、内藤も偉くなっちゃって。TISさんもそろそろ横須賀にコミットしないとねえ。
内藤:本当にそうです。うちの会社も「知的で感性豊かな『ゆとりある生活』を実感できる社会の創造に貢献します」という目標があるので、いろいろな形で関わらせてもらいたいなと。
大谷:先ほど見てきた谷戸であれば、車が入れないから、ドローンでモノを運ぶとか、ITでできることいっぱいあるんですよね。でも、自治体でハッカソンやるとか、スタートアップ支援しているところって日本全国で本当にいっぱいあるんです。普通にやっていたら、埋もれてしまう。どうやって横須賀ならではの特色を出せるか、すごい重要だと思います。
相澤:その点、横須賀って空き家や谷戸、高齢者、雇用など、とにかく課題が山積している。そして、個人がそれらの課題解決に関われるし、やったことが効果として目に見えてくる。たとえば、うちの谷戸も火曜日にだけ開くお菓子屋さんができて、谷戸のおばあちゃんが集まって、みんなでお茶を飲むんです。それが地元の人の楽しみになってる。すごくいいなあと思います。
吉田:相澤君にはいつももどかしい思いをさせているけど、プログラミングを学んでもらって、きちんと仕事にするという教育の分野はもっともっと拡げていきたい。できれば、普通高校に技術科を新設して、高専並にプログラミングできる環境を作っていきたいなと思っています。
水野:でも、就職するために横須賀の外に出てしまうというのが問題ですよね。
吉田市長:高校を卒業して、建設業に携わるみたいなブルーワーカー的な流れをITで作ってもいいのではと思います。相澤君のいた岐阜の大垣はどんな感じなの?
相澤:教え子が就職する時に、その成果を問われますね。うちにも一橋大学行った秀才がいて、オレの後継者として育ててきたんですけど、先日渋谷のIoTベンチャーに就職することが決まってしまった。住んでいるところも、横須賀の舟越から恵比寿のおしゃれなところに引っ越しやがったんです。でも、そいつには1ヶ月に1回横須賀に戻って、地元の若者に教えることを約束させたいんです。地域活動をコミットさせることで、横須賀戻らなきゃモードを高めて、早く仕事辞めさせたいです(笑)。
大谷:こういう「暑苦しい」先輩が今は少なくなってますからね。相澤さんにはその暑苦しさを貫いて欲しいです。
吉田:まあ、個人的には外に出て行くことを否定してはいけないと思ってる。でも、横須賀で育ったこと、横須賀で学んだことを彼らには大事してもらって、いつかビッグになって戻ってこられるようにしたいなあと。
大谷:個人的にはおじさんスタートアップありかなと思っています。日本の所得は年々下がり続けていて、大手メーカーも中間管理職だらけで、経営もどんどん厳しくなっている。都内での生活が大変なおじさんたちに横須賀に来てもらって、生涯現役としてノウハウや知識を活かしてもらうというシナリオは描けますよね。
吉田:今は定年延長の話が出てるけど、僕は逆だと思う。定年50歳くらいにして、人材を流動化させてしまえば、危機感だって持つだろうし、キャリアの選択に気づく。60代でスタートアップ起こすのは厳しいので、40代でしょうねえ。僕もいずれ商売始めますから(笑)。それで得たお金で、児童養護施設を始めるのが夢ですよ。あー、時間だ。本当、顔出すだけでごめんなさい!
参加者:ありがとうございました!
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