疾患発症をゼロにするための技術
一日10万回にも達する心拍を、1拍ごとに血圧を測ることで、その変化をリアムタイムに把握できる。
すでに、実施している夜間睡眠中の連続血圧測定の臨床研究では、睡眠時の無呼吸状態では100を切る血圧であったものが、そこからいびきをかき始めると、最大で血圧が190まで上昇する結果がわかったという。
これまでの研究によって、脳・心血管疾患の発症は、急激な血圧上昇が影響していることがわかっている。
しかも、高血圧は、加齢にともなって引き起こされるだけでなく、夏場よりも冬場に高血圧になるといった温度環境、日曜日よりも仕事が始まる月曜日に血圧が高くなるといったストレスによる影響、そして、就寝中よりも朝方に血圧があがるという日内での変化がある。
こうしたさまざまな変化要素が悪いタイミングで重なり合って、通常の血圧上昇よりも一気に上昇。その結果、脳・心血管疾患が発症(イベント)すると見られている「循環器イベント・トリガーの血圧サージ共振仮説」を、連続血圧測定技術によって証明できれば、新たな治療方法を確立でき、イベントゼロへとつなげることができるというわけだ。
具体的には、日常生活下での危険なサージ血圧を検出し、サーバーへ転送。リアルタイムでイベントリスクを予測し、イベントの予兆を医師や患者にアラートとして通知。分析した結果は医師と患者で共有して、イベント発症を水際で阻止することができるという。
自治医科大学内科学講座循環器内科学部門の苅尾七臣主任教授は、「連続血圧測定によって、サージの共振を予測することが可能になれば、これまでの血圧測定は慢性リスク管理のするための血圧管理から、イベントを予見する急性リスク管理へと、循環器医療を飛躍的にイノベーションすることができる」と期待する。
オムロンヘルスケアの荻野勲社長は、「現在、血圧計は年間1700~1800万台を出荷しているが、新技術を搭載した血圧計が製品化できれば、将来的には同じような台数を出荷できるだろう」としながらも、「我々は、新たな技術を搭載した血圧計を売ることが目的ではない。新たな技術によって連続血圧測定を実現することで、医療を変え、イベントゼロへとつなげたい」と語る。
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