
今回のことば
「血圧計を売ることが目的ではない。新たな技術によって連続血圧測定を実現することで、医療を変え、イベントゼロへとつなげたい」(オムロンヘルスケアの荻野勲社長)
手首に機器を付けるだけで詳細な血圧測定が可能
オムロンヘルスケアが、1拍ごとの血圧を計測できる連続血圧測定技術を開発。それを利用した血圧計のプロトタイプを発表した。すでに現時点でも、連続10時間の稼働が可能であり、夜間睡眠中に、連続血圧測定を行なう臨床研究がスタート。
これまでとらえることができなかった急激な血圧変動を確認。新たなパターンや頻度を把握することができたという。
2017年までに臨床研究用に製品化する考えであり、一般に向けて販売する時期は現時点では未定だという。
このプロトタイプは、手首に装着することで血圧を計測するもので、オムロンの半導体技術、MEMS(微細加工技術)、集積回路技術を活用して開発したセンサーを活用。1列あたり10mmの幅に46個の素子を並べ、それを2列構成した独自の圧力センサーによって計測ができる。重量も約200gと、手首に装着できるように軽量化している。
センサーが正しく血管を圧迫しているかを検知し、自動的にセンサーの角度を調整する機構を採用しており、これにより、手首に取り付ける機器だけで、1拍ごとの血圧を連続して測ることができる。
「トノメトリ法と呼ばれる仕組みを使い、世界で初めて、手首に機器をつけるだけで、1拍ごとの血圧を測定することができるようにした。これまでにもトノメトリ法による連続血圧の測定はできたが、手首で計測した1拍ごとの血圧値と、上腕で測った血圧値を照らし合わせる必要があり、機器が大型化し、複雑な測定方法となっていた。また、別の方法で計測しても、指などに圧力をかけるため、連続して測定すると被験者の指がしびれていまい、30分程度しか測定できないという課題があった」(オムロンヘルスケア 技術革新担当・田中孝英執行役員常務)という。
トノメトリ法では、手首の体表近くにある橈骨(とうこつ)動脈に、圧力センサーを平らに押し当てて、1拍ごとの血圧を測定することができる。
オムロンヘルスケアでは、独自のセンサーを活用することで、個人差がある手首の構造に対応したり、測定の際に邪魔になる橈骨動脈の近くの橈骨や腱に対して、平らに圧力をかけることに成功。それぞれのセンサーから得た圧力情報をもとに血管の位置を確認。その人にあった最適なセンサーの角度を自動的に調整できるようにした。
この新たな血圧計がもたらす価値は大きい。

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