マイクロソフトは、ソフトウェアメーカーであると同時に、ハードウェアメーカーである。かつては、ハードウェアといっても、マウスやキーボードなどの周辺機器だけが対象だったが、今ではXboxをはじめ、2in1デバイスのSurfaceや、スマートフォンのLumiaといった本体製品、ウェアラブルデバイスのMicrosoft Band、そして、注目を集めるヘッドマウント型デバイスのHoloLensなど、マイクロソフトブランドのハードウェア製品の幅は広がりをみせている。
こうしたハードウェアビジネスの拡大に伴って、ハードウェアに関する研究開発投資も加速。現在では、世界最高峰のハードウェアデバイスに関する研究開発拠点を有しているメーカーともなった。
その中核となるのが、米ワシントン州レドモンドの米マイクロソフト本社キャンパス内にある「ハードウェアラボ」だ。
米マイクロソフト本社エリアには、125の棟があるが、その中の87号棟にハードウェアラボがある。
ハードウェアラボの入退出は厳密に管理され、社員がラボに入る際には、スマートフォンなどの持ち込みは禁止。入口にあるロッカーに入れてから入室する。ハードウェアラボは、社員の間から「マイクロソフトのエリア51」とも呼ばれており、まさに管理は厳重だ。
Surfaceの開発でも活躍した「ハードウェアラボ」
ハードウェアラボには、アプライドサイエンス(応用化学)ラボ、マテリアルサイエンスラボ、オーディオラボ、ビデオラボ、ヒューマンファクタリングラボ、レーザーラボ、プロトタイピングラボなどがある。2014年2月に20ヵ所に分散していた研究施設を集約し、同年9月には建物をリニューアルし、現体制の基本形が完成。それらのラボを通じて、ハードウェア製品に関する研究が行なわれているというわけだ。
「アプライドサイエンスラボ」
たとえば、Surfaceの場合は、次のような感じだ。
アプライドサイエンスラボでは、Surfaceの操作性を左右するタッチパネルやペン入力の精度を高める研究が行なわれている。ペン先の筆圧感知精度を高め、筆圧によって書いた線の太さが変わったり、傾斜角度によって書き味を変えられるようになるほか、文字を書く際に、遅延が起こらないよう反応度合いも検証している。
同社の説明によると、10ms以上になると遅れが気になるが、8msの速度を実現すれば遅延を感じずに滑らかなペン入力が可能になるという。
さらに、ペン部分に軽い振動を発生する機能を入れることで、紙にペンで書くような環境を実現することが可能になるという。
「アプライドサイエンスラボ」
また、アプライドサイエンスラボでは、今後3~5年後に実用化される技術の開発、検証も行なっている。
現在、タッチパッドの上に指をかざすだけで、画面上に表示されるコンテンツを操作するといった、ゼスチャーによる新たな操作方法を研究しているほか、ゴムのように伸びる素材を活用したタッチセンサー、洋服などに縫い込めるセンサー技術の開発、検証も行なっているという。こうした技術も、将来、マイクロソフトのハードウェアに応用される可能性がある。

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