GoogleからMotorola Mobilityを買収したLenovoが、買収完了から約1年半で少しずつ統合を進めている。3月18日にも組織再編を発表、ファブレットなどがPC事業に統合されることになった。一方で、Motorola Mobilityを率いてきたRick Osterloh氏はLenovoを去ることになった。ここであらためてLenovoのスマートフォン戦略を取り上げたい。

MWCで話を聞いたLenovoのアジア太平洋地域担当プレジデント、Roderick Lappin氏
ファブレットはPC部門へ、Motorolaのトップは退任
3月18日の発表によると、PC事業部はPC、タブレット、それにファブレット、ゲーム、スマートホームを加えた「PC&スマートデバイス」事業部となる。OSとしては、Windows、Chrome OS、Androidを採用し、トップを務めるのは元AcerのGianfranco Lanci氏。現在はLenovoでプレジデント兼COOを務める人物だ。
これによりモバイル事業部はスマートフォン中心となり、中国にフォーカスするXudong Chen氏、中国以外はAymar de Lencquesaing氏が担当する。2人ともLenovo出身の人物で、Motorola Mobilityを率いていたRick Osterloh氏はLenovoを去ることになる。
それに代わってde Lancquesaing氏がMotorola Mobilityの会長兼プレジデントとなる。なお、Lenovo買収以降にMotorola Mobilityから幹部が去るのはOsterloh氏が初ではない。Google傘下のMotorola MobilityのCEOだったDennis Woodside氏もそうだ。これらの組織再編は4月1日より有効とのこと。
スマートフォンブランドは「Moto」と「Vibe」の2本柱
LenovoがMotorolaを29億ドルで買収すると発表したのは2014年初めのことで、買収完了は同年10月だ。Motorolaは当時、約10億ドルの赤字を出していたが、Lenovoは2016年2月に発表した会計年度2016年第3四半期(2015年10月-12月)の決算で、Motorola事業は赤字状態から脱した。
今年2月末の「Mobile World Congress 2016」で、日本人記者の取材に応じたLenovoのアジア太平洋地域担当プレジデント、Roderick Lappin氏は、「買収完了後の4~6四半期の間に黒字化を目指していたが、5四半期で損益分岐点まで達した」と胸を張った。
このように、LenovoはこれまでMotorolaの赤字脱出にフォーカスしてきたが、ブランドを始めとした戦略が少しずつ見えてきている。すでにMotorolaのブランドを弱める方向にあり、「Moto by Lenovo、Vibe by Lenovoという2つのブランドをLenovoから出していく」とLappin氏は語る。
「Motorolaの名称はすでに(Lenovoが買収する前となる)2年前から製品で使われていない」とのことなので、方針変更というより方向性を強化するものとなる。同席したアジア太平洋地域担当最高マーケティング責任者(CMO)のNick Roynolds氏は、「MotoのロゴであるMマークは世界中で非常に強く、すぐにMotoと認知される」と語った。

国内でも購入可能な「Moto X Play」。資本が変わったと言っても、モトローラの“M”マークはブランドとしてはいまだ強い
セグメントとしてはMotoがハイエンド、Vibeがそれ以外をカバーすると考えてよさそうだ。エントリーと位置付けられているMoto E、Moto Gは継続する。Lappin氏らは、海外で展開している、端末をユーザーがカスタマイズして購入できるサービス「Moto Maker」の成功を強調しており、「スマートフォンで次に重要になるのはカスタマイズ」としていた。

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