地ビールブームの終焉から復活を遂げた『よなよなエール』。窮地を救ったネット通販成功の裏にはどのような取り組みがあったのか? 「最新トレンドの成功者から学べ! ECサイト研究レポート」第26回は、前回に引き続き、よなよなエールを製造・販売するヤッホーブルーイング代表取締役の井手直行社長に話を聞いた。
広告代わりに始めた“お試しセット”
2013年に自社サイトを立ち上げるまで、楽天市場に絞ってEC事業を展開してきたヤッホーブルーイング。2007年に新製品を投入するまで、製品は『よなよなエール』1つだけ。当時ネット通販の責任者だった井手社長は、新製品がなく、メーカーなので値下げもできない中で、サイトを訪れたお客さまやファンを楽しませることだけに集中して企画を打ち続けた。
しかし、楽天市場には、ビール好きではない、ましてや『よなよなエール』の熱狂的なファンではない人たちも多く訪れる。井手氏は集客の切り札として『よなよなエール』2缶で500円(送料無料)の“お試しセット”を用意した。
実際は赤字の施策だが、10人のうち1人が1ケース24本入りを買ってくれたらペイできると、踏み切った。楽天の担当者が「“お試しセット”はヤッホーブルーイングが初めて」と、楽天のニュースで「画期的なサービス」として紹介すると、1カ月に何千件もの注文が入ることもあった。
「結果として広告費もかけずに実際に飲んでもらえて、トータルで見ると十分黒字になりました」(井手氏)
お試しセットは、現在は4種類で税込千円の『飲み比べモニター』として販売している。
メールマガジンとSNS
ヤッホーブルーイングでは、お客さま、ファンへのリーチに、メールマガジンとFacebook、Twitter、Instagramを利用している。
新製品の登場をメールマガジンで告知すると、その日のうちに何百件という注文が入る。メールマガジンは何人かのスタッフで運用しており、各人のキャラクターを活かした文章によって、知り合いや親戚から手紙が届くような感覚で楽しんでもらっているのだという。しかし、メールマガジンは、ネット店舗を利用した購入者で、かつ希望する人にしか送っていない。
一方で、FacebookとTwitterはいろいろな人が見られるうえに、双方向のコミュニケーションが特徴ととらえている。Facebookページのいいね!数は3万2179人にものぼる。
「同じファンでもメールマガジンとFacebookでは期待されていることが違うので、それぞれに合ったコンテンツを用意しています」(井手氏)